コミックナタリー Power Push - 「昭和元禄落語心中」

落語はハードルが高いのか?雲田はるこ(作者)・小林ゆう(小夏役)・立川志ら乃(落語家)が読者を落語沼へ誘う

関智一、石田彰、小林ゆう、山寺宏一、林原めぐみという豪華キャストや、椎名林檎と林原のタッグによる主題歌が話題になったアニメ「昭和元禄落語心中」。1月8日には1時間スペシャルとして「与太郎放浪篇」がオンエアされ、1月15日に2人の落語家の因縁が描かれる「八雲と助六篇」がスタートする。

コミックナタリーでは放送を記念し、作者の雲田はるこ、立川流真打ちで関智一の落語の師匠・立川志ら乃、小夏役を務める小林ゆうの鼎談をセッティング。マンガ、アニメ、そして落語について存分に語り合ってもらった。

取材・文 / 三木美波 撮影 / 鹿野貴司

作品紹介

与太郎放浪篇
  • 与太郎(CV:関智一)
  • 八代目有楽亭八雲(CV:石田彰)
  • 小夏(CV:小林ゆう)

満期で刑務所を出所した元チンピラ・与太郎は、落語慰問会で聞いた昭和最後の大名人・有楽亭八雲の「死神」が忘れられず弟子入り志願。弟子を一切取らぬはずの八雲が、何の気まぐれか与太郎を受け入れることになり……。原作マンガでは単行本1・2巻に収録され、アニメは単行本7・8巻の特装版付属のOADに収められている。

八雲と助六篇
  • 菊比古(後の八代目有楽亭八雲、CV:石田彰)
  • 助六(CV:山寺宏一)
  • みよ吉(CV:林原めぐみ)

八代目有楽亭八雲が与太郎と小夏に語る自分の過去、そしてともに学び、ともに落語の道を歩んだ天才・助六との因縁。単行本2~5巻に収録された「八雲と助六篇」を原作にしたTVアニメ「昭和元禄落語心中」が、目下放送されている。

雲田はるこ×小林ゆう×立川志ら乃鼎談

「落語心中」をモチーフにした新作落語を作った(志ら乃)

──雲田先生と小林さんは、2015年の夏に関西でダブルサイン会をされてましたね(参照:雲田はるこ&小林ゆうのダブルサイン会開催!「落語心中」8巻特装版記念し)。小林さんが描いた雲田先生のワンちゃんのイラストが、Twitterで話題になっていました。

小林 恐縮です……。先生とご一緒させていただけて、とてもうれしかったです。

雲田 すごく弾丸なスケジュールだったんですが、楽しかったですね。

小林ゆうと立川志ら乃。小林が立川談志のモノマネなどを披露しつつ、和やかに鼎談は進んだ。

──志ら乃師匠と雲田先生の出会いは?

志ら乃 私は「キン肉マン」とか「リストランテ・パラディーゾ」とか、マンガをモチーフにした新作落語を作ってまして、去年の7月に「落語心中」の新作落語を高座にかけたんですよ。で、私の知り合いのライターが、「落語心中」の担当編集者とITANの編集長を楽屋に連れてきてくれまして。聞いてなかったからお会いした瞬間「あ、俺は潰されるんだな」と(笑)。

一同 あはは。

志ら乃 そしたら喜んでくださって、雲田先生にもご報告を、ということになりまして今ここに座っています(笑)。

──12月に発売されたアニメの公式ガイドブックでも、志ら乃師匠と雲田先生とサンキュータツオさんの鼎談が掲載されていますね。サンキューさんは志ら乃師匠が出演なさっている「渋谷らくご」のキュレーターをしたり、アニメ「落語心中」のDVD・Blu-ray特典に登場したり。

雲田 いろいろご縁が繋がっていますね。志ら乃さんが作ってくださった「落語心中」の新作落語を聞かせていただいたんですが、まるで古典落語のようにアレンジされていて驚きました。

八代目有楽亭八雲と与太郎。

──どんなあらすじなんでしょう?

志ら乃 八雲の名前をひっくり返して「雲八」というタイトルなんですが、雲八師匠と弟子の八太郎の師弟関係に焦点を当てたものです。八太郎という落語家が今実在しないかどうかも確認しました。

小林 お調べになったんですか?

志ら乃 落語協会に「八太郎っている?」って(笑)。いそうな名前だからね。

師匠の気まぐれに振り回される弟子を描きたかった(雲田)

──「落語心中」のストーリーを落語にしたのではなく、モチーフにして落語を作ったんですね。

原作1巻に登場した耳かきのシーン。

雲田 そうです。部分部分のエピソードだけ同じにしていただいて。

志ら乃 八雲師匠が与太郎に耳かきをして寝かしつけるシーンがあるでしょう。あそこはぜひ入れていただきたいと、知り合いからリクエストがありました。

小林 素敵なシーンですものね。このおふたりだからこその唯一無二な感じがすごくして、印象に残っています。

──弟子の耳かきをする師匠……。そんな落語家の師弟って存在するんでしょうか……?

志ら乃 落語家全部の師弟関係は知らないですけど……まあいないでしょうね。

雲田 いないですよね(笑)。

小林 えー、いないんですか?

志ら乃 でも師弟は親子以上の関係になりますから。うちの志らく師匠の新年会では、師匠が肉を焼いてくれました。最初は師匠にやらせて申し訳ないと思うんですけど、だんだん食うペースに追いつかなくなって「師匠、まだですか?」って(笑)。よくよく考えたら大しくじりなんじゃねーかって思うんだけど。

小林ゆうと立川志ら乃。

小林 落語に頻出するしくじりってお言葉、すごくいいなって思います。憧れのしくじり……。

志ら乃 憧れねーわ!

──耳かきのシーンは、なぜ生まれたんでしょうか?

雲田 八雲師匠のそういう人柄を出すことで、個性的な落語家さんだと表現したかったんです。……が、のちに真打ちになった与太郎に「あのときは失礼しました」と謝らせてます(笑)。

志ら乃 関係性がわかりますよね。八雲と与太郎はギャーギャー言ってても、結局繋がっているという。だって「破門だよ」って言ったあと、すぐ仲良くなるじゃないですか。

雲田 はい。

志ら乃 私はあれを見たとき、失礼だけど「破門を舐めてるな」って思いました。でも、家元(立川談志)もそうだったんです(笑)。毎日破門だ、クビだと言われたけど、いまだに残っている人もいるし。

小林 志ら乃さんも破門になっていらっしゃいますよね。

志ら乃 ええ、志らくが「弟子全員破門だ」と言ったことがあって。まだ解くって言われてないから、破門中かもしれない(笑)。「破門中」という日本語が成立するのかわからないけど。弟子みんなで、師匠のTV収録現場まで謝りに行って。

小林 校長先生に謝りに行く小学生みたいで、チャーミングです。

志ら乃 本当に小学生と同じです。

雲田 そういう風に、師匠の気まぐれに振り回される弟子というのは落語家さんによくあるエピソードなので、そこも描きたかったのかもしれません。

八代目有楽亭八雲と与太郎。

志ら乃 (笑)。まあ師匠も人間だし、歳をとってくると弟子に対する感情が変わることはあると思います。師匠が若いときの弟子は歳も近いけど、孫みたいに離れている弟子は急にかわいくなったり。だから耳かきをする落語家師弟、今後期待してください!

雲田 どなたか、本当にされたらご連絡ください(笑)。

志ら乃 ええ、志らく一門であるかもしれない(笑)。

キャスト
  • 与太郎:関智一
  • 有楽亭八雲/菊比古:石田彰
  • 助六:山寺宏一
  • 小夏:小林ゆう
  • みよ吉:林原めぐみ
  • ほか
雲田はるこ(クモタハルコ)
雲田はるこ

2009年に東京漫画社から発売された「窓辺の君」で商業デビュー。以降、BE・BOY GOLD(リブレ出版)などBL誌を中心に活躍する。2010年、ITAN(講談社)にて連載を開始した初の非BL作品「昭和元禄落語心中」では、「このマンガがすごい!2012」オンナ編第2位を獲得した。

小林ゆう(コバヤシユウ)
小林ゆう

「まりあ†ほりっく」の衹堂鞠也(しどうまりや)役でブレイク。元気な少年から可憐な少女、外人、変態、正体不明の宇宙人まで幅広い役をこなす実力派。落語CD「モエオチ」も発売しており、定期的に独演会を開催している。

立川志ら乃(タテカワシラノ)
立川志ら乃

落語立川流の真打ち。大学在学中より立川志らくの主催する落語塾「らく塾」で学び、卒業と同時に入門。2005年にNHK新人演芸大賞で大賞を受賞し、2012年に真打ち昇進。著書に「談志亡き後の真打ち」「うじうじ」など。