「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」TVアニメ化記念・赤坂アカインタビュー|“天才たちの恋愛頭脳戦”が感情で魅せるラブコメへと変化した理由

テレビアニメ化が発表されたばかりの「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」は、由緒正しき名門高校を舞台に、学年トップの成績を誇る生徒会長の男子・白銀御行と、副会長で大財閥の令嬢・四宮かぐやが織りなすラブコメディ。互いに好意を寄せ合っているものの、プライドが高く素直になれない2人が、なんとかして相手から告白させようとする様が描かれる。本作は週刊ヤングジャンプ(集英社)にて連載されており、2017年には「第3回 次にくるマンガ大賞」コミックス部門の第1位に輝いた。

コミックナタリーはアニメ化と週刊ヤングジャンプでの連載100回を記念し、作者の赤坂アカにインタビューを実施した。連載中、サブタイトルにも冠されている「頭脳戦」から、「キャラの感情を引き出す物語」へと作品を方向転換したという赤坂。インタビューでは「かぐや様」連載までの経緯や、「感情を元に話を作る」という独自のエピソード創出方法、アニメ化に寄せる期待などについて語ってもらった。

取材・文 / 宮津友徳

アニメ化はひとつのゴールだった

赤坂アカ

──「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」のテレビアニメ化、おめでとうございます。まずはアニメ化が決定した際のお気持ちから伺えますか。

もちろんうれしかったです。僕自身アニメが好きということもあって、アニメ化をひとつのゴールとしていました。

──じゃあ「かぐや様」は当初からアニメ化を意識して描かれていたと。

「かぐや様」だけじゃなく、デビュー作の「さよならピアノソナタ」もそうですし、「ib -インスタントバレット-」も、もちろん「アニメ化してほしいな」と思いながらやっていました。

──「さよならピアノソナタ」は杉井光さんのライトノベルのコミカライズ、「ib -インスタントバレット-」はオリジナル作品でしたが、赤坂さんは「ib -インスタントバレット-」の連載終盤に「かぐや様」の連載をスタートさせていますね。

「ib -インスタントバレット-」は1、2巻が同時発売だったんですが、「3巻で終わります」という話を当時の担当さんからされていたんですよ。連載が終わる前に何かしら動かないと無職になっちゃうので(笑)、どうにかして「連載が終わっても新しい作品をすぐに始められるように」と思い、今の担当さんに付いてもらうことになったんです。

「ib -インスタントバレット-」1巻

──でも「ib -インスタントバレット-」の単行本は、結果的に5巻まで発売されていますよね。

そうなんですよ。「かぐや様」の準備を始めましょうってなったときに、「4巻までやっていいですよ」って言われたんです。それからしばらくしたら、「5巻まで出せます」という話になって。もちろんありがたい話ではあるので、「やります!」と言ったんですが、1巻分くらいは2作品の連載期間が被っているので大変でしたね。

──「ib -インスタントバレット-」は、世界を破壊できる力を持った少年少女を描くセカイ系の要素を持った作品でしたが、「かぐや様」は王道のラブコメディです。2作品を比べてみると創作の振り幅が広いなと感じました。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」第1話の見開き扉ページ。

僕は中学2年生くらいのときに「新世紀エヴァンゲリオン」にハマって。当時「エヴァ」が10周年のちょっと前くらいで、盛り上がっていて。そのときから「いつかセカイ系の物語を作りたいな」と思っていて、「ib -インスタントバレット-」ができたんです。ただ自分で言うのもなんですが、僕はいろんなジャンルの作品を描けるタイプだとは思っていて。今回は打ち合わせをしていく中で、たまたまラブコメでいくと決まったという感じでした。

──では初期の打ち合わせの時点で、すんなり「かぐや様」の原形ができあがったんですね。

白銀とかぐやはともにプライドが高く、互いに惹かれ合っているのに「自らから告白するなどあってはならない」と考えている。

いや、最初は「人をいっぱい死なせるマンガを描きたいんですよ」「鬱な作品がやりたいです」って、地獄でデスゲームをする話とか、殺人鬼が出てくる話とかで3カ月くらいやり取りをしていましたね。で、担当さんが疲れていたのか「もうちょっと軽いのありませんか?」という話になって。「最近思いついたんですけど、『お互いに対して片想いの2人が、相手に告らせようとする』っていう話はどうですか」って言ったら、「いいじゃないですか! それ描いてきてください」って、今までで一番好感触な感じですぐにOKが出ました。

「かぐや様」のアイデアは燻製中に

──「お互いに片思いの2人が、相手に告らせようとする」というアイデアは、どうやって思いついたんですか?

家で燻製を作っていたときに浮かんできたんです。

──燻製ですか(笑)。

白銀とかぐやは由緒正しき名門校・秀知院学園で生徒会に所属している。

「なんで僕は今、家で燻製作ってるんだろう、ケムいな」と思いながら、ふと青春時代を思い返しちゃったんでしょうね(笑)。最初に浮かんだのは、互いに好き合っている男女が、学校の帰り道にアプローチをかけあって、相手から決定的な言葉を引き出そうとするっていう図なんです。そのときは普通のツンデレな男女2人っていう感じだったんですが、そこに生徒会などの要素を足して今の形になりました。

──サブタイトルに冠されている「天才」という要素も最初はなかったんですね。

そうですね。打ち合わせのときには、「お互いに片想いの2人が、相手に告らせようとする」という設定以外は、何も考えていなかったんですよ(笑)。そこから「相手から言葉を引き出す掛け合いをするなら、頭がいい感じのキャラがいいですよね」「頭がいいと言ったら舞台は名門校の生徒会とかですね」って、アドリブで担当さんに話したら、それがポンポン繋がっていったんです。ただ「頭脳戦」的な側面を大きなテーマにしていたのは、初期の頃だけだったんですよね。

──単行本4巻のおまけページでも「『天才たちの恋愛頭脳戦』という看板はそろそろ外すべきではないだろうか」とご自身でツッコんでいましたし、巻末のQ&Aでも「天才たち?」「頭脳戦?」という問いにそれぞれ「はい。すみません。」とお答えになっていましたね(笑)。具体的には「頭脳戦」からどういった方向にシフトチェンジしたんですか?

トランプでイカサマを見破られ、会計の石上から罵倒される藤原。

「キャラクターの感情を引き出す」っていう部分を中心に置いて、「その感情を引き出すためにはどうすればいいか」ということを考えるようになったんです。例えば4巻に書記の藤原さんがトランプでイカサマをする回があるんですけど、まず「イカサマがバレて恥ずかしい」という感情を自分のネタ帳の中から持ってきたんです。そして「イカサマと言えば一番スタンダードなのはトランプかな」「じゃあどんなイカサマが考えられるかな」と話を組み立てていきました。そうやって物語を作るようになってきたときに、今のコメディ重視の「かぐや様」が見えてきたんです。

テレビアニメ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」
あらすじ
家柄も人柄も良し!! 将来を期待された秀才が集う秀知院学園!! その生徒会で出会った、副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行は互いに惹かれているはずだが……何もないまま半年が経過!! プライドが高く素直になれない2人は、面倒臭いことに、“如何に相手に告白させるか”ばかりを考えるようになってしまった!? 恋愛は成就するまでが楽しい!! 新感覚“頭脳戦”ラブコメ、開戦!!
赤坂アカ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~⑩」
2018年6月19日発売 / 集英社
赤坂アカ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~⑩」

コミックス 555円

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Kindle版 527円

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エリートの集う秀知院学園生徒会で出会った会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや……。この両想いであるはずの天才2人が、互いに相手に惚れさせ、相手から告白させようと日常の全てで権謀術数の限りを尽くす、新感覚のラブコメ!!
第10巻では、白銀が“合コン”に参加してしまった事で、大きな波乱が巻き起こる!?
ほかにもLIKEとLOVEの違い、浮気ボーダー、合コン系ゲーム……などで、“恋愛頭脳戦”を繰り広げる中、かぐや様が幼少の頃より愛用してきたガラケーが遂に壊れてしまい!?

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赤坂アカ(アカサカアカ)
赤坂アカ
新潟県出身。電撃マオウ(KADOKAWA)にて2011年に、杉井光のライトノベル「さよならピアノソナタ」のコミカライズ連載をスタートさせマンガ家としてデビューを果たす。その後、2013年より同誌にて「ib -インスタントバレット-」、2015年よりミラクルジャンプ(集英社)にて「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」を連載。「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」は2016年に週刊ヤングジャンプ(集英社)へと発表の場を移しており、2017年に「第3回 次にくるマンガ大賞」コミックス部門の第1位に輝いた。