コミックナタリー PowerPush - 「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」

マンガでマンガを紹介、その数52本!話題の作者が登場&描き下ろし番外編も

取り上げたマンガの作者からの反響で、励まされたし仕事も増えた

──なんだか身動きがとれなくなってしまいそうですね。

ただ単行本になったことでようやく、各方面から面白いという声をいただいて、これもやり方としてアリなんだ、ってすごく励まされました。あと取り上げたマンガの作者の先生方から反響をいただけたことですね。そのおかげでいまの私があると言っても過言ではないです。

──と言いますと?

日本橋ヨヲコ先生の「少女ファイト」について描いたときは、担当さんを通じてご本人からメールをいただいて、すごく喜んでくださったんです。そのご縁から、「少女ファイト」の7巻特装版で特典になった「少年ファイト」という、マンガ家30人が参加した公式同人誌みたいなものにゲストで交ぜていただいて。

──コミックナタリーでも記事(参照:「少女ファイト」7巻に藤田和日郎ら30名集結、原画展も)にしましたが、思えばそこで描かれてたんですね。

あそこで講談社さんと初めてお仕事させていただいたご縁で、「ニコニコ妖画」という連載が生まれたんですよ。それに「3月のライオン」を取り上げたときは、羽海野チカさんが担当さんに「ニコさんいいよ、面白い」って言ってくださって、そのおかげもあって「マンガ道場破り」という連載に繋がりましたし。太田出版から出た「ナガサレール イエタテール」という連載も、それはそれで人づてのご縁があってのことで。

第29回「『友達100人できるかな』とよ田みのる」より。

──すごいですね。紹介に込めた愛が伝わって、縁を呼び込んだんでしょう。

そうなんでしょうか。あ、愛といえば、とよ田みのる先生もものすごい愛がある方で。「友達100人できるかな」を紹介したことがきっかけで「オトナ☆漫画」を気に入ってくださって、ご自身のブログやTwitterでずいぶん紹介していただきました。とよ田先生に広告料払ったほうがいいんじゃないかってぐらい(笑)。あと星里もちる先生や片山ユキヲ先生からも、すごく熱いメッセージをいただきました。こうしてみると、とよ田先生も星里先生も片山先生も温かい絵を描かれる方ですよね。人柄は絵柄に表れるっていうの、本当かもしれませんね。

「何ひとつ勝てそうにない!」っていうんで繰り返してみた

──先ほど挙げられた4つの連載ですが、これらが一気に4タイトル連続で単行本化されて、目下「ニコフェス」という4社合同キャンペーンが張られています。冒頭でも言いましたが、ビッグウェーブというか、「来てる感」出てますね。

左上から時計回りに、「ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り」「ナガサレール イエタテール」「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」「ニコニコ妖画」。

いやいやいや! それは各社の編集さんが無理やりタイミングを合わせてくださったんですよ。「こいつは誰かがなんとかしないと売れねーぞ」「とにかく話題作らないと」って。おかげで全部出し切っちゃって、いまストックが何もない、抜け殻みたいな状態です(笑)。来年なんて私はどうなるのか……。

──いや、このタイミングで注目を浴びて、ヒット街道をぜひ走ってください(笑)。そのためにもお聞きしておきたいのが、「ニコ・ニコルソンって何者なのか?」って話です。まずはペンネームの由来あたりからお聞かせくださると。

そこからかー(笑)。最初はニコだけだったんですよ。描いたイラストにカッコつけて「nico」って入れてみたり。ところが、もうだいぶ昔ですけど、代官山のストリートでポストカードを売ってる、可愛らしいお嬢さんがいたんです。その人がニコという名前でやってらっしゃって、しかも自分よりずっと上手くて。

──この競合はダメだと(笑)。

「何ひとつ勝ててない! 勝てそうもない!」って。それで「もうダメだ~。インパクトを~」っていうんで、繰り返したらいいかなと思って、ニコ・ニコ……あとはジャック・ニコルソンの印象とかで、響きとノリからニコ・ニコルソンということに。あ、でもニコニコ動画よりは前に付けたんですよ!

小学生の頃から、マンガが生きる術だった

──いまも話に出ましたが、キャリアとしてはイラストレーターとして始められたんですよね。マンガはいつ頃から描き始めたんですか。

マンガを描き始めたのは保育園とか幼稚園? それくらいの頃から4コマを描いてましたね。

──それはとても早いんじゃないですか?

第13回「『夏目友人帳』緑川ゆき」より。

でも小学生にもなると、マンガを描くのは必要に迫られて、みたいなところもあったんですよ。転校することが多かったので、その都度、クラスに馴染むために速攻で友達を作んなきゃいけないわけです。そうなってくると、コミュニケーションを取るには得意な絵とかマンガを使うのが手っ取り早かった。転校生がいかにすぐ周囲に溶け込めるかっていうのは、武器が1個あるといいんです。

──切実な話ですね。

いじめられないようにするための手段なんですよ。だから家で独りでマンガ描いてるだけじゃ、友達できそうにないというので、スポーツできる男子とか、クラスでヒエラルキーが上の人にマンガ見せて、仲良くしてもらう、みたいな(笑)。「サッカーボールこんなんじゃないよ」とか言ってもらうとコミュニケーション取れるし、ちょっと目立つ女子に「私の似顔絵描いてよ」って言われたら、描くと喜ばれる。

──スクールカーストみたいな話になってきました。

その頃からマンガが生きる術だったっていう(笑)。

──ご出身は宮城ですよね。そこで中高を卒業されて?

はい。それでデザインの専門学校に行って、デザイン事務所に就職も決まってたんですが、若気の至りと言いますか、上京しちゃいまして。……特に理由もなく、働き口もなく、勢いで出てきてしまったんですよね。彼氏のアパートに転がり込んで、6カ月ぐらい働かずにウダウダしてました。

──マンガを描いたりしていたわけじゃなく?

描いてなかったですね。読んではいたんですけど。お金も無かったので、1日1冊ずつ「うしおととら」の古本を買って帰るという、近所の新古書店と家の往復で1日が終わる日々でした。もう履歴書1枚書いただけで「あー、今日すっごい仕事したな」みたいになってたんですけど、「これじゃいかん」と思ってソニー・マガジンズ(現エムオン・エンタテインメント)のバイト募集の面接に行ったんですよ。

「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」 2013年4月19日発売 / 1000円 / エムオン・エンタテインメント
「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」

話題のマンガ全52作品、マンガで感想描いたらこうなりました。
今、全ての“オトナ”がたしなむべきマンガがわかる、これがニコルソン的マンガコラムなのです。
“マンガで描いたマンガガイド”連載4年分をカラーで収録。+単行本描き下ろしも。

ニコ・ニコルソン
ニコ・ニコルソン

宮城県亘理郡山元町出身。専門学校卒業後「東京で就職が決まった」と嘘をついて実家を飛び出し、東京で半年間のニート生活を送る。バイトとしてソニー・マガジンズ(現エムオン・エンタテインメント)で働いていたところ、ひょんなことからイラスト制作を任されるようになり、やがてフリーイラストレーターとして本格的に活動を開始。イラストエッセイ「上京さん」をエムオン・エンタテインメントから発表する。その後、月刊誌・デジモノステーション(エムオン・エンタテインメント)で「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」、ヤングアニマル(白泉社)で「ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り」、デジキス(講談社)で「ニコニコ妖画」、ぽこぽこ(太田出版)で「ナガサレール イエタテール」を連載。それら4タイトルの単行本が2013年春に連続刊行され、話題を集めている。