東京ワンピースタワー特集 永田崇人×竹中凌平×寶珠山駿座談会|“毎日が体育祭”なショーへの思いを新旧ルフィ役の3人が語らう

声を発しない演技の難しさ

寶珠山 声を発さず、声優さんの声に合わせて動くというところもこのショーの大きな特徴で、演じるのが難しいところだと思うんですが、すぐ慣れましたか?

「ONE PIECE LIVE ATTRACTION~Welcom to TONGARI Mystery Tour~」の公演写真。

永田 耳でカウントを聞いて合わせてるんだけど、やっぱり最初は難しかった。

竹中 うん、感覚だけでやってた。ムズいよね。ムズくない?

寶珠山 ムズいっす。

永田 (笑)。慣れちゃえばね、けっこうすんなりできるんだけど。

エースと記念撮影する寶珠山駿。

寶珠山 今始めてから3カ月が経ったところですけど、けっこう死に物狂いですね。さっき撮影中に永田さんと竹中さんがおっしゃってたんですけど、1年続く公演だと、やっぱり慣れを感じちゃう時期があって、今がまさにそんな感じで……。どうやって乗り越えていこうかって、キャストみんなで意識してるところです。

永田 その感じがめっちゃいいんだよね、タワーのショーは。楽屋もみんなずっと一緒で一緒に考えて。普通の作品はやっぱり演出家さんが常にいて、その人から指示をもらう感じだけど、こんなに作品について、チームについて、キャストが自分たちで意見を言って、それを積み重ねて作っていく作品って「ONE PIECE」以外に一度も経験したことがないですね。それって本当に素敵なことだなと思う。

竹中 演出のウォーリー(木下)さんも現場に来るけど、基本的には任せてもらってる感じで。だから最初のほうから比べると、1年間やっていく中でけっこう変わっていったなあと。けっこう、試してたよね。

寶珠山 試してみたっていうのは?

竹中 アドリブとか。最後にダンスがあるんだけど、そこで客席に降りてぐるりと周ったりとか。

永田 あの周るやつ、途中から演出に正式に盛り込まれたんだよね。

──キャスト発信で始めたことが反映されやすい環境なんですね。

「ONE PIECE LIVE ATTRACTION~Welcom to TONGARI Mystery Tour~」の公演写真。

トリプルキャストはいい意味でのライバル関係(永田)

永田 俺と凌平のほか、(三浦)宏規もルフィとしていましたけど、同じ役をトリプルキャストで演じていたので、やっぱりいい意味でのライバル関係もあるんですよ。チームに分かれて1日置きに交代で出演していて、そのチーム同士もライバルみたいなところがあって、公演を観て負けたくないなって思うこともしょっちゅうで。

パーク内を散策する3人。

竹中 あったねえ、それは。今もある?

寶珠山 ありますね。もうひとつのチームの公演を観てちょっと気になったところがあったら意見してみたり。もちろん向こうから言われることもあります。

永田 すごくいいよね。その関係性。僕もよく言われてましたねえ、凌平たちのチームに。

竹中 おい、全然言ってないだろ(笑)。

麦わらの一味を演じる声優陣による座談会形式の音声ナビ「麦ナビ」を聞きながら「Cruise History」を周る永田崇人。

永田 (笑)。俺たちルフィはね、すごく仲良かったです。宏規は当時15歳くらいだったと思うけど、すごくしっかりしてて。6歳上の俺と凌平のほうがガキだったくらい。公演終わってから「せっかくメイクしてるから」って顔を真っ茶色に塗りたくったりいろいろやってたね(笑)。基本的に凌平がいじられキャラで、もう1人同い年の(チョッパー役)國友久志と2人で凌平をいじるっていうくだりもしょっちゅうありました(笑)。

竹中 そうそう、キャストの誕生日をサプライズで祝ったりもしてたね。本人の誕生日だけじゃなくて、役(演じているキャラクター)の誕生日も。

寶珠山 ああ、それは今もやってます! 1日の最初にみんなで体操するのも、ファーストの頃からの伝統になってますね。

ルフィを演じてから、素のときも笑うことが増えた(竹中)

エースと記念撮影する永田崇人。

寶珠山 ルフィの役作りって、どう進めていきましたか?

竹中 お腹が出てる衣装なので、筋トレはすごいがんばったね。

永田 公演と公演の間にけっこう時間があることもあるので、みんなで円になってやってました。

竹中 (初代ゾロ役)全さん(橋本全一)とか(同じく初代ゾロ役)伊万里(有)さんとか、めっちゃマッチョになってたもんね。

「トンガリポート~麦わらの一味の宴~」で記念撮影する3人。中央の寶珠山駿はルフィさながらのポーズを取っている。

──さっき東京ワンピースタワーを回りつつ写真を撮っているときに、寶珠山さんがとっさにとるポーズや表情がすごくルフィっぽいなと感じたんです。現在進行形でショーに出演していると、やっぱり自分の中に常にルフィが同居しているような感覚があるのかな? と。

寶珠山 わ、そうですか? 無意識でした!(笑) でも基本、ルフィを主体として考えているような自覚はあります。

永田 1年間その役しかやらないから、自然と役に近づいていくよね。俺はテンション的な部分とか、比較的自分とルフィがもともと近いと思うの。だから役作りっていうよりは、キャストのみんなに見てもらって「こうしたほうがいいかも」って指摘してもらうとかの積み重ねで、だんだんルフィになっていったような気がします。

竹中 俺は、当時はやっぱり初めての仕事でナメてたので(笑)、原作読んだりアニメ観たりはもちろんしたけど、役作りというと特に意識してなかった(笑)。今だったらありえないですけど、本当に何もわかってない新人の頃だったので。ただ、もともとの性格がルフィと全然違うから、ステージに出る前にすごいテンションを上げるようにはしてましたね。でも今考えれば、みんなといると勝手に上がってたかな、楽しいから。もともとそんなに笑う性格じゃなかったのに、ルフィを演じてから、素のときも笑うことが増えたような気がしてます。

──舞台裏でも、麦わらの一味のような関係性ができているんですね。

竹中 はい。ほかの現場だとみんなのスケジュールがバラバラで、オフの日にみんな集まるのってさすがに難しいんですけど、ここはみんな1年間同じスケジュールで動いているので、川下りとかサバゲーとか、集まってオフでもアクティブに遊んでましたね。

アニメ「ONE PIECE」の20周年を記念した企画展「Cruise History」を巡る3人。

寶珠山 僕の場合は、相方の志茂星哉くん(同じく現ルフィ役)が昨年から続投だったので、稽古期間中からずっと1人で。演出家のウォーリーさんに、これは違う、あれも違う、みたいにいろいろ言われてました。自分はけっこうテンションが高いほうなんですけど、まだまだベースが低い、もっと「ウォー!」っていう芝居しろって。いろいろ学ばせていただきました。

永田 難しいよね。でも20分のショーなので、2時間の舞台よりは緻密に作っていける感覚があると思います。