コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第10回 宮城理子「メイちゃんの執事DX」
「メイちゃん」の10年、マーガレットでの25年
メイの描き方は気分や体調で変わる
──無印と「DX」の間には、昭和の少年スパイを描く「ミカド☆ボーイ」というだいぶ毛色の違う作品を連載されていました。いかがでしたか?
「ミカド☆ボーイ」では描きたかった絵柄に近づけられた気がしています。髪の毛の線をかなり淡白にしたりして、シンプルな絵柄に。目もまつ毛をなくして。
──「DX」のメイもその流れを汲んでるというか、まつ毛がなかったりシンプルな印象ですね。無印のメイはまつ毛バシバシでしたが。
昔はもうちょっとギャルっぽいメイクが世間で流行ってたんでしょうね。無印を描いてるときも、シンプルな絵柄に移したいなってだんだん思いはじめてたけど、連載中にやっちゃうと差が出すぎちゃうから、20巻までは変えないようにしてたんです。あと「DX」序盤でのメイは、「ミカド☆ボーイ」の銀に似せて描いてますね。血のつながりがあるので。
──単行本のラストで少し描かれてましたけど、やっぱり銀は、「メイちゃん」に出てくるメイの……。
はい、金太郎おじいちゃんです。つながりを匂わすためにも、「DX」の序盤のメイは見かけを銀に近づけました。でも最近はまた少女っぽくなってきたかな。メイの描き方は、自分の好みや体調によってずいぶん変わるんです。ちょっと髪切ろうかな、とか、伸ばそうかな、とか。
──そんなにカジュアルに変えちゃうんですか!
変えちゃいます。暑いから髪短く、とか。本当はダメなんでしょうけどね(笑)。
「いいキャラクターはシルエットでわかる」
──「ミカド☆ボーイ」1巻発売時のインタビューでは(参照:宮城理子「ミカド☆ボーイ」インタビュー&あこがれの神山健治監督と対談)、「花になれっ!」の頃、エロゲー雑誌を買い込んで絵柄を自己改造したとお話しされてましたね。あれには驚きました。
20年くらい前でしょうか。私がリアルを追求しても、敵わないと思っちゃったんです。
──敵わない、というのは?
集英社の少女マンガはとてもリアルなんですよね。今現実で流行っている洋服・髪型の女の子が、リアルタイムの恋をしている。制服も、実際の流行に沿って描いてある。でも私のマンガはちょっと外れちゃってるので、流行を取り入れても合わないんですよね。だから絵柄を変えるにしてももっと違うところから持ってこないと、と思って、かわいい女の子が出てるものを見回して、エロゲー雑誌に行き着きました(笑)。
──あははは(笑)。
色気がある絵は基本的に好きなんです。やっぱり男性は、身体の描き方が上手いですよね。それと、たぶんこれは少女マンガではあまりない、アニメーションとかの考え方なんですけど「いいキャラクターはシルエットでわかる」っていうのがあって。何人か女の子がいても、シルエットにしたときに、「この子はツインテールだから○○ちゃん」「この子はこういうプロポーションだから○○ちゃん」というように、わかるくらいの差があるのがいい。
──横に並べても、同じシルエットの子が1人もいないと。
いないように考えて、今でもキャラデザしてますね。でも少女マンガだと、流行りの、似たプロポーションの子がいっぱい出てると思います。私のやり方は古い考え方で、全然オシャレじゃないですよ。
──でもその普通じゃないやり方が、一風変わったキャラクターたちとマッチしているように思います。
そうですね。変な話に変なキャラクターだから、大丈夫だろうと(笑)。たぶん同時発生ですね。話がモヤッと浮かんだ段階で、キャラクターの見た目も思いついてきて、両方が同時進行で固まる感じです。
小学生のときに、吾妻ひでおの女の子に惹かれた
──マンガ家としてデビューする前、もともとは二次創作を描かれていたんですよね?
ええ。でも大学に入った頃に、人のふんどしで相撲を取る感じが虚しくなってきて……。20歳くらいで辞めようって思いはじめた頃に友達の家に遊びに行ったら、同人で使ってるのよりちょっと大きいサイズの原稿用紙があったんです。何の本を作るのか聞いたら、「少女マンガ投稿してる」って。それまで私、マンガを仕事にするなんて全然考えてなかったんですよ。不安定な職業で、親に怒られると思ったし。でも一度くらい挑戦してもいいかなと思って、1年って期限を決めて投稿しはじめたんです。そしたら最後の最後に引っかかって。
──マーガレットにしたのは、もともと愛読されていたからですか?
その友達がね、少コミ(少女コミック:現Sho-Comi、小学館)に投稿してたんですよ。それで「発売日が同じだからマーガレットがいいよ」って言われて。
──ええっ。
発売日が同じだと締め切りが同じじゃないですか。だから一緒に遊べる!って思ったんです(笑)。本当は私、白泉社のマンガのほうが好きで……。正直にいうと、マーガレットは読んだことがなかった。
──「花になれっ!」「ラブ♥モンスター」そして「メイちゃん」の序盤では、マーガレットの中では異質であろうと思われるほど、エッチな描写が毎話盛り込まれていたのが印象的でした。
それはですね、「花になれっ!」の前まで、アンケートの結果が全然よくなかったんです。当時の編集長からも「このままだと次、連載あげられないよ」と言われて。それで友達が「もう、ものすごくマーガレットにないようなマンガを描いて、辞めればいいんじゃない?」「エロは売れるよ!」と助言をくれて(笑)。「それなら最後にとんでもないものを描いて去ろう!」という考えに至って。
──なるほど。
思い返してみたら、私が小学生ぐらいのときに「この作家さんの描く女の子かわいいな」と思った作家さんがいて、その人は後から考えると、吾妻ひでおさんだったんですよ。日本のロリコン界の巨匠って言われる。
──すごい感性を持った少女ですね(笑)。
でしょう? だから下地はあったんだなって(笑)。
──方針を転換して、読者の反響はいかがでしたか。
それはもう上がりましたね、人気がうなぎのぼりに。
──マーガレット読者もみんな、実はそういうのが好きだった?
ええ。
──あはは(笑)。
めちゃくちゃ叩かれましたけどね。「そんなはしたないものを天下のマーガレットで描くなんて」と……。「花になれっ!」「ラブ♥モンスター」はそういう意味で私の過度期だと思います。「メイちゃん」になってからは、さすがに触手はやんなくていいかな。うーんでも、オイルは塗っておこうかな、と、そんな感じです(笑)。
次のページ » 男キャラがカッコいいと食いついちゃう
- マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
- 第6回 あいだ夏波
- 第7回 やまもり三香
- 第8回 水野美波
- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
- 第14回 いくえみ綾
- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
期間限定!auの電子書籍ストアで読み放題
※各作品の読み放題提供期間はブックパスの特集サイトでご確認ください。
ブックパス
スマートフォンやパソコンで利用できるauの電子書籍ストア。月額562円(税別)でマーガレット作品も読み放題! 初回入会なら14日間無料でお試しもできる!
ついに!イギリスからアイツが帰ってくる!?
執事協会規約第372条の決まりで、強制的に4年に1度の休暇を取らされた理人。3日間ものあいだ、メイから100km以上離れて1人旅をしなくてはならない虚しさで、次第に理人の心に限界が近づきます。一方、理人のいない聖ルチア女学園では、アイツが戻ってきてメイと2人きりの時間を過ごしており……!?
宮城理子(ミヤギリコ)
「しあわせな冬の日のために」で新人賞を受賞以来、 「花になれっ!」「ラブ♥モンスター」などを執筆し、マーガレット(集英社)で活躍中。2006年から 連載が始まった「メイちゃんの執事」は 水嶋ヒロ・榮倉奈々主演でドラマ化され話題に。同作は宝塚歌劇で舞台化もされた。2013年よりマーガレットにて「ミカド☆ボーイ」を連載。2014年からは「メイちゃんの執事DX」を連載中。
2016年1月22日更新