「自分が読みたい」から「読者が読みたい」ものづくりへ
──ちょっと変な聞き方をしますが、今現在「自分は作家である」というアイデンティティは持てていますか?
どうなんでしょう……? 今は作家として書いている意識はあります。
──というのも、たぶん「スヴェータ」を応募した時点ではその意識はまったくなかったんじゃないかと思うんですよね。
そうですね。実際に連載が始まってから読者の方の存在を意識するようになったので、そこが一番の変化かなと思います。当初は「自分の作品を読んでもらいたい」みたいな思いはそんなに強くなかったんですけど、連載していく中で意識が変わっていきました。
──読者を意識することで、話の作り方に変化はありましたか?
お話を作る際に「読者の方が見たいのはどういうシーンなのかな?」ということを考えるようになりました。「恋愛的に甘いシーンは絶対に見たいだろうな」とか。その意識の変化によって……例えば本来もっと後に持ってくる予定だったシーンを「もっと早めたほうが読者さんが喜んでくれるだろう」という判断で早めたりもしています。
──それによって、作家としての喜びも感じるようになった?
読んでくれた方々の反応は直接見えないので、話ごとのハートの数などを見ていますが、そういう意味ではまだ手探りという感じで……でも、書いた自分だけで楽しんでいるわけじゃなくて、読んでくれた読者さんが喜んでくれているということが一番大きなモチベーションになっているのは間違いないです。
──そんなたての先生は現在、「スヴェータ」と並行して「なにがなんでも婚約破棄したい悪役令嬢を、脳筋王太子は絶対逃がさない」もピッコマで連載中です。「第2回ピッコマノベルズ大賞」の1次審査を通過して連載が決まった作品ですが、応募の時点ではまだ「スヴェータ」が年間優秀賞を獲る前ですよね?
獲る前でしたね、はい。
──そのタイミングで、なぜ早くも2作目を書こうと?
一番大きな動機は、「スヴェータ」が書けたことで「今度は自分が読みたいものではなく、読者の方がどういうものを読みたいのかを考えて作品作りをしてみたい」と思ったことですね。
──そこは単純に創作意欲の賜物ということなんですね。
そうですね、やる気がみなぎっていて(笑)。で、ありがたいことに1次審査を通過しまして、その報せを受けた時点ではもう「スヴェータ」が賞を獲っていたと思います。なので、結果的に2作ともピッコマさんで連載させていただけることになった、という流れですね。
──2つのお話を同時に書いていくのって、シンプルにすごく大変そうに思えるんですが……。
でも、「スヴェータ」でデビューさせていただいたあとに他社さんからもお仕事をいただけるようになって、よそでも連載や原作の仕事をするようになっていたんです。「なにがなんでも婚約破棄したい悪役令嬢を、脳筋王太子は絶対逃がさない」は、その流れの中で「自分の原点であるピッコマノベルズでもう1つチャレンジしてみよう」という感じで書き始めたものです。
──たくさん書くのは全然苦ではないんですね。
自分の頭の中には意外と泉があるぞ、みたいな(笑)。やりたいことはもともと潜在的にいろいろあったんでしょうね。でも、ほかの作家さんたちも皆さんたくさん書かれていますから。「第1回ピッコマノベルズ大賞」の授賞式のときほかの受賞された先生方とお話しする機会があったんですけど、皆さんめちゃくちゃいっぱい書いていらっしゃるので、そのことにすごく刺激を受けました。
ハードルの低さが応募のきっかけに、「第2の人生を生きている感覚
──やはり「ピッコマノベルズ大賞」の前後で、たての先生の人生はがらりと変わったわけですよね。
がらりと変わりましたね。応募する前は連載が持てるようになるなんてまったく思っていなかったですし、びっくりしています。とくに書いた小説がSMARTOONになるという経験は得がたいもので、いろんな人の力が結集して新たな作品が生まれていくことにものすごく感動しますし、こんなにありがたいことはないと心から思いますね。今は第2の人生を生きているような感覚です。
──思い立って作品を応募して、本当によかったですね。
そうですね……! 実は最初、応募しようか迷ったんですよ。書いただけでけっこう満足しちゃって、「しばらく自分で読んで楽しもうかな」みたいな気持ちもちょっとあったんですけど(笑)。ちゃんと応募しといてよかったなと思ってます。
──確かに、作品を書きあげるところまでは行けても、賞に応募する踏ん切りがつかない人は多そうな気がします。
そうなんですよね。そこのハードルは意外に高いので……でも「ピッコマノベルズ大賞」の場合でいうと、細かくシーズンが分かれているじゃないですか。その形式が私にとってはよかったんですよね。「全体から1つの作品しか選ばれません」だと「どうせ無理だ」と思って出さなかったかもしれないんですけど、各シーズンで何作か選ばれるなら「ちょっと出してみようかな?」という気持ちになれる。
──「いきなり全国大会優勝を目指すのはしんどいけど、地区大会ベスト4くらいなら目指してみようかな」みたいな感じということですよね。
あとやっぱり、一次審査を通過したらすぐにピッコマで配信してもらえて、原稿料までもらえるというのが画期的ですよね。今までにない、面白い形式だなと思います。しかも、一次は読者審査なんです。応募する自分自身も読者なわけなので、同じ立場の人が「読みたい」と思う作品を選ぶというのはすごくフェアな感じがします。
──この形式だと、従来の賞では評価されづらかった作品にもチャンスが生まれそうですよね。
ですね。あと、ちょっと話はズレますけど、私アイドルとかのオーディション番組を観るのが好きなんです。あれも視聴者の投票で合格する子が決まったりするじゃないですか。それと同じで、自分が投票した作品には思い入れが生まれやすいというのもあると思います。「ワシが育てた」と思ってくれるみたいな(笑)。
──古参ヅラができる。
そうそう(笑)。それと、第3回から募集テーマのキーワードがさらに明確になって、応募する方はより書きやすくなったんじゃないかなと個人的には思います。大テーマだけじゃなくサブテーマを必ず1つ以上選択して応募する形になっているので、イメージを膨らませやすいんじゃないかなと。
──確かにそうですね。それと、もう1つ、「ピッコマノベルズ大賞」の特徴として「未完のストーリーを20話まで書いて応募」という特殊なレギュレーションがありますよね。この形式は難しくありませんでしたか?
私としては、それがすごくいいなと思いました。未完のまま応募できることで、逆にずっと先まで夢を見ながら書き進めることができるんです。応募時点でストーリーを完結させちゃうと、仮にその作品が連載となった場合、無理やり続きの話を付け足すことになりますよね。そうするとどうしても無理が生じて、いびつなものになってしまうと思うんです。
──例えばですけど、「まとまった分量の小説は書けるが、細かく話数に分けて書くのは難しい」と感じている応募者の方もいらっしゃると思います。そういう方に助言できることは何かあったりしますか?
書籍ベースの小説の場合は、たくさんのページ数をかけて繊細な心の動きをじっくり描いていくものだと思うんですけど、ピッコマノベルズのように1話ごとで読ませる形式のものは、けっこう展開が早くて起伏も多くなります。読んでいて「今すぐに先の話を読まないとどうにもならない! 気になって仕方ない!」という気持ちにさせてくれるところがピッコマノベルズやSMARTOONのすごくいいところだと思うので(笑)、もちろん大きな話の流れは軸としてありつつですけど、1話1話に小さな山場を作ることを意識するのがいいのかなと思います。
──なるほど。考え方としてはわかるんですが、そう簡単なことでもなさそうに思えます(笑)。
私が意識してるのは、常にオチを用意しておくということですね。私は落語を聴くのが好きなんですけど、そういうのがけっこうヒントになったりします。どんなに小さなネタでも常にオチを考えておくと、読者の方もそのオチが気になって見てくれるっていう。
──全体のストーリーからすると途中経過のエピソードに過ぎなくても、1つひとつに明確なオチを設けることで、1話1話を独立した話数として成立させることができると。
そうです。小ネタ、小ネタ、また小ネタみたいな(笑)。それがつながって、1つのお話になっているような感じですね。
「第3回ピッコマノベルズ大賞」シーズン2の応募期間は5月7日まで! 未経験でも“ピッコマ愛”があれば、年間優秀賞に輝けるチャンスだ。自分の思いの丈を綴り、応募してみてはいかがだろうか。
プロフィール
たてのよこ
「第1回ピッコマノベルズ大賞」年間優秀賞を受賞した「皇女スヴェータの政略結婚 ~最強皇女は、王太子ではなく第二王子と結婚したい~」でデビュー。その他著作に「もう一度、御剣家に嫁ぎます ~時戻りの花嫁は冷酷軍人に愛される~」「なにがなんでも婚約破棄したい悪役令嬢を、脳筋王太子は絶対逃さない」など。
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