アニメ「波よ聞いてくれ」特集 沙村広明インタビュー|ラジオアニメは地味だと誰が言った?

沙村広明原作のアニメ「波よ聞いてくれ」が、4月から放送中だ。本作は、札幌のスープカレー屋店員でありながら、あるきっかけで地元のFMラジオにパーソナリティとして抜擢され、冠番組を持つことになってしまった主人公・鼓田ミナレの奮闘を描いている。沙村の持ち味でもある切れ味鋭い会話のセンスが、ラジオという舞台でより一層輝いている作品だ。

コミックナタリーではアニメの放送を記念し、沙村へのインタビューを実施。「映像化が難しい」と言われていた今作がアニメではどのように仕上がっているのか、原作者目線での感想を聞いた。さらにラジオというメディアの魅力や、原作の裏話、今後の展開についても語ってもらっている。

取材・文 / 松本真一 撮影 / 笹井タカマサ

あらすじ
アニメ「波よ聞いてくれ」より。
「いやあ~~~~ッ、25過ぎてから男と別れるってキツいですね!」

札幌在住、スープカレー屋で働く鼓田ミナレは、酒場で知り合った地元FM局のディレクター・麻藤兼嗣に失恋トークを炸裂させていた。翌日、いつものように仕事をしていると、店内でかけていたラジオから元カレを罵倒するミナレの声が……! 麻藤はミナレの愚痴を密録し、生放送で流していたのだ。激昂してラジオ局へ乗り込むミナレ。しかし、麻藤は悪びれもせずに告げる。

アニメ「波よ聞いてくれ」より。
「お姐さん、止めるからにはアンタが間を持たせるんだぜ?」

ミナレは全力の弁解トークをアドリブで披露する羽目に。この放送は反響を呼び、やがて麻藤からラジオパーソナリティにスカウトされる。

「お前、冠番組を持ってみる気ないか?」

タイトルは「波よ聞いてくれ」。北海道の深夜3時半、そしてミナレは覚醒するッ!

キャラクター
  • 鼓田ミナレ(CV:杉山里穂) / 本職はスープカレー店「ボイジャー」の店員だが、ひょんなことから藻岩山ラジオ局(MRS)の深夜番組「波よ聞いてくれ」のパーソナリティに抜擢。麻藤からは素人離れした滑舌、人を煽るような声と語彙、頭の回転の良さを評価される。
  • 麻藤兼嗣(CV:藤真秀) / ミナレの才能をいち早く評価し、ラジオ業界へ引き込む。ミナレのラジオ業界進出におけるフィクサーでもある。
  • 南波瑞穂(CV:石見舞菜香) / 学生時代からラジオ業界を志していた。ミナレ曰く「大したことでないのに笑い転げる燃費の良さ」と「買った惣菜を皿に盛り付けるような几帳面さ」を持つ。亀を3匹飼っている。
  • 久連木克三(CV:山路和弘) / 本職は官能小説家だが、一般小説も執筆している。業界歴は長く、急遽必要になった原稿を仕上げたり、読者投稿をでっちあげたりするのもお手の物。麻藤とは古くからの付き合い。
  • 茅代まどか(CV:大原さやか) / ミナレの失恋トークが流された、昼時間帯の生放送番組「茅代まどかのSeptember Blue Moon」を担当。それ以来、ミナレのことを折に触れて気にかける。
  • 甲本龍丞(CV:石川界人) / やや無愛想だが仕事に実直。瑞穂に好意を寄せているが、うまく気持ちを伝えられない不器用な面も。
  • 中原忠也(CV:矢野正明) / 主にキッチンを担当。髪型こそ攻めているが、繊細な一面を持ち、情に厚いところもある。ミナレに好意を寄せており、ラジオ業界へ進むのを反対する。
  • 城華マキエ(CV:能登麻美子) / 兄が「ボイジャー」店長に交通事故でケガを負わせた責任を感じ、復帰するまで店の手伝いを申し出る。儚げな雰囲気を持つが、はっきりした物言いをすることも。
  • 宝田嘉樹(CV:島田敏) / カレー激戦区の札幌でありながら、繁盛店をつくるほどの腕の持ち主。ミナレに対して声を荒げることも多いが、接客スキルを褒めてもいる。
  • 須賀光雄(CV:浪川大輔) / 「父親の会社が不渡りを出した」と嘘をつき、ミナレから50万円を騙し取って消える。しかし、のちにミナレのラジオを聴き、再び接触してくる大胆不敵な男。
  • 沖進次(CV:内山昂輝) / ミナレが暮らすアパートの住人で、一見すると物静かな常識人。しかし自室のあちこちに盛り塩をしたり、夜な夜な女性の名前を叫ぶなど、何やら怪しい過去を匂わせる存在。
沙村広明 インタビュー

なんのアニメなのかよくわからないですよね(笑)

沙村広明

──「波よ聞いてくれ」TVアニメ化が発表された際の反響として、喜んでいるファンももちろん多かったですが、「え、あれがアニメ化できるの?」という声もSNSなどで散見されたように思います。

俺もそう思っていた部分はあります(笑)。

──実際、鼓田ミナレ役の杉山里穂さんも「映像化が難しいと言われていた沙村先生のラジオ業界コミックが、どんなアニメになったのかぜひ楽しみにしていただければと思います」とコメントしていました。原作者としてはどのような理由で「アニメ化が難しい」と思っていましたか?

このマンガって、「ラジオマンガ」って言えるほどジャンルがはっきりしてないんですよ(笑)。だからアニメにしても「なんのアニメなんだろう」って思われるんじゃないかなって。そういう意味では難しいかもなと。

──確かにラジオ以外の部分でもたくさん事件が起きるので、単純に「ラジオ業界もの」とはひとくくりにしづらい作品です。

基本的にはラジオの話だから、あっちこっちに旅をするでもなく、札幌の近辺で行われる話なんですよ。それなのにビジュアル的にはかなり変な場面が多いんじゃないかとは思います。

アニメ「波よ聞いてくれ」より。

──アニメの第1弾PVは、ミナレが森の中で熊と対峙する場面から始まりますからね。

そうそう。だから視覚的に退屈するってことはないんじゃないかなーと思うんですけど、PVを観てもなんのアニメかはよくわからないですよね(笑)。