Renta!×「アクダマドライブ」大柿ロクロウインタビュー|「ダンガンロンパ」コンビの新作は「アベンジャーズ」の悪役版? コミカライズ作家が語る見どころ

コミカライズにはアニメで描き切れない要素も

──では、ストーリーについてはいかがでしょう? 原作をそのままマンガでなぞるか別視点でやるか、いろいろな見せ方があると思います。

基本的にはアニメのお話に則った内容になると思います。ただ、小高さんは2~3年前からずっと「アクダマドライブ」の企画を考えていたこともあって、いろんなサイドストーリーが頭の中で膨れ上がっているそうで。アニメでは描き切れない要素がすでにけっこうあって、泣く泣く削ったとおっしゃっていました(笑)。コミカライズはそういう本編では描けなかった部分も表現できたらいいですね。

──大柿さんがご覧になった脚本やコンテに加えて、小高さんが描きたかったストーリーも描かれる予定なんですね。

マンガ「アクダマドライブ」第1話より、うどん屋が登場するシーンのネーム。

はい。ただ一方で、「おもいっきり自由にやってください!」ともおっしゃっていたので、僕なりに新しい一面も見せていけたらと。アニメをそのまんまやるんじゃなくて、読んでいる方が「原作とここが違った」とか「ここは解釈違い」とか、賛否を含めて反響があるほうが面白いと思いますし、自由にやっていいよと小高さんがおっしゃられたからには、僕は自由にやることが仕事だと思うので。どうなるにせよ自由に「アクダマドライブ」の世界で遊ばせてもらおうと、楽しみながら描いてます。

──第1話のネームを拝見させていただいたのですが、サイバーパンクっぽい世界でうどん屋が出ていて、「ブレードランナー」を思い出しました。

ああ、さっそく第1話から僕のオリジナルでやらせていただいているシーンが多いんですけど、まさに「ブレードランナー」のオマージュです(笑)。「アクダマドライブ」はカントウ(関東)とカンサイ(関西)の間で戦争が起きて分裂した世界が舞台。うどんといえば関東と関西でダシが違うなど食文化が異なるので、「アクダマドライブ」の世界観を表現する食べ物にちょうどいいと思ったんです。

「アベンジャーズ」の悪役版のようなイメージ

マンガ「アクダマドライブ」より、チンピラのラフイラスト。

──大柿さん的に注目してほしいキャラクターは?

「アクダマドライブ」は悪人ばかりが登場するストーリーですが、その中で「一般人」と「チンピラ」の2人は、割と普通の人の感覚に近く、共感しやすいキャラクターだと思います。それぞれのキャラクターには「推定懲役」というどれだけの悪なのかを表すバロメーターがあるのですが、「チンピラ」の推定懲役は4年と少なく、この世界では雑魚っぽいキャラクター。だからこそ、この2人から見た視点には面白いところがあるんです。

──ほかには「運び屋」「喧嘩屋」「ハッカー」「医者」「殺人鬼」の5人がメインキャラクターとして公開されていますが、大柿さんから見た印象はいかがですか?

どいつもこいつも本当にぶっ飛んでますね(笑)。

──(笑)。中でも飛び抜けているキャラは?

マンガ「アクダマドライブ」より、殺人鬼のラフイラスト。

「殺人鬼」ですね。描きながら「これアニメで放送していいの?」って悩むくらい、頭のおかしな奴ですよ。アニメだと1話目からずっとぶっ飛んでいて、ここまで強烈なキャラクターは見たことがない!ってくらい。僕は今まで少年誌で描いていたので、ここまで振り切ったキャラクターは描きたくても描けないレベル。だからこそそれが描けるのはマンガ家的に楽しいです。ただ、描いたマンガを自分の娘には読ませたくない(笑)。

──そこまで強烈なんですね(笑)。

でも、ただの悪党じゃないんですよね。表現が難しいのですが、本当に悪い奴らばかりなんですけど、自由に生きた結果、それが悪と呼ばれたという彼らなりの美学を持っている。そういう美学を貫き通そうとする姿は魅力的だし、憧れちゃいますよね。なかなか自由に生きることが難しい社会で、自分らしさを失わず、やり抜くことの清々しさ。そういう意味では、1人ひとりがスピンオフの主人公になれるようなスーパースターが揃っていると思います。群像劇と聞くと、青春モノのようにキャラクターたちの日常的な問題を解決していくパターンが多いんですけど、「アクダマドライブ」はどちらかと言うと「アベンジャーズ」みたいなスーパーヒーローが集結する作品の悪役版のようなイメージで、荒唐無稽なエンターテインメントという感じですね。さすが小高さんらしい、突き抜けたストーリーだと思います。

──それぞれのキャラクターがいろんなベクトルで突き抜けているんですね。

本当にそう思いますね。僕も絵コンテの段階で何度も爆笑しちゃいましたから(笑)。いやいや、ここまでぶっ飛んでるのか!って。だからアニメの完成は楽しみでしょうがないです。