沙村広明原作のアニメ「波よ聞いてくれ」が、4月から放送中だ。本作は、札幌のスープカレー屋店員でありながら、あるきっかけで地元のFMラジオにパーソナリティとして抜擢され、冠番組を持つことになってしまった主人公・鼓田ミナレの奮闘を描いている。沙村の持ち味でもある切れ味鋭い会話のセンスが、ラジオという舞台でより一層輝いている作品だ。
コミックナタリーではアニメの放送を記念し、沙村へのインタビューを実施。「映像化が難しい」と言われていた今作がアニメではどのように仕上がっているのか、原作者目線での感想を聞いた。さらにラジオというメディアの魅力や、原作の裏話、今後の展開についても語ってもらっている。
取材・文 / 松本真一 撮影 / 笹井タカマサ
札幌在住、スープカレー屋で働く鼓田ミナレは、酒場で知り合った地元FM局のディレクター・麻藤兼嗣に失恋トークを炸裂させていた。翌日、いつものように仕事をしていると、店内でかけていたラジオから元カレを罵倒するミナレの声が……! 麻藤はミナレの愚痴を密録し、生放送で流していたのだ。激昂してラジオ局へ乗り込むミナレ。しかし、麻藤は悪びれもせずに告げる。
「お姐さん、止めるからにはアンタが間を持たせるんだぜ?」ミナレは全力の弁解トークをアドリブで披露する羽目に。この放送は反響を呼び、やがて麻藤からラジオパーソナリティにスカウトされる。
「お前、冠番組を持ってみる気ないか?」タイトルは「波よ聞いてくれ」。北海道の深夜3時半、そしてミナレは覚醒するッ!
なんのアニメなのかよくわからないですよね(笑)
──「波よ聞いてくれ」TVアニメ化が発表された際の反響として、喜んでいるファンももちろん多かったですが、「え、あれがアニメ化できるの?」という声もSNSなどで散見されたように思います。
俺もそう思っていた部分はあります(笑)。
──実際、鼓田ミナレ役の杉山里穂さんも「映像化が難しいと言われていた沙村先生のラジオ業界コミックが、どんなアニメになったのかぜひ楽しみにしていただければと思います」とコメントしていました。原作者としてはどのような理由で「アニメ化が難しい」と思っていましたか?
このマンガって、「ラジオマンガ」って言えるほどジャンルがはっきりしてないんですよ(笑)。だからアニメにしても「なんのアニメなんだろう」って思われるんじゃないかなって。そういう意味では難しいかもなと。
──確かにラジオ以外の部分でもたくさん事件が起きるので、単純に「ラジオ業界もの」とはひとくくりにしづらい作品です。
基本的にはラジオの話だから、あっちこっちに旅をするでもなく、札幌の近辺で行われる話なんですよ。それなのにビジュアル的にはかなり変な場面が多いんじゃないかとは思います。
──アニメの第1弾PVは、ミナレが森の中で熊と対峙する場面から始まりますからね。
そうそう。だから視覚的に退屈するってことはないんじゃないかなーと思うんですけど、PVを観てもなんのアニメかはよくわからないですよね(笑)。
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成功するも失敗するも主演の杉山さん次第だけど、心配はない