映画「ミュージアム」
FROGMANが語る、センスが詰まった殺人アーティスト“カエル男”
雨の日に現れ、次々と猟奇殺人を繰り広げる謎のカエル男と、カエル男に妻子を狙われた警視庁捜査一課巡査部長・沢村を描くサスペンスホラー「ミュージアム」。巴亮介により2013年から2014年にかけてヤングマガジン(講談社)にて連載され、2016年に小栗旬主演で映画化を果たした。Blu-ray / DVDが3月にリリースされたばかりだ。
コミックナタリーでは、映画「ミュージアム」のパッケージ化を記念した特集記事を展開。「秘密結社 鷹の爪」の監督として知られ、3年前に原作マンガを特集した際にも登場してもらったFROGMANに再びインタビューを実施した(参照:巴亮介「ミュージアム」特集、FROGMANが蛙男を考察)。前回のタイミングでは物語がまだ完結しておらず、「カエル男がどんなに面白い奴なのか期待」と語っていたFROGMAN。原作完結と映画を通して、カエル男をどう読み解いたのか。映画制作をしていた経験から見る美術面のこだわりなどとともに、俳優陣の強烈な演技についての感想を聞いた。
取材・文 / 西村萌 撮影 / 佐藤類
妻夫木くん、あの仕事してよかったのかな(笑)
──FROGMANさんには、2014年に原作マンガ2巻が発売されたときの特集にも出ていただきました。またも“カエル男”つながりということで、今回は映画についてお話を伺えればと思います。さっそくですが、映画をご覧になっていかがでした?
まさに「これが実写化したらどうなるんだろう」って期待をちゃんと打ち返してくれて。原作のイメージをしっかりと踏襲してましたね。小栗(旬)くんと妻夫木(聡)くんという、いわゆる演技派の役者さんに任せてすごく硬派に描ききっていた印象です。
──小栗旬さんは、自分の妻子をカエル男に攫われてしまった刑事・沢村を演じていました。
ほんとは僕、沢村ってもう少し線の細い印象を持ってたんです。沢村って後半に進むに連れて、どんどん葛藤していくじゃないですか。
──身も心も追い詰められていきますね。
小栗くんって割とタフガイの役が多いイメージだったから、そういう葛藤を演じきれるのかなって思ってたんです。でも意外と、「あ、そういうのもできるんだな」って気付かされて。最初は後輩を従えて「こんなんでヘコたれてたらダメだぞ!」みたいに言ってたのが、だんだん崩壊していって……。そして最後に何もかもズタズタになっていくのが、逆にリアリティがあったというか。
──後半は叫んでるシーンが多かったのが印象的でした。
叫びっぱなしで、震えっぱなし。
──一方、カエル男を演じた妻夫木聡さんはいかがでした?
いやあ、妻夫木くんね! あの仕事してよかったのかなっていう(笑)。「ウォーターボーイズ」の頃からすると、とんでもない変わりっぷりですよね。
──爽やかで2枚目なイメージとは打って変わったものでした。
妻夫木くんだってわかって観てても、最後まで妻夫木くんっぽさというのが全然出てなかった。役者さんって、やっぱりどこかでそれぞれのパーソナリティが出てしまうじゃないですか。でもカエル男は最後まで汚いし気持ち悪い奴で。あの汚れ役をあそこまで演じきってたのを見て、「やっぱり彼って芝居上手いんだなあ」って思わされましたね。
──カエルのマスクをかぶった姿も外した素顔も、どちらも怖かったです。
マスクを外してスキンヘッドになったときはもちろんなんですけど、実はマスクをかぶってるときの存在感のほうが恐ろしくって。役者さんって表情で商売するはずなのに、それが見えなくてもあの不気味な佇まいを出せるってのはさすがでした。
雨を降らせるのって大変なんです
──FROGMANさんは映画制作に携わっていた経験があるとお伺いしました。そういった視点から印象的なシーンはありますか?
この映画、全編にわたって雨のシーンが多いじゃないですか。特に冒頭の土砂降りのシーン。僕もやったことあるけど、あれだけの広範囲に雨を降らせるのってすっごい大変なんですよ。でもあの土砂降りの鬱陶しい感じが、このあと始まる不穏な物語を予兆させる効果をうまく生み出してるなあと。
──なるほど。ほかに裏方視点で見て気になったところはありますか?
やっぱりすごいのは美術。妻夫木くんの特殊メイクもそうだし、死体1つひとつの造形もすごく丁寧に作り込まれていて。サスペンスって死体がいかにも“This is 作り物”みたいな感じだと、途端に気持ちが引いちゃうじゃないですか。
──現実に引き戻されてしまいますね。
ひやひやハラハラしながら観てても、途中で「ああ、ダセえな」なんて興ざめしてお客さんが下車しちゃったりもするし。登場人物に共感させて最後まで興味を引っ張っていくためにも、そういうディテールって手を抜けないんですよね。まあコメディだったら、うちの作品みたいに最初から最後までずっと手を抜きっぱなしでもみんな笑ってくれるんですけど(笑)。
──(笑)。確かに「ミュージアム」はセットの随所にもこだわりが見られました。
カエル男の部屋1つとってみても、得体の知れない水槽があったり、冷蔵庫にいたっては中の怪しいものが透けて見えるガラス面だったり。汚し方とかエイジングのかけ方もうまくて、監督もそういう細部に凝るのが好きなんだろうなあと感じましたね。
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- Blu-ray / DVD「ミュージアム」 / 発売中 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
- 初回仕様 Blu-ray / DVDセット / 7549円
- 通常仕様 Blu-ray / 5389円
- 通常仕様 DVD / 4309円
初回仕様収録内容
- DISC1(Blu-ray)
本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分) - DISC2(DVD)
本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分) - DISC3(DVD)
3時間を超える豪華映像特典収録(約228分)- メイキング・オブ・ミュージアム(約106分)
- インタビュー集:小栗旬、尾野真千子、野村周平、妻夫木聡、大友啓史(約46分)
- イベント映像集:ジャパンプレミア舞台挨拶&初日舞台挨拶&大ヒット御礼舞台挨拶(約29分)
- 小栗旬×大友啓史 シーンセレクション・インタビュー(約47分)
初回仕様
- 3面デジパック仕様
- アウターケース
- フォトブック(64P)
通常仕様収録内容
- DISC1(Blu-ray / DVD)
本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分)
監督:大友啓史
原作:巴亮介「ミュージアム」 / ヤングマガジン(講談社)
キャスト:小栗旬、尾野真千子、野村周平、丸山智己、田畑智子、市川実日子、伊武雅刀、大森南朋、松重豊、妻夫木聡ほか
©巴亮介/講談社 ©2016映画「ミュージアム」製作委員会
FROGMAN(フロッグマン)
1971年、東京都出身。映画やドラマの制作スタッフとして十数年のキャリアを積んだ後、島根県へ移住し「蛙男商会」名義で個人制作のFlashアニメを発表。エッジの効いた作風と制作手法が口コミで話題になる。2006年に地上波で放映された、「秘密結社 鷹の爪」を含む「THE FROGMAN SHOW」でブレイクした。
「鷹の爪」情報
- Blu-ray / DVD
「鷹の爪8 吉田くんのX(バッテン)ファイル」 - 発売中 / ディー・エル・イー
- 劇場アニメ「DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団」
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「秘密結社 鷹の爪」と、2大アメコミのひとつである「DCコミック」がタッグを組む新作映画が2017年に公開決定。スーパーマンやバットマンなどの有名キャラクターたちと、吉田くんたち鷹の爪団が夢の共演を果たす。2017年秋公開予定。
巴亮介(トモエリョウスケ)
1983年12月6日生まれ。神奈川県横浜市出身。第61回ちばてつや賞ヤング部門において「GIRL AND KILLER─オンナと殺し屋─」で大賞受賞。2009年、ヤングマガジン53号(講談社)に同作が掲載されデビューを果たす。2013年から2014年にわたり同誌にて「ミュージアム」を連載し、2016年には同作の新作エピソードを発表した。
単行本情報
- 巴亮介「新装版 ミュージアム 完本」
- 発売中 / 講談社
2017年3月28日更新