Renta!×「アクダマドライブ」大柿ロクロウインタビュー|「ダンガンロンパ」コンビの新作は「アベンジャーズ」の悪役版? コミカライズ作家が語る見どころ

10月放送予定のオリジナルTVアニメ「アクダマドライブ」は、高度に発達しながらも歪んだ社会を舞台に、“アクダマ”と呼ばれる犯罪者たちを軸に描くクライムアクション。アニメの放送にあたり電子書籍レンタルサイト・Renta!のオリジナルマンガレーベル・Rentaコミックスにて、コミカライズ版の連載が7月7日にスタートする。コミカライズを担当するのは「THE UNLIMITED 兵部京介」や「映画刀剣乱舞」のマンガ版を手がけた大柿ロクロウ。

大柿は、Rentaコミックスで実施している「パートナー漫画家募集」に応募し、同作を執筆することになったという。そこでコミックナタリーは大柿にインタビューを実施し、「パートナー漫画家募集」の内容や作家から見た利点について尋ねるとともに、「アクダマドライブ」の見どころについても語ってもらった。

取材・文 / 小松良介

「アクダマドライブ」とは?

TVアニメ「アクダマドライブ」ビジュアル

カントウとカンサイの間で戦争が起き、カンサイはカントウの属国となった世界。政治と警察の力が衰退するとともに犯罪が横行し、“アクダマ”と呼ばれる犯罪者が跋扈していた。高度に発達しながらも歪んだ社会の中で、アクダマたちはいかにして自分らしくあろうとするのか。一堂に会したアクダマたちがそれぞれの美学をぶつかり合わせていく。

TVアニメは10月より放送スタート予定。ストーリー原案を小高和剛、キャラクター原案を小松崎類とゲーム「ダンガンロンパ」シリーズの2人が務め、監督を田口智久、アニメーション制作をstudioぴえろが手がける。

Rentaコミックスパートナー漫画家募集

Renta!のレーベル・Rentaコミックスにて、オリジナルマンガを執筆する作家を募集する本施策。契約期間中の1年間、Rentaコミックスにて規定ページ数での定期的な連載をするのに合わせ、契約者に規定の原稿料および印税に加え、年額100万円もしくは50万円が分割にて支払われる。

求める人材
商業作品を出版社にて発表した経験があり(ジャンル問わず)、契約期間中、Rentaコミックスでの連載を優先できる作家。
待遇
Rentaコミックス規定の原稿料及び印税に加え、年額100万円もしくは50万円を分割にて支払い。
応募資格
  1. 100万円支援コース
    紙単行本経験2冊以上、紙雑誌での月刊連載もしくは週刊連載経験者
  2. 50万円支援コース
    媒体を問わない、有償案件連載経験者
募集人数
若干名

大柿ロクロウインタビュー

仕事に困っているデビュー済みの作家にもう一度チャンスを

──大柿さんは今回のパートナー募集を、何をきっかけに知ったんですか?

Rentaコミックスさんとパートナー契約を結んでいる猪狩そよ子先生が、契約についてマンガで説明されているのをたまたまTwitterで目にしまして。パートナー制度なんて珍しいし、契約すれば100万円をもらえるのもあまり例がないので興味を持ったんです。そのときはマンガのお仕事がなかったので、とりあえず話だけでも聞いてみようと思って応募をしてみました。

──応募に必要なのはどのようなものでしたか?

基本的なプロフィールやこれまでの経歴、Rentaコミックスで描きたいマンガのジャンル、あとは当時温めていた作品の原稿を参考にお送りしました。その作品をRentaコミックスさんで描きたいというよりは、僕がどういうマンガ家なのかを知ってもらうためのポートフォリオですね。

──そこから実際にRentaコミックスの編集者さんとお会いしたんですね。最初はどういうお話をされたんでしょう?

今回のパートナー契約は、すでに商業誌でデビューをして何作品も描いている作家にフォーカスを当てた企画なんだそうです。確かにデビューをしても、いまひとつ人気が出なくて2~3巻くらいで打ち切りになったり、次回作のネームがなかなか通らなくて生活に困ったりと、実力はあるのに芽が出ない作家さんはたくさんいる。そういった方々にもう1回チャンスを与えられるような制度ができないかと考えた、とおっしゃっていました。それが2019年末の話ですね。

──大柿さんもそこで契約を?

マンガ「アクダマドライブ」メインキャラクターのラフイラスト。

そのときはまだ。「ぜひ一緒にやりましょう」「じゃあネタを考えてお送りしますね」という感じで最初の打ち合わせは終わりました。その後、今年の1月初旬に「別件でコミカライズの案件がありまして、こちらを描いていただけないでしょうか?」と、逆に依頼をいただいたのが今回の「アクダマドライブ」でした。Rentaコミックスさんと契約を結んだのはそのタイミングになります。

──今回のパートナー契約で特徴的なのは、原稿料と印税に加えて年額100万円をお支払いしますというサポート体制です。

出版社さんや雑誌によって違うと思いますが、そもそも契約金が支払われるケースって業界的には珍しいことだと思います。基本的にはマンガを描いて納品することで得られる原稿料と、コミックスになって支払われる印税が収入源。つまり、マンガ家は原稿料より前に収入を得られることはありません。お金がない場合は原稿料を前借りしたりして、最初の資金をまかなうしかない。だからコミックスが売れないと生活ができなかったり、アシスタントさんに報酬が払えなかったりして、本当に大変なんですよ。100万円という形で助成金がいただけるのはとてもありがたい制度だと思います。

──こういったサポート体制は本当に珍しいんですね。

だと思います。特に電子コミックサイトでは今のところRenta!さんだけじゃないですか? 僕もあんまり詳しくないのでほかにもあるかもしれませんが。

契約条件はそこまで厳しくないのでは

──大柿さんはどういう人にこのパートナー制度を薦めたいですか?

やっぱり仕事とお金に困っている人は非常に助かると思います。お金に余裕があればほかのところでも全然いいと思うんですけど、マンガの仕事を続けていきたいけど先立つものが厳しいとか、今の環境では良いマンガが描けないとか……。詳しく話すほど自分にブーメランが刺さってる気がしますが(笑)、同じような環境のマンガ家さんがいたら、ぜひおすすめしたいですね。でも、それだけじゃなくて、しばらくマンガを描いていない作家さんもチャンスがある企画だと思います。

──というと?

Rentaコミックスさんが挙げているパートナーシップの条件は、個人的にはめちゃくちゃ厳しいわけじゃないと思うんですよね。詳細までは言えないですが、どのくらいのページ数を月に納品すればOKという条件は、意外とやさしいと思います。しばらくマンガを描いていない方、ほかの仕事や連載を抱えている方でも続けられるレベルなので、いろいろな方に扉が開かれていると思いました。

Rentaコミックス連載作の紹介バナー。

──逆に気を付けないといけない部分はありますか?

マンガ「アクダマドライブ」第1話のネーム。

うーん、当たり前ですがプロとしてきちんと仕事をこなすこと、でしょうか。僕の場合、「アクダマドライブ」は隔週24ページの連載になる予定ですが、援助いただくからには締め切りやルールを守らないといけない。Rentaコミックスさんも今までの実績だけじゃなく、人となりも見てると思いますし。

──応募の際に「こういうジャンルで描きたい」という項目があったとおっしゃっていましたが、パートナー作家になった現在、大柿さんの目から見て「Rentaコミックスはこういう作品を求めているのでは?」と思ったジャンルなどはあったりしましたか?

少女マンガを中心に少年、青年、ルポ、エッセイマンガといろいろなジャンルを描ける媒体なので、その作家さんが得意なジャンル、描きたいテーマでチャンレンジするのが一番だと思いますよ。僕はずっと少年誌で活動していた人間なので、その項目には「少年マンガ」と書いたんですけど、Rentaコミックスさんが求めているものと自分の描きたい内容が合致すれば、BLマンガだって描いてみたいと思っていました(笑)。