「なまいきざかり。」|ミユキ蜜蜂&佐藤拓也 対談 恋のオフェンス男子・成瀬翔を“五感で感じる”方法

成瀬とシンクロしてすごく緊張しました(佐藤)

──ミユキ先生は、佐藤さんが初めて成瀬の声をあてられたのを聞いたとき、どんなふうに感じましたか。

ミユキ もう感動しすぎて、記憶がないくらいです。

佐藤拓也

佐藤 記憶はあってほしい(笑)。

ミユキ (笑)。佐藤さんやほかのキャストの方々が収録されているとき、本当に舞い上がってしまって。「すごい! しゃべってる成瀬がいる!」って、ちょっと想像がつかなかったような感覚でした。

──原稿執筆中、佐藤さんの声で成瀬の声が再生されたりしますか。

ミユキ しますします。

佐藤 すごくうれしい。ちなみに僕は、成瀬がセンパイの家に行くというお話を演じたとき、成瀬とシンクロしてしまいすごく緊張しました。お義父さんの前とか……。

──大晦日のエピソードですね(単行本限定版10巻付属のドラマCDに収録)。

佐藤 ええ。すごく楽しかったですけど、同じくらいドキドキしましたね。

ミユキ そのドラマで成瀬が、緊張してテンパった由希のお父さんに学年を2回聞かれて、「高2っす」って2回答える場面がありましたよね。その2回目の、ちょっと戸惑ってる「高2っす」が、すごくかわいらしくて。いつもセクシーな感じなのに慌てているギャップというか、ちゃんと高校生らしい感じがすごく好きなんです。そこ、何回も巻き戻して聴いてます。

佐藤 ありがとうございます(笑)。成瀬、ここぞというときの気の遣い方は外さないですよね。

成瀬を演じるときは、わざと余白を作っておく(佐藤)

──成瀬ってすごくセクシーなキャラクターだと思うんですが、佐藤さんがそういったキャラを演じるときの気構えや意識されている点を教えてください。

佐藤 あんまりスイッチの切り替えって考えてないんです。例えば、初めて成瀬の声をやらせていただくときに意識したのは、高校生だということ。マンガのキャラクターとはいえ、高校生であって、大人ではないのだということは念頭に置いていて。だから、何かセクシーなセリフを言うときに、大人になりすぎないというか、“こういうこと言ってみたかったんだよな”という感じを忘れないでいたいんです。あえて「できあがってない感じ」に作っていくというのは、意識していました。

──なるほど。完璧にセクシーさを作りすぎない、ということですね。

佐藤 はい、どうしても僕は、声が低いというか太い部類に入るので、大人っぽい印象が出てしまいがちなんです。成瀬はもちろん、タッパ(背)もあって大人っぽくは見えるんですけど、そこに引っ張られると成瀬らしさがちょっとなくなっちゃうなと思ったので、わざと余白を作っておく、というのはありましたね。

──カッコいいセリフを言い慣れているわけではない、まだ大人としては未完成な部分を、あえて残しておくということですか。

佐藤拓也

佐藤 そう。それは最初のうち、収録していて思ったことですね。年齢的にも、「詰めの甘さ」みたいなものは、残しておきたいなと思っています。……正直に言うと、最初は「うわー、こんなにカッコいい子の役が来ちゃった、どうしよう!」と思ったんですよ。

ミユキ (笑)。

佐藤 今だから言えるんですけど(笑)。こんなスマートで、モテるであろうカッコいい男性の役をいただいて、「がんばりますけど、ご期待に添えるかしら……」と。でも、成瀬という人間を作っていくなかで、さっき言ったようなところも見えてきたので、成瀬のこと、今は非常に「かわいくていい奴だな」って思ってます。

──その層の重なりが、佐藤さん演じる成瀬の立体感につながっているんですね。

佐藤 例えば、アニメが好きな方たちからすると、いわゆる「スパダリ感」が、セクシーな男性像としてあるとは思うんですが、やはり2次元とか音声だけの世界とはいえ、キャラクターも人間なので、隙がない人にはしたくないんですよね。成瀬も、一見「スパダリ」に見えがちなんだけど、彼もまだ経験豊富なわけではない高校生だから、型にはめてしまうと薄っぺらくなる。だから、例えばセクシーなことを言うときも、その女性をものにするために言うのか、あるいは、そんな気はなかったのに、あまりにもその女性が素敵で、ついそういうことを言いたくなってしまったのか。そこもケースバイケースだと思うので、「セクシーなキャラだからこうしよう」と決めてかかるとか、スイッチを明確に切り替えるという意思はないですね(と話しながら、ミユキの前に置かれたペットボトルの蓋を開けてあげる佐藤)。

ミユキ蜜蜂と佐藤拓也。

ミユキ ……!! すいません、ありがとうございます……! 優しい……!

──(笑)。さりげなさって、こういうことですかね、ミユキ先生。

ミユキ また汗が出てきました(笑)。

無・理!(佐藤)

──佐藤さんから見た「なまいきざかり。」の魅力をお伺いできますか。

佐藤 成瀬とセンパイを見ていると、僕までドキドキしちゃうんですよね。「成瀬すごい! 好きな人にこんなこと言えない!」と思ったり、男の僕から見てもドキドキしてしまうようなセリフがたくさん出てくるので、先生すげえなあ、と思っています。

ミユキ うれしいです(笑)。

佐藤 あとは、付き合う前の順序の踏み方が絶妙なんですよね。成瀬もいきなりセンパイに対してガッと攻めるわけでもなく、センパイも成瀬を完全にシャットアウトするわけでもない。恋愛の初めのほうの、まだお互いの思いが噛み合いきらない、気持ちが完全につながる前のやきもきとした、じれったい感じが、すごく絵からもセリフからも伝わってくる。そこが、僕が「なまいきざかり。」で好きなところですね。

「なまいきざかり。」カラーカット

ミユキ ありがとうございます。でも佐藤さんは、実生活でも成瀬みたいなセリフ、言えそう……。

佐藤 う、うーん……無・理!(笑)

ミユキ (笑)。なんかイメージ的に、言ってらっしゃるかと……。

佐藤 とんでもない! 先生あのね、お芝居じゃなきゃこんなこと言えないですよ!

──日々の生活に、参考になったりしませんか?

佐藤 どこで使えばいいんだ!!

一同 (爆笑)。

佐藤 まあ、芸の肥やしという言葉がありますが、声の仕事をさせていただくうえでの引き出しというか、糧になってるのは間違いないです。ただ、実生活で成瀬みたいなことを言う勇気は……ないですね。ははは!

──紆余曲折を経て、ようやくまわりにもカップル宣言をして公に付き合いはじめた成瀬と由希センパイ。カップルというフェーズに移って、ミユキ先生の意識や描き方で変わった点はありますか?

ミユキ ありますね。実はだいぶ変わってきていて、付き合ってからのほうが連載が長くなってきているので、どんどん展開の種類がなくなっていくんです。起こる問題と解決法もパターン化してしまいがちなので、ちょっと悩みどころです。でも、実際のカップルの子たちもたぶんそうで、たとえばケンカの内容が毎回同じだったりすると思うんですよ。だから同じことの繰り返しが逆にリアルなのかもしれないと思って、今は開き直ってやってます(笑)。

ミユキ蜜蜂「なまいきざかり。⑬」
2018年6月20日発売 / 白泉社
ミユキ蜜蜂「なまいきざかり。⑬」

コミックス 463円

Amazon.co.jp

Kindle版 432円

Amazon.co.jp

“はじめて”の夜を越えた由希&成瀬のラブはますますパワーアップ! 卒業式に春休み旅行、楽しい行事が目白押し! ……と思いきや、大学入学早々トラブル満載で!?

ミユキ蜜蜂「ピンクスクラップ」
2018年6月20日発売 / 白泉社
ミユキ蜜蜂「ピンクスクラップ」

コミックス 463円

Amazon.co.jp

Kindle版 432円

Amazon.co.jp

「なまいきざかり。」の殿くん&あみちゃんカップル番外編! 付き合って1年……いまだにキス以上に進まない2人の“はじめて”の行方は…!? 「なまいきざかり。」の幻の初回読み切りver.なども収録した、満足度たっぷりの短編集。

「ザ花とゆめ サマーラブ 2018/9/1号」
2018年7月25日発売 / 白泉社
「ザ花とゆめ サマーラブ 2018/9/1号」

夏こそエロきゅん♥アツい恋号。ザ花リニューアル2号目のテーマは「サマーラブ」!
ミユキ蜜蜂「なまいきざかり。」由希&成瀬攻めのエロきゅん袋とじマンガ&新作読み切り「ハダカの万里くん」ほか、「GAME~スーツの隙間~」の西形まい「褐色のロゼ」、「墜落JKと廃人教師」のsora「ミレンボーイ・ミレンガール」など人気作家の新作が盛りだくさん!

ミユキ蜜蜂(ミユキミツバチ)
ミユキ蜜蜂
千葉県出身、11月29日生まれ。現在花とゆめ(白泉社)にて、「なまいきざかり。」を連載中。
佐藤拓也(サトウタクヤ)
佐藤拓也
宮城県出身、1984年5月19日生まれ。賢プロダクション所属。代表作は「義風堂々!! 兼続と慶次」(前田慶次役)、「ガンダム Gのレコンギスタ」(マスク、ルイン・リー役)、「刀剣乱舞」(燭台切光忠、江雪左文字役)など。