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花とゆめ創刊45周年特集 第2回 音久無インタビュー|「弱み」を作るとキャラクターに命が宿る…けど、奔放執事は予定になかった!

綱渡りだった「黒伯爵は星を愛でる」

──2013年から2018年まで5年にわたり連載され、120万部超えのヒット作となった前作「黒伯爵は星を愛でる」のお話も伺えればと思います。完結まで描き上げたときはどのような気持ちでしたか?

「黒伯爵は星を愛でる」のカラーイラスト。

終わっちゃったんだなーと、すごく寂しい気持ちになりました。でも「花と悪魔」のときとは違って主人公たちは健在なので(笑)、描きたかったらまた個人的にでも描けるな!って思ったら、とりあえずエスターとレオンにひと区切りつけてあげられてよかったな、と安堵もしました。

──「花と悪魔」では、生きる時間が違う人外と人間の恋を描き切りましたからね。「黒伯爵は星を愛でる」も短期集中の3回連載からのスタートだったとか。

はい。3回連載から始まり、コミックスになるか?3巻までは描けるか?5巻で終わりか?みたいな綱渡りな連載でしたが、とりあえず描きたかったところまで描かせてくださった編集部と、読んでくださった読者様に本当に感謝の思いです。

「黒伯爵は星を愛でる」5話より。

──全12巻のストーリーを振り返ってみて、特に印象に残っているエピソードを3つ挙げるとしたら、どこになりますか?

とても個人的な思い出も入ったチョイスになってしまうのですが、1つは1巻の4・5話です。本誌の集中連載の後に、前後編として掲載されたエピソードだったのですが、ここでやっとエスターとレオンの関係や、どんな雰囲気のマンガにしたいかが自分の中で掴めた気がしました。

──エスターとレオンが「魔物の館」に閉じ込められたエピソードですね。エスターが震えながらレオンの力になりたいと自分の力を使ったシーンは、1巻でも盛り上がりのひとつでした。2つ目は?

9巻52話の、スコットランド編のクライマックスの回です。大切な人たちを守るためにエスターが強くなったなあと、しみじみ思えた回でした。

──スコットランド吸血鬼の女王として祭り上げられたエスターと処刑寸前のレオンが、敵に立ち向かう緊迫した回でした。アーサー、ジェイル、クリスら敵味方入り乱れていたストーリーが一気に収束しましたね。

みんなを一斉に動かして話を進めるのがとても大変で、ネームでも原稿でもとても時間がかかってしまって。担当さんをはじめ、たくさんの方にご迷惑をおかけしてしまいました……。3つ目は12巻67話の、エスターが向こうの世界から帰るシーンです。お母さんに別れを告げて、ほかの愛する人たちのために戻るエスターのがんばりを描くのが感慨深かったです。今はこの3つですが、すべてのシーンやエピソードにたくさん思い入れがあるので、別の機会に聞かれたらまた違った答えになると思います。

「黒伯爵は星を愛でる」52話より。 「黒伯爵は星を愛でる」67話より。

花ゆめには少女マンガ誌としては
ちょっと変わってる雑誌でいてほしい

──ストーリー全体の流れは、音さんの思い通りになりましたでしょうか?

当初からふわっとあった着地点からそこまでズレていないかと思います。ただ、本当にどこまで描けるかわからない綱渡り状態だったので、そのたびに「この話はできる、これは入らない」と取捨選択しつつ、「この展開とこの展開をつなぐ要素が要るな」となって新しい展開を考えたりもしました。なので行き当たりばったりに生まれた展開もたくさんありましたね。

──具体的には?

レオンが冤罪で牢に繋がれるところなんかは、修羅場中にお風呂に入ってて浮かびました。お風呂から出てアシスタントをしてくれている友人に「こんな展開どう!?」って話したのを覚えてます(笑)。

──あはは(笑)。そもそも、イギリスを舞台にしたダンピール(半吸血鬼)と吸血鬼ハンターの恋という物語の着想のきっかけはなんだったんでしょうか?

19世紀のイギリスは小学生のときに「シャーロック・ホームズ」を読んでからとても好きで、いつか描いてみたいと思っていました。それに吸血鬼も描いてみたいという夢があったので、その2つを組み合わせて。吸血鬼ハンターの伯爵と下町の少女というアイデアが最初にあって、伯爵が彼にとって宿敵である吸血鬼の血を持つ少女に恋をしてしまったらとても素敵だなと思い、2人ができあがりました。

スコットランドのキルトを身に着けるキャラクターたち。

──なるほど。イングランドとハイランドの対立や社交界のダンスのマナーなども描かれていて、作品の端々から音さんがイギリスをお好きなことが伝わってきて。

すごくきらびやかなのに、その裏は少し霧がかって仄暗いような、そんな19世紀のイギリスが好きなんです。

──マンガを描く際、何かを参考にされましたか?

いろいろな本を読んで参考にさせていただいたのですが、ビジュアル面では河出書房新社さんの「ふくろうの本」シリーズが、写真もいっぱいで素晴らしいです。ほかにも、少し時代が外れてしまうのですが「MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日」というドキュメンタリーDVDがとても良くて。現代の人々が実際に主人と使用人になってマナーハウスに住んでみるというものです。当時の暮らしが再現されていて、その中での人々の心の変化などもあり、とても興味深い内容でした。

──教えてくださってありがとうございます。最後に音さんのファンへのメッセージと、45周年を迎えた花とゆめが今後どのような雑誌になっていってほしいか、コメントをお願いします。

「黒伯爵は星を愛でる」のカラーイラスト。

いつも拙作を読んでくださる皆さま、応援してくださる皆さまのお陰でマンガを描けています。本当にありがとうございます。また新たな連載をさせていただくことができてとてもありがたくうれしい気持ちです。今までの作品とは少し趣が違うかも知れませんが、楽しんでいただけるようがんばります。それから花ゆめが45周年を迎えましたが、今までと同じように多様な作品が載っている雑誌、流行を取り入れつつも、やっぱり少女マンガ誌としてはちょっと変わってる雑誌、そんな存在でいてほしいと思います。いち読者として、これからどんな作品が出てくるのか楽しみです。

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下町で花売りをするエスターは、母を亡くし、双子の兄とも離れ離れ。「いつも笑顔でいれば、素敵な王子さまが現れるわ」という母の言葉を支えにしていたある日、エスターのもとにヴァレンタイン伯爵が現れ、「貴女は今日から私の花嫁です」と……!? しかし、伯爵には別の顔も……!? 半吸血鬼のシンデレラストーリー!

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2019年7月19日発売決定

「黒伯爵は星を愛でる」の番外編も収録。

音久無(オトヒサム)
音久無
4月22日生まれ、東京都出身。2004年に「ヒトサンマルマル」でビッグチャレンジ賞に準入選し、同年「兎の仮面の男」でザ花とゆめ(白泉社)にてデビューを果たす。代表作は「花と悪魔」「黒伯爵は星を愛でる」など。2019年より花とゆめ(白泉社)にて「執事・黒星は傅かない」を連載中。