コミックナタリー Power Push - TVアニメ「おそ松さん」

“マンガの単行本”として違和感のないアニメコミックス

編集担当者に聞く、アニメコミックスができるまで

書店ではもちろん、コンビニでも廉価で販売されるなど、マンガ好きやアニメファンなら一度は手にしたことがあるであろうアニメコミックス。実際にページを開いてみると、アニメの原画を最大限に活かす吹き出しや擬音の位置、コマの大きさを変えることでの緩急など、読者がわかりやすく読めるようにさまざまな工夫が凝らされている。

ここではアニメコミックスの制作を務めた編集プロダクション・樹想社の担当編集者にインタビューを行い、アニメをマンガの形式に落とし込むまでの裏話を聞いた。

Q.

「おそ松さん」をアニメコミックス化する上で、「『おそ松さん』という作品だからこそ」という部分で、こだわっていた箇所や取り入れた演出があれば教えてください。

A.

キャラ同士の会話が魅力的な作品ですので、読者の方がわかりやすく読めるように、シタラマサコ先生のマンガ版に倣ってキャラごとにセリフのフォントを変えたり、吹き出し内にキャラ名を入れ込むなどの工夫をしています。

アニメコミックス1巻の「就職しよう」より。キャラごとにセリフのフォントが変更されているほか、それぞれの吹き出しにキャラ名も入れ込まれている。アニメコミックス1巻の「就職しよう」より。擬音はそれぞれのキャラクターのイメージカラーとなっている。
Q.

収録エピソードやテーマの選定はどのように進められたのですか?

A.
アニメコミックス1巻の「事故?」より。おそ松がチョロ松のある行為を目撃してしまったことから、兄弟を巻き込んでの喧嘩に。

1冊の本でまとめて読んだときに面白くなるよう、テレビシリーズの各エピソードを「おさわがせ6つ子!篇」や「そんなことよりモテたい!篇」といった、6つのテーマにわけて再編集しています。どの巻から手に取っても楽しめるように、登場人物が巻によって偏りすぎないようバランスにも気を付けて編集しました。

Q.

アニメの原画をマンガのコマに落とし込む上で、重要視している部分や読者に物語をわかりやすく伝える手法はありますか。

A.

アニメのカットをそのまま並べたのでは、どうしても見た目が単調になり、読んでいてテンポも悪くなります。それぞれのカットを上手くトリミングしたり、拡大したりしながら、単調さを回避する努力をしています。

また、シーンの切り替わりが、きちんとページをめくったタイミングで行われるように心がけたり、コマやセリフを読む順番が混乱しないようにするなど、マンガとして当たり前のことについて、細部まで気を配ってレイアウトを作成しています。

アニメコミックス1巻の「トト子なのだ」より。演出として6つ子の登場シーンが見開きで右上部にくるようコマ割りされている。アニメコミックス1巻の「トト子なのだ」より。演出として6つ子の登場シーンが見開きで右上部にくるようコマ割りされている。アニメコミックス1巻の「トト子なのだ」より。演出として6つ子の登場シーンが見開きで右上部にくるようコマ割りされている。アニメコミックス1巻の「トト子なのだ」より。演出として6つ子の登場シーンが見開きで右上部にくるようコマ割りされている。
Q.

アニメで「おそ松さん」をすでに視聴している方々にアニメコミックスをPRするとしたらポイントはどの部分でしょう?

アニメでは一瞬で過ぎてしまうようなカットでも、アニメコミックスでは読者のペースでじっくりと楽しむことができます。コマ割り、カットのチョイス、書き文字など、マンガとしての完成度にこだわって作成していますので、「マンガの単行本」として違和感なく読めるようになっていると思います。

また、表紙のデザインや巻頭の描き下ろしポスターなど、6冊揃えたくなるような仕組みにも拘っています。

アニメコミックス1巻の「おそ松の憂鬱」より。チョロ松のTwitterアカウントのプロフィールに書かれた文字も、自分のペースで読むことができる。アニメコミックス1巻の「カラ松事変」より。6つ子がチビ太のおでん屋で料金として置いていった、お金やガラクタの見せ方にも工夫が。

「おそ松さん」コミカライズ担当のシタラマサコに聞く、アニメコミックスおすすめエピソード

Q.

「おそ松さん」アニメコミックス1巻の収録エピソードの中から、好きなお話とその理由を教えてください。

A.
アニメコミックス1巻の「風邪ひいた」より。分裂する十四松。

①「風邪ひいた」

それぞれの看病に個性が出ているし、極め付きに十四松が分裂した時の絶望感が最高です。

アニメコミックス1巻の「トド松のライン」より。澄んだ目で心ない発言を続けるトド松。

②「トド松のライン」

トド松の澄んだ目(笑)。

トド松のドライさに心当たりがある身としては、会議を開いてまで食らいつく兄弟が微笑ましいです。

ただ暇なだけかもしれませんが(笑)。

Q.

アニメコミックを読んでみての感想はいかがでしたか?

A.
アニメコミックス1巻ラストのエピソード「6つ子に生まれたよ」は、1ページの見開きで再現されている。

アニメを持ち運べる、しかも静止画なのでアニメでは気付かなかった6つ子の表情や背景の細かい部分が観られるのがとてもよいです!

コミカライズ担当としては重要な資料に!(笑)

そしてマンガとして読むのにも違和感なく楽しめましたし、最後の話では、見開きの演出に謎の情緒を感じました(笑)。

「おそ松さん」コミカライズ特集はこちら!

「TVアニメおそ松さん アニメコミックス(1)」/ 2017年1月25日発売 / 972円 / 集英社
「TVアニメおそ松さん アニメコミックス(1)」

1巻は6つ子の日常を描いたエピソードを中心にセレクト!!

収録内容

就職しよう / おそ松の憂鬱 / トト子なのだ / カラ松事変 / おたんじょうび会ダジョー / 事故? / 風邪ひいた / トド松のライン / 4個 / 6つ子に生まれたよ

シタラマサコ
シタラマサコ

2008年にりぼんスペシャル夏休み大増刊号(集英社)に掲載された、「はらって椿ちゃん」でデビュー。2012年に別冊マーガレット(集英社)にてファミレスを舞台にギャル2人のゆるい掛け合いを描く「ギャルジャポン」をスタートさせる。現在「ギャルジャポン」のほか、月刊YOUで「おそ松さん」のコミカライズ、ミラクルジャンプ(ともに集英社)で「何してんの神様」を連載中。