コミックナタリー PowerPush - TVアニメ「ピンポン」
ノイタミナで放送スタート!松本大洋×湯浅監督のラリー対談
原作もアニメの絵も成長していく
──今回松本さんの絵をアニメーションにするにあたって、工夫された点はありますか?
湯浅 キャラクターデザインの伊東(伸高)くんに割とおまかせしてたんですけど、松本さんのタッチにもあるペン溜まりみたいなものを入れてくれて。あと、最初にあんまり決めすぎないようにはしてます。アニメーションの絵ってどんどん変わっていくので。キャラクターも2回のインターハイがあって成長していきますし、原作の絵も成長しているみたいに見えますしね。
松本 絵は自然に変わっていっちゃうんですよね。最初の頃は手数も頑張って減らしてるんですけど、だんだん増えていくんですよ。まあそれはそれでいいかって開き直ってるんですけど。
──盛り上がりを表現しようとすると、情報量をキュッと入れたくなる?
松本 そうなんですよね。みんなだんだんシリアスになっていくので。そうそうこの作品、連載中に「もう俺(描くの)やめる」って言い出したことがあるんですよ。嫌になっちゃったんですよね。
湯浅 えっ、それは大変すぎて?
松本 最初に「ピンポン」を起こした担当さんが変わることになって。マンガの編集さんは唐突に異動しますからね。「ああ、じゃあ僕も『ピンポン』やめたいな」って。3巻くらいのときでしたかね。いま思うと、王道のスポ根を描き上げるということが自分には挑戦で、それもきつかったんだなと思うんですが。でも新しい担当さんが「がんばりましょう」って言ってくれて。そのときちょうどアングレーム国際漫画祭でフランスに行ったんです。そしたらもう、カッコいい作家さんがいっぱいいて。絵もみんな僕なんかより100万倍上手くて、僕もこんな風になりたいと思ったんです。それで帰ってきたら、すごく描きやすくなってたんですよね。絵も描いてて楽しくなったし、「ピンポン」も最後までいけそう、と。いま読み返すと、「ピンポン」は自分が描いてきた中でもすごく好きな作品になりましたね。シンプルでいいマンガだなと思います。
いまが人生で一番忙しい
──この頃は作業ペースはどれくらいだったんですか?
松本 最初は週刊でやってましたね。途中からだんだん週刊ペースに追いつかなくなって、少し休ませてもらったりして。……いや、なんか記憶にないんですよね。よくマンガ家さんが言うことですけど、「あれ、俺これ描いたっけ」っていう。それくらい寝ない生活でしたね。
湯浅 ピンクレディーみたいな。
松本 うん、引きこもりのピンクレディー(笑)。僕はネームに割と時間がかかるほうで、3日くらいでしたかね。だから下絵を2日でやらないといけなくて。いまはもうありえないですね。あの頃が一番忙しかったな。
湯浅 僕は多分、いまが人生で一番忙しい(笑)。
松本 この年齢でくるときついですね。すごいな。
──では最後に、これからアニメ「ピンポン」をご覧になる方にメッセージをお願いします。
松本 そうですね、湯浅さんの「ピンポン」というものが出来上がると思うので、あんまりマンガとすり合わせなくてもいいというか、マンガを先に読んでみようと思わなくていいかなと。湯浅さんのいちファンとしては、そういう気持ちです。
湯浅 原作が好きな方も、実写が好きな方もたくさんいるのは重々承知のうえで、でもやっぱりいま見るものを作らなきゃと思うので。原作から外れることもなく、実写にも学びつつ、いま出来ることを広げながらやりたいですね。
4月10日より毎週木曜24:50~
フジテレビ「ノイタミナ」ほかにて放送スタート!
フジテレビ 初回のみ25:00~
そのほかの放送局・時間については公式サイトへ
キャスト
- ペコ/星野裕:片山福十郎
- スマイル/月本誠:内山昂輝
- ドラゴン/風間竜一:咲野俊介
- アクマ/佐久間学:木村昴
- チャイナ/孔文革(コン・ウエンガ):文曄星
- オババ:野沢雅子
- 小泉丈:屋良有作 ほか
スタッフ
- 原作:松本大洋(小学館 ビッグスピリッツコミックス刊)
- 監督:湯浅政明
- キャラクターデザイン:伊東伸高
- 音楽:牛尾憲輔
- 色彩設計:辻田邦夫
- 美術監督:Aymeric Kevin
- 撮影監督:中村俊介
- 編集:木村佳史子
- 音響監督:木村絵理子
- 制作:タツノコプロ
- オープニング・テーマ:爆弾ジョニー「唯一人」 (キューンミュージック)
- エンディング・テーマ:メレンゲ「僕らについて」(キューンミュージック)
特集・HEROES ヒーローを待ちながら
巻頭20Pで「ピンポン」特集を敢行。表紙&特別付録のオリジナルステッカーは、松本大洋描き下ろしのペコ&スマイル! 特集には松本大洋+湯浅政明監督の対談別バージョンをはじめ、アニメ版の詳細メイキング8ページ、ピンポン名言集を収録。またアニメ版音楽を担当した牛尾憲輔と、かつて実写版で主題歌を担当した元スーパーカーの中村弘二の対談など盛りだくさんの内容だ。
なおSWITCHオンラインストアで購入すると、表紙と同じ描き下ろしのポスターが付く。
松本大洋(まつもとたいよう)
1967年東京都出身。1987年に月刊アフタヌーンの四季賞にて「STRAIGHT」が入選しデビュー。代表作に「鉄コン筋クリート」「ピンポン」「ナンバーファイブ」や、友人の永福一成に原作を依頼した「竹光侍」(第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞)などを持つ。2010年12月より、月刊IKKI(小学館)にて自身の少年期を題材にした「Sunny」の連載を開始する。
湯浅政明(ゆあさまさあき)
1965年福岡県生まれ。大学卒業後、亜細亜堂に参加。その後、フリーランスとなり「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」などを手がける。2004年、映画「マインド・ゲーム」で初監督を務め、第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第59回毎日映画コンクール大藤信郎賞などを受賞。2010年に監督を務めたTVアニメ「四畳半神話大系」でも文化庁メディア芸術祭大賞アニメーション部門大賞を受賞した。