コミックナタリー PowerPush - 「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」

マンガでマンガを紹介、その数52本!話題の作者が登場&描き下ろし番外編も

履歴書に結構な数のウソを書いて、そこから死ぬ気で勉強

──あれ、もともとソニー・マガジンズのスタッフだったんですか?

「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」のプロローグより。

そうなんです。「オトナ☆漫画」に登場する編集の岡部さんは、もともとソニマガで働いてた時代の同僚なんです。私のクリエイターとしての出発点は、ソニマガのDTPオペレーターになるのかも。

──そんな縁があったとは。

でも採用してもらったはいいけど、実はDTPなんてなにひとつできなくて。履歴書に結構な数のウソを書いてたんですよ。Quark使えます、FlashもDreamweaverもいけます、みたいな。とりあえず採ってもらえればなんとかなると思ったんで。

──ははは、バレますよね。

当然すっごい怒られました。「あかんやん! お前何もできひんやん!」って(笑)。そこから死ぬ気で勉強してなんとかQuarkの使い方とか覚えて、ページデザインやらせてもらうようになって。で、そのうち私が絵が描けるということが社内で知られるようになり、カットを描かせてくれるようになって、あるところでフリー宣言をして、イラストでご飯が食べられるまでにしてもらいました。本当、旧ソニマガ、現エムオンさんには足を向けて寝られないというか。

──そこから処女作の「上京さん」の出版に至ったのは?

ソニマガにいる間も趣味でブログをずっとやってたんですが、旅行記とか書いてたら、たまたまテレビで紹介されたんですよ。「真鍋かをりのブログの女王」っていう番組があったんですけど、ブログブームみたいな時期で。それがきっかけで出版のオファーをいただきました。そのタイミングでソニマガを辞めて、完全にフリーになったという感じですね。

詩を書いて売り、スピッツを聴き、何かにつけて空の写真を撮り

──なんかこう、タイミングに恵まれてらっしゃるのは間違いない気がします。今後はどうなりたいみたいなビジョンはありますか。

いやーほんと、私はどうなりたいんですかね(笑)。「オトナ☆漫画」でコラム的なものを書いて、「マンガ道場破り」でレポートマンガを描いて、「ニコニコ妖画」は完全なオリジナルのストーリーマンガで、「ナガサレール イエタテール」は実話エッセイで……自分の軸がどれなのか全然わかってないんです。どこに向かえばいいのやら……。

──個人的にお好きなマンガはどういう感じなんですか?

個人的にはもりもと崇さんの「難波鉦異本」とか、ますむらひろしさんの「コスモス楽園記」が小さい頃から好きでした。水木しげる先生も大好きです。もう、好きすぎて紹介できないですね、この辺りは。

──子供の頃からそうしたマンガに触れる機会があったんですか?

母親がマンガ読みだったんです。大和和紀さんの「はいからさんが通る」とか庄司陽子さんの「生徒諸君!」とか家にあって。萩尾望都さんの「トーマの心臓」とか。今考えてみると恵まれてましたね。

──お母様、趣味がいいですね。現在の画風に至るのに影響を受けた作品は?

ニコ・ニコルソンのノートには、ストーリーマンガ風の落書きも。

松本大洋さんには思いっきり影響受けましたね。めちゃくちゃ真似てました。いかにも美術系の学生って感じですよね。詩的なマンガっていうか、詩そのものも書いてましたから。專門学校の頃は326に憧れてたんで(笑)、いやもう完全にやっちゃってました。ポストカードに詩を書いて売り、スピッツを聴き、何かにつけては空の写真を撮り……。

──空の写真(笑)。

魚喃キリコさんになりたかったんですけどね。なれないっていう……それがコンプレックスですね。ああいう作品を描けるタイプの人間だと思ってたんですよ、それも最近まで(笑)。講談社の編集さんに一度そういうネームとか設定の話したんですけど、「いやいや、ニコさんやっぱりギャグでしょ、ショートギャグでしょ」って言われて(笑)。そっかー、って。

とにかくみなさんにマンガを買ってほしい

──でも今回のフェアで単行本が売れれば、リリカルなストーリーものにも、どこかからGOサインが出るかも……。

どんだけ売れたらそうなるんでしょうか。まあ「オトナ☆漫画」はマンガガイドとして使えると思いますので、一家に1冊、お願いします! あ、自分のはさておき、いちばん言いたいのは、とにかくみなさんにマンガを買ってほしいってことですね。「マンガ道場破り」で見てきてほんとうに思ったんですけど、マンガ家はみんな、部屋に閉じこもって、生き血を吐きながら描いてるんですよ。

──命を削って描いたものだと。しかも面白い。

ニコ・ニコルソン

それが決して高いものではないですし、もっとマンガにお金出してもいいと思うんです。

──へんな合コンとかで5000円も1万円も使うより、ずっとずっといい使い道ですよね。それにマンガは、これはすごい面白いから5万円、これはつまんないから500円、ってことがない。どれだけ面白くてもみんな500円、という。こんなお得な話ないですよ。

本当そうですよね。まあ、大先生の作品も同じ値段、という世界で戦わなきゃいけないのかと思うと、新人作家としては恐ろしい限りですが……。とにかくマンガ安いって言われても何を読めばいいのかわからない、という方は「オトナ☆漫画」をめくってくだされば、何かしら自分に合った作品が見つかると思いますので。

──セールストークにつながりましたね。素晴らしい。

「オトナ☆漫画」が少しでもきっかけになって、もっともっと、マンガが読まれるようになればいいなと思います。

「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」 2013年4月19日発売 / 1000円 / エムオン・エンタテインメント
「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」

話題のマンガ全52作品、マンガで感想描いたらこうなりました。
今、全ての“オトナ”がたしなむべきマンガがわかる、これがニコルソン的マンガコラムなのです。
“マンガで描いたマンガガイド”連載4年分をカラーで収録。+単行本描き下ろしも。

ニコ・ニコルソン
ニコ・ニコルソン

宮城県亘理郡山元町出身。専門学校卒業後「東京で就職が決まった」と嘘をついて実家を飛び出し、東京で半年間のニート生活を送る。バイトとしてソニー・マガジンズ(現エムオン・エンタテインメント)で働いていたところ、ひょんなことからイラスト制作を任されるようになり、やがてフリーイラストレーターとして本格的に活動を開始。イラストエッセイ「上京さん」をエムオン・エンタテインメントから発表する。その後、月刊誌・デジモノステーション(エムオン・エンタテインメント)で「ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」、ヤングアニマル(白泉社)で「ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り」、デジキス(講談社)で「ニコニコ妖画」、ぽこぽこ(太田出版)で「ナガサレール イエタテール」を連載。それら4タイトルの単行本が2013年春に連続刊行され、話題を集めている。