コミックナタリー PowerPush -鈴木小波「ホクサイと飯さえあれば」
“作る過程”をフィーチャーした飯マンガ ヤンマガサードに移籍し復活
川や土手に憧れて住みはじめた北千住
──舞台も前作では下町ということしかわかりませんでしたが、北千住に特定されました。
そうですね。北千住の町のことも描いていきたいです。私、北千住に住んでそろそろ10年になるんですが、やっぱり実際に住んでると描きやすいもので。下町って本当に賑やかなんです。最初は川というか、土手に憧れて住みはじめたんですけど、町並みもすごく好きになりました。
──「ホクサイと飯」にも商店街のお店がたくさん出てきますね。
北千住は個人商店がすごくがんばってるんですよ。お茶屋さんとかお豆腐屋さんとかそのまま残ってるので、すごいなあと思います。私、実家が柏なんですけど、商店街はもうスーパーに食いつぶされて無くなっちゃってるので。
──鈴木さんは実際に商店街で買い物されるんですか?
します、します。とりあえず個人商店で買うようにしていて。野菜とか、スーパーで買うより八百屋のほうが安いんですよ。旬のものもわかりますし。「ああ、もう筍出たんだ」とか。八百屋さんが「こうすると美味しいよ」とか教えてくれたりするんですよね。実は、私のよく行く八百屋さんは「ホクサイと飯」にも出てるんです。実際に、ミミちゃんっていう猫もいて。
──ああ、第5話に大きい看板猫がいる八百屋さんが出てきましたね。
そうなんです。もう、すっごいかわいいんですよ! でぶでぶ(笑)。
「ホクサイと飯」のキモは「作る過程の楽しさ」
──学生のブンは8年後のブンと比べてお金もあまりないと思いますが、第2話に出てきたパンの耳サンドイッチのような節約レシピも今後出てくるんでしょうか。
基本的にお金がないから節約するという話は、実はそんなに描いてなくて。ブンはご飯のためならお金は出すんです。節約レシピにしちゃうと、ほかのごはんマンガとあまり変わらなくなってくるかなと思って……。
──ああ、前作でもブンは3000円も費やして蕎麦を作ってました。それ以外にも、ほかのごはんマンガとの差別化は考えていますか?
なるべく食べるシーンは描かないようにしています。作るだけ。
──確かに、ごはんを食べてリアクションするシーンは一切ないですね。「できました」で終わるごはんマンガは、かなり斬新です。
寸止めです(笑)。食べるシーンはリアクションが全部一緒になっちゃうなと思ったので入れないようにしました。それに、そういうのは例えば「花のズボラ飯」なんかには敵わないので。
──食べるシーンがないことで、工夫している点はありますか?
絶対、誰でも味がわかるレシピにしています。「ホクサイと飯さえあれば」のテーマは、売っているものでも自分で作れるという「自炊」「自家製」。なので出来上がるものはミートボールスパゲティとか、誰でも味が想像できるもの限定です。特に味の説明をしなくてもいい。このマンガのキモは「作る過程の楽しさ」なんです。だから表紙のイラストも、作ってるシーンにしてみました。ちなみに、ブンは料理上手と思われるかもしれないんですが、実はそんなに上手くない(笑)。とりあえず作ってるだけなんです。
──作る過程を楽しんでいるんですね。
私自身も、自炊が好きで、昔から自家製でいろいろ作っていたりしてたんですが、作ってる間って頭が回転して楽しいんです。次はこれやって、って手順を考えたりして。こんなに楽しいんだから、みんなもやってみたら楽しいよ、って思います。
次のページ » ひとりごとにならないようにホクサイを
あらすじ
伝説のインドアご馳走マンガ、復活移籍新連載!!
かつて掲載誌の休刊に伴い惜しまれつつ終了した「ホクサイと飯」。本作「ホクサイと飯さえあれば」は、その8年前のお話。大学進学のため上京した山田ブンが、愛するぬいぐるみ(?)ホクサイと共に、東京・北千住の町でアイディア満載のビンボーレシピで美味しいご馳走作ります! トラブルがあっても、ホクサイがいて、美味しい飯さえあれば、毎日ハッピー!!
鈴木小波(スズキサナミ)
千葉県出身、東京在住。ふたご座。O型。2002年デビュー。代表作に「ホクサイと飯」「ヤオツクモ」「盛り合わせガール」など。2014年よりヤングエース(KADOKAWA 角川書店)で「燐寸少女」を、ヤングマガジン サード(講談社)で「ホクサイと飯さえあれば」を連載中。最近納豆にハマっている。