花とゆめ創刊45周年特集 第5回 草凪みずほインタビュー|「ヨナ」をよきところに導きたい。これ以外考えられない

マンガ家になる以外の選択肢がなかった

──草凪さんご自身と、45周年を迎えた花とゆめについてもお伺いできればと思います。草凪さんがマンガ家を志したきっかけを教えてください。

小学生の頃から絵を描いたり物語を作ったりするのが好きだったので、マンガ家になる以外の選択肢がありませんでした。

──子供の頃からの夢を叶えたんですね。花ゆめ作品は読んでいましたか?

雑誌は当時買っていなかったのですが、中高生の頃に「ガラスの仮面」「ここはグリーン・ウッド」「ぼくの地球を守って」「天使禁猟区」「ざ・ちぇんじ!」「赤ちゃんと僕」「アラベスク」など読んでいました。

──名作ばかりですね。

はい。それらの作品はすべて面白かったんですが、特に「ガラスの仮面」と「グリーン・ウッド」は大好きで、何度も読み返しました。あと「ぼく地球」は作品の持つ熱量と衝撃がすごすぎて、逆に気軽には読み返せない……!という存在です。

──花とゆめを投稿先に選んだ理由は?

18歳から22歳まで「闇の末裔」の松下容子先生のアシスタントをさせていただいていて、そこで初めて花ゆめを購入して。いろんなジャンルが詰まっていてどの作品も楽しいし、自分の肌に合ってるなと感じました。アシ経験から花ゆめの原稿ペースもわかったので、自然と花とゆめに投稿しました。

──デビュー作は、生徒会長・久遠廉らの学園ライフを描いた「よいこの心得」でしたね。

読み切りとしてスタートした作品だったんですが、最初はとにかくたくさんネーム直しをしました。それまで勢いでマンガを描いていたので、物語を作る基礎をそこで勉強させてもらった感じですね。いろいろ未熟でしたが、ありがたいことにキャラクターは読者さんに気に入ってもらえて、今でも思い入れがあります。

──2作目の連載は「夢幻スパイラル」。草凪さんは「『暁のヨナ』と系統的に近い」とTwitterでおっしゃってました。

単純に、戦う少女と異能力バトルとラブ要素、という点で近いのかなと。ストーリーとかは全然違いますが、これらの要素をもう少し描きたかったなーという思いが「ヨナ」に続いた感じです。

──なるほど、そうだったんですね。ボディガードと殺し屋の男2人を描いた3作目の「ゲーム×ラッシュ」で印象的な思い出はありますか?

「ゲーム×ラッシュ」は当時の担当さんから「男の子のコンビものを描いて」とオーダーがありまして。普通のコンビものから少しずらして、敵対関係にしようとしてすごく悩みました。マンガを描くうえでとても勉強になりました。

──次の「NGライフ」は全9巻と、約3年連載されました。初の長期連載作となりましたが、ストーリーは思い通りになりましたか? それとも意外な展開になったりしたのでしょうか?

読み切りからのスタートだったということもあり、最初からオチを見据えてはいませんでした。それに「夢幻スパイラル」や「ゲーム×ラッシュ」が打ち切りだったので、「NG」もいつまで描かせてもらえるかわからず、とにかく最初はいつ終わってもいいように、1話1話明るいテンションで読み切り、もしくは短いスパンで終われる仕立てになるように描いていて。ただ敬大と芹沢がくっつくことは初めから決めていたので、ラストまでの流れは自分にとって意外な展開にはなってないです。

──「よいこの心得」「ゲーム×ラッシュ」「NGライフ」は男主人公、「夢幻スパイラル」、そして連載中の「ヨナ」が女主人公と、主人公の男女比率は半々くらいですね。主人公の性別はどうやって決めるんですか?

描きたいストーリーに合わせて決めます。キャラは男のほうが描きやすいんですが、恋愛ものとして読者に共感してもらいたいときや、女の子ががんばる姿を描きたい場合は女の子にします。

──過去の連載作から「ヨナ」まで語っていただきましたが、これまでマンガ家としての活動の中で最もうれしかったことを教えていただけますか?

「ヨナ」の立ち上げ担当のYさんに、マンガを認めていただけたと感じたときはうれしかったです。Yさんとは読み切りの「黒檻姫と渇きの王」や「ヨナ」から組ませていただいたんですが、あるとき「ネームが描けない作家さんだと思っていた」と言われたんです。過去形ってことは、私に対するそのイメージは消えたのかなと思って、かえってやる気が出ました。それに、がんばって描いたものに読者さんからたくさん反響をいただけたことも本当にうれしかったです。

──反対に、つらかったことは?

「夢幻スパイラル」が打ち切りになったこと。このキャラたちをもう描けないんだと思うと悲しかったです。でも、納得はしてます。あとこれは今もですが、物語がうまく紡げなくて自分の力不足に地団駄踏んでるときです。読者さんの「面白かった」に救われますが、しかしそれに甘えてはいけないなと思っています。

残りのヨナたちの旅路も見届けて

──交流のある花ゆめ作家さんはいますか?

私が熊本に住んでいるのでなかなか会う機会は少ないのですが、鈴木ジュリエッタさんや椎名橙さんと一緒にお茶したり、おうちにお邪魔したりしたことがあって。

──草凪さんと鈴木さんと椎名さんのお茶会! 豪華なメンツですね。

とっても楽しかったです。2人ともユーモアがあってすごく優しくて、尊敬しています。私は人見知りで話し下手ですが、白泉社の新年会に行くと作家さんみんな優しくお相手してくれます(笑)。

──雑誌ごとに作家さんが分かれての二次会があると聞いたことがあります。花ゆめトークで盛り上がりそうですね。草凪さんは「花ゆめらしい作品」と聞いたとき、どんな作品を思い浮かべますか?

「暁のヨナ」カラーカット

花ゆめはさまざまな絵柄や世界観のマンガがあるけど、それぞれ違う物語でもその作品の持つ空気や道徳観にどこか近いものを感じます。作中で、友人や恋人、家族への考え方、怒りや信念……それに共通点を感じると花ゆめの作品だなと思ったりします。

──45周年を迎えた花ゆめ。今後、どんな雑誌になっていってほしいですか?

今までそうであったように、やっぱりたくさんのジャンルが詰まった懐の深い雑誌であってほしいです。ファンタジーもあれば、男主人公もあり、お笑いありお仕事ものあり。あと個人的に、キュンキュンする現代ラブコメは絶対入っててほしいな、と。

──最後に、草凪さんのファン、また「ヨナ」の読者にメッセージをお願いします。

30巻、10年続いた物語についてきてくれて本当にありがとうございます。残りのヨナたちの旅路も見届けていただけるよう集中して描いていきますので、よかったら読んでください。

草凪みずほ「暁のヨナ㉚」
発売中 / 白泉社
草凪みずほ「暁のヨナ㉚」

コミックス 税込486円

Amazon.co.jp

Kindle版 税込486円

Amazon.co.jp

高華国と千州軍の戦いの中、時間を稼ごうと相対する四龍たち。そして、前線で死力を尽くすハクは、ついにクエルボと見え一騎打ちに──!? その最中、千州の城ではヨナとクエルボの妻・ユーランのもとへ、ゴビ神官が現れ……!? 千州編クライマックス!

草凪みずほ「暁のヨナ㉚」30Arts Collection限定版
発売中 / 白泉社
草凪みずほ「暁のヨナ㉚」30Arts Collection限定版

コミックス 税込1328円

Amazon.co.jp

30巻発売記念の、豪華アートカード30枚セット付き限定版。描き下ろしイラストも入って見応え抜群!

花とゆめ18号
発売中 / 白泉社
花とゆめ18号

雑誌 税込400円

Amazon.co.jp

「暁のヨナ」W付録!

・「暁のヨナ SPポストカード」
30巻限定版に付いてくるアートカードと同サイズのポストカード。9月5日発売の花ゆめ19号の付録ポストカードと絵柄が繋がる仕様。両方集めるとコレクションが完璧に!
・「暁のヨナ アーツコレクションケース」
30巻限定版に付いてくるアートカード全30枚+付録の2枚がすべて収納可能なポケットファイル。
草凪みずほ(クサナギミズホ)
草凪みずほ
2月3日熊本県生まれ。2002年、「御神兄弟がゆく!?」で第27回アテナ新人大賞優秀新人賞を受賞。2003年に花とゆめ(白泉社)にて「よいこの心得」でデビュー。同作が連載化したことで、第28回アテナ新人大賞デビュー優秀者賞を受賞する。続けて「夢幻スパイラル」「ゲーム×ラッシュ」「NGライフ」とヒット作を飛ばし、現在花とゆめにて「暁のヨナ」を連載中。同作は2014年10月にTVアニメ化、2016年3月に舞台化を果たした。また舞台の新作「暁のヨナ~ 緋色の宿命編~」が11月より東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演され、生駒里奈と矢部昌暉(DISH//)が主演を務める。

2019年11月20日更新