「ハロがかわいい」しか言ってないのに
東雲 「ガンダム」を人にオススメするときって、どうしてます?
佐々木 私、以前「ガンダムはファーストと『Zガンダム』(シリーズ第2作の「機動戦士Zガンダム」)くらいしか観たことない」というスタッフさんに「ガンダム00」(「機動戦士ガンダム00」)をどうしても観てもらいたくて、「ハロがかわいいよ!」と言ったら観てくれたということがありました(笑)。「SEED」もけっこうハロがかわいいから、それを伝えたら「SEED」も観てくださって。
東雲 その薦め方で観続けてくれるって、すごくいい人ですね!
佐々木 確かに(笑)。「ハロがかわいい」しか言ってないのに。
空野 きっかけさえあればってことだよね、きっと。観たら面白いのは間違いないんで。
佐々木 そうですそうです。私自身もハロから入ってますし(笑)。
東雲 ガンダムシリーズってすごくたくさんあるんで、私はけっこういろんな人から「『ガンダム』観たいんだけど、どこから観ればいい?」って相談されることがよくあるんですよ。
空野 ありそうー!
東雲 そういうときは、まずヒアリングするんです。多少エグい内容でも大丈夫なのか、ライトなほうがいいのか、少年誌的なアツい感じがいいのか、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」みたいな泥臭い感じがいいのか……やっぱりオススメするからにはハマってほしいので、できるだけその人のモチベーションに合う作品を選んで伝えるようにしています。
佐々木 すごい(笑)。
空野 もう専門家じゃん。「ガンダム」専門家。
東雲 例えば小さなお子さまがいる方だったら「ガンダムビルドファイターズ」系を薦めて、親子もろともガノタ(ガンダムオタク)にしてやろうみたいな(笑)。
空野 「うみ的ガンダムチャート」みたいなの作れそう(笑)。雑誌とかでよくある、YES/NOで答えていくやつ。作ってほしい!
東雲 いいかもしれない(笑)。
空野 今のアニメオタクの方々からすると、ガンダムシリーズって“話が長い”というイメージを持たれがちじゃないですか。アニメは全12話くらいで完結するのが当たり前みたいになってるから、全50話とか言われると……。
東雲 確かに、それだけで敬遠されがちではありますよね。
空野 なので、私はコンパクトにまとまったOVA作品からオススメすることが多いですね。「ポケ戦」(OVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」)、「UC」(OVA「機動戦士ガンダムUC」)、「ガンダムビルドファイターズ」の3つくらいを並べておいて、それこそヒアリングして最適なものを選ぶみたいな。
東雲 いいですね、そのやり方。
空野 で、私的には本当は「ポケ戦」を推したいんだけど、あれはちょっと絵柄が古いから、それだと話に入り込めないという人も多くて。そういう方々には「UC」を薦めます。あれはファーストのオマージュとかもいっぱいあるんで、まずそれでガンダムシリーズの雰囲気をざっくり掴んでもらおう、みたいな感じで仕組んでますね。
佐々木 仕組んでるんですね(笑)。
東雲 仕組みますよねー。「ガンダム」をオススメするときはけっこうグッと力が入ります。
空野 最初から「ちょっと違ったなあ」とは絶対に思ってほしくないですもんね。人にはそれぞれ合った「ガンダム」があるんですよ。「ガンダム」っていうのは。
東雲 深い! 「ガンダム」は深い。
空野 あとは「SEED」で言ったら、曲から入るのもありですよね。
東雲・佐々木 確かに!
空野 アニソンイベントとかアニクラとかで定番曲になってるものが多いんで、皆さんどの曲もだいたい聴いたことあると思うんですよ。「Believe」とか「ignited -イグナイテッド-」とかに至っては、もはや誰でも歌える。
佐々木 「誰でも歌える」(笑)。
空野 みんな西川貴教さんになりきって歌える。
東雲 観た人がだいたいオープニング曲とエンディング曲を全部覚えてるっていうのは、けっこう「SEED」ならではの特徴なんじゃないかな。それだけ名曲ぞろい、神曲ぞろいってことですよね。
リアルタイムで盛り上がれることがうれしい
東雲 今度の劇場版(「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」)の予告、観ました?
佐々木・空野 観ましたー!
東雲 「闇に落ちろ、キラ・ヤマト!」というセリフが入ってたじゃないですか。私、闇落ちするキャラが大好きなんですけど「うわ、これ闇落ちキラが見られる!?」ってめっちゃ興奮しました。
空野 わははは(笑)。確かに、キラの目の色変わってたしね。
東雲 そう、赤くなってて! どうなっちゃうんだろうってドキドキしますね。もしかして闇落ちしたキラをアスランが救いに来るのかなあ?とか。
空野 それだともう姫じゃん、キラ(笑)。あと、予告の映像で言うとモビルスーツ戦の動きの滑らかさ、ぬるぬる感がヤバくなかったですか? 20年前の技術では表現できなかったものが今回は精密に表現されているということだと思うので、そこもめっちゃ楽しみだなあと。
佐々木 放送当時にまだ幼くてしっかり楽しめていなかった世代からすると、リアルタイムで「SEED」の新作に触れられる喜びもありますよね。「ガンダム」を好きな多くの方々と一緒に、同じタイミングで盛り上がれることがうれしいなと思います。ファンとして楽しむことが楽しみ、みたいな。
東雲 確かに! それで言うと、「絵柄がキラキラしてるから」みたいな理由で「SEED」を敬遠しているファースト好きの方とかも多いと思うんですけど、本当はそういう方々も一緒に盛り上がっていただきたいですよね。「SEED」自体が「21世紀のファーストガンダム」と呼ばれたりもしていて、物語も新たなスタンダードを意識した作りになっていますし、ファーストのオマージュもけっこうふんだんに入ってるから、ファーストが好きな人こそハマれる作品だと思うんですよ。ザクやグフも出てくるし、ドム隊のジェットストリームアタックも出てくるし。「ちょっと『SEED』はなあ……」みたいに偏見を持っている人も、今回の映画化を機に今からでも観てほしい。
佐々木 そうですよね。逆に「水星の魔女」(「機動戦士ガンダム 水星の魔女」)とかからガンダムに入った人の場合は、今回の映画が「SEED」に触れるきっかけになったらいいなあって。
空野 ただちょっと不安なのが、予告を観る限りでは思ったよりムードが暗そうな印象を受けたんですよね。ラクスも泣いてたし、どうなっちゃうんだろう?って。
東雲 とりあえずカガリには幸せになってほしいです。
空野 みんな幸せになってほしいよ!
東雲 確かにそうだ(笑)。
佐々木 (うんうんと何度もうなずく)
空野 それぞれのキャラがみんなそれぞれに信念を持って戦っているわけじゃないですか。それぞれの正義が不幸にもぶつかってしまうという構図だから、すべてのキャラに幸せになってもらうにはどうしたらいいのか……まあ、私たちには何もできないんだけど(笑)。
東雲 見守ることしかできない(笑)。やっぱり、彼らの争いを見ていると“対話すること”の大切さを学べますよね。それは「SEED」に限らずガンダムシリーズ全般に言えることですけど、単純な勧善懲悪ものじゃないからこそ、それぞれに言い分があってそれぞれに正義があるっていう。結局、対話が足りないから争いになっちゃうんだよなあって思いますね。私たちの日常生活でもそうじゃないですか。
空野 確かになあ。
東雲 「どういう理由でその行動に至ったのか」をちゃんと説明して話し合いさえすれば解決することがほとんどなのに、それをしないから変な亀裂が入ったりするわけで。そういう意味では、聞く耳を持つことの大切さ、考え続けることの大事さを私は「ガンダム」から学んだと思います。
佐々木 「コーディネイターだから」「ナチュラルだから」みたいな決めつけもそうですよね。考えることをやめてしまうとそうなっちゃう。「SEED」の序盤のほうかな、ラクスがキラに「あなたが優しいのは、あなただからでしょう?」って言うシーンがあって、私はそれがすごく印象に残っているんです!
東雲 いいセリフ! 「あなたをちゃんと見てますよ」っていうね。
佐々木 そうなんです。ラクスは相手の肩書きとかじゃなくて個体として、その人の性格や考え方をちゃんと見極めたうえで判断してるんだなと思って。私自身も割と肩書きで見られたり、逆に肩書きで見ちゃうことも以前は多かったんです。それがラクスの影響で「表面だけじゃなく、ちゃんと中身を見られる人になろう」というふうに思うようになりました。ちゃんと考えようって。
空野 それで言うと、ちょっと別作品の話になっちゃうんですけど「ガンダムUC」に「『それでも』と言い続けろ」というセリフがあって。もともと私がガンダムを観始めた時期はマジで人生のどん底というか、いろいろあってアイドル活動が思うようにいかず、生きる希望を見失いかけていた時期だったんですね。そのときにガンダムをひたすら摂取して、いろんなキャラクターたちの葛藤や成長を見せてもらう中で「私もウジウジしてちゃダメだ」と思えるようになったんです。どれほど人と分かり合えないからって、腐っても何もいいことはないと思って、それこそ「それでも」と言い続けて単独戦闘型アイドルとしてまた出撃が始まる……というストーリーが実はありまして(笑)。
佐々木 素敵……!
東雲 あおにゃんが今こうしてキラキラと活動してくれているのは、ガンダムのおかげってことだ。
空野 ガンダムがなかったら、たぶん灰になってた。本当に救われましたね、ガンダムには。
プロフィール
佐々木琴子(ササキコトコ)
8月28日生まれ、埼玉県出身。「転生したら剣でした」「永久少年 Eternal Boys」などのアニメ作品に出演。「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」では夕霧綴理役を務め、同名の声優ユニットのメンバーとしても活躍している。2013年から2020年までは、乃木坂46のメンバーとして活動した。
佐々木琴子 (@sasaki_kotoko828) | Instagram
空野青空(ソラノアオゾラ)
10月16日生まれ、富山県出身。アイドル活動を軸に、地元北陸でのPR活動など多方面で活躍している。単独戦闘型アイドルとしてのソロ活動を経て、DEARSTAGEとLantisが共同プロデュースを手がけるボーカルユニット・ARCANA PROJECTに加入。2021年2月から2024年1月まで、でんぱ組.incも兼任した。
東雲うみ(シノノメウミ)
9月26日生まれ、埼玉県出身。商社の営業マンとして働いた後、グラビアアイドルへ転職。企画・撮影・編集を自身で行うYouTube公式チャンネル「うみちゃんねる」は登録者数105万人を突破している。プラモデルを趣味に持ち、モデラーとしても活動。2022年には1st写真集「うみのなか」を発売した。