黒星の変態キャラは全然予定になかった
──4月から新連載「執事・黒星は傅かない」がスタートしました。前作の「黒伯爵は星を愛でる」から「黒」と「星」というワードが続けて登場していますよね? この意図がすごく気になっていて……。
完全にたまたまです! 「黒星」という名前のキャラを以前から描きたかったので、名付けたらタイトルにまでなってしまい、結果前作と被ってしまいました……。
──そうだったんですね! Twitterで「自分の中では色々と新しい試みをしております」とおっしゃっていました。例えばどのような試みを?
【おしらせ】発売中の花とゆめ1号に「執事・黒星は傅かない」という読み切りを載せていただいています!お嬢様の言うことをきかない執事のお話です。10年以上ぶりの読み切りで、自分の中では色々と新しい試みをしております。ご覧いただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします~٩( ᐛ )و✨ pic.twitter.com/ohfaffZebV
— 音久無 (@noisecube) 2018年12月5日
ここまでコメディ寄りなマンガを描くの、初めてなんです。何よりファンタジー要素のないマンガを描くのがとても久々で……そして私はそういうお話で読者さんからの支持を得たことがないので、とてもドキドキしながら描かせていただきました。
──「執事・黒星は傅かない」は2018年12月と2019年1月に掲載された読み切りが好評を博して連載化された作品なので、読者の応援があったんだと思います。面白いなと思ったのが、「クッキーと黒星」や「朝の風景と黒星」といったタイトルのつけられたショートストーリーを積み重ねていく掲載方式を採っているところです。マンガ内では「ACT」と記載されていて、本格連載開始となった花ゆめ9号には、ACT10~14までが掲載されていました(花とゆめ1号にACT1~4、4号にACT5~9を掲載)。
ACTを重ねるのも、新しい試みの1つで。「黒伯爵は星を愛でる」は後半がけっこう重い展開が続いてしまったので、心機一転何か軽い気持ちで読める読み切りを、と思ったんです。最近、ネット発祥のマンガではショートを重ねていくものをよく見かけるな、それなら軽く読めるかな、と思いやってみました。
──この方式で描かれてみて、メリットやデメリットは感じましたか?
マンガを描くときは普段からこれくらいの配分で区切って、その各ブロックの中に小さくとも何かしら山場を!と考える癖がついているので、描くほうとしてはメリットもデメリットもさほど感じません。でも先代の花ゆめ編集長が「黒星」の読み切りを読んでくださっていて、お会いしたときに「章ごとに起承転結があると、何話も読んだようなお得感がありますね」と言ってくださってうれしかったです。やってみてよかったなあと思いました。
──「執事・黒星は傅かない」は、内弁慶なお嬢様・紫と、紫が大好きなのに言うことはまったく聞かない執事・黒星のラブコメです。この作品を描いてみようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
執事とお嬢様のお話は前から描いてみたかったのですが、「言うことを聞かない執事」って楽しそうだなーと思ったんです。でもここまで奔放な人になるとは思ってもみませんでした。
──黒星は紫のストーキングは当たり前、紫のベッドで眠ったり目隠しに興奮したりと、ちょっと変態なところがある執事ですからね(笑)。
ただ有能で生意気な執事だけじゃかわいげがないので、お嬢様に弱い設定にしようとしたら……。お嬢様もただツンツンしててもつまらないので、内弁慶という弱みをつけました。
──魅力を出すために、逆に弱点をつけるんですね。
はい。私の中でなんとなく「弱み」や「苦手なこと」を作るとキャラクターに命が宿る気がして好きです。ただ、黒星の変態キャラは全然予定になかったのですが、ネームを描き始めたらできてしまいました……。まだまだ私の中で謎が多いキャラです。
細かいことは何も決まっていません!
──新連載のときのコメントで「こんなヒーローでドキドキしています」と書かれていました。音さんは黒星をどんなヒーローだと捉えていますか?
お嬢様にハアハアしてる変態ですが、お嬢様を守るためなら犯罪スレスレなことでもなんでもする、とてもヒーロー気質な執事だと思っています! いえ、願望なんですが……。彼については私もまだ把握できていなくて。すみません……。
──「黒伯爵」のレオンはエスターにめちゃくちゃ甘い英国紳士、「花と悪魔」のビビは威圧的ですが花を大切にする大悪魔、と音さんの描くヒーローはヒロインをとても大事にする印象があります。黒星はその性質が全面に出ているうえ、昔のカメラ小僧のようなファッションでお嬢様を撮影したりとコミカルな部分もあって新鮮でした。
黒星が毎回やってる、謎のコスプレは注目してほしいポイントです(笑)。次は何をやらせようか担当さんと考えるのが楽しくて。
──ニューヒロインの紫はどんな女の子ですか?
お嬢様だけど、普通に悩みごとがあったり好きな人がいたり、読者さんに成長を応援していただけるような等身大の女の子にしたいなーという思いで描いています。黒星の言動にドン引きしてるところは描いてて楽しいですね。あとまだ描き慣れていなくて、髪の毛が大変です。
──動きがあるショートボブ、かわいいです。今後の展開を明かせる範囲で教えていただけますか?
「あれやりたい、これやりたい」みたいなふわっとしたものはあるのですが、このマンガはもともと読み切りだけのつもりだったのと、なんかもう勢いが大事かなと思うので、細かいことは何も決まっていません!
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綱渡りだった「黒伯爵は星を愛でる」
- 花とゆめ12号
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雑誌 税込400円
花ゆめ45th YEARはまだまだこれから!!
表紙:師走ゆき「高嶺と花」
付録:高屋奈月「フルーツバスケット」由希&夾のW缶マグネット
- 音久無「黒伯爵は星を愛でる」全12巻
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Kindle版 税込5832円
下町で花売りをするエスターは、母を亡くし、双子の兄とも離れ離れ。「いつも笑顔でいれば、素敵な王子さまが現れるわ」という母の言葉を支えにしていたある日、エスターのもとにヴァレンタイン伯爵が現れ、「貴女は今日から私の花嫁です」と……!? しかし、伯爵には別の顔も……!? 半吸血鬼のシンデレラストーリー!
- 「執事・黒星は傅かない」1巻
2019年7月19日発売決定 -
「黒伯爵は星を愛でる」の番外編も収録。
- 音久無(オトヒサム)
- 4月22日生まれ、東京都出身。2004年に「ヒトサンマルマル」でビッグチャレンジ賞に準入選し、同年「兎の仮面の男」でザ花とゆめ(白泉社)にてデビューを果たす。代表作は「花と悪魔」「黒伯爵は星を愛でる」など。2019年より花とゆめ(白泉社)にて「執事・黒星は傅かない」を連載中。
2019年11月20日更新