「機動戦士ガンダムNT」が11月30日に劇場公開される。本作は「機動戦士ガンダムUC」から1年後のU.C.0097を舞台にした物語で、宇宙世紀シリーズとしては27年ぶりの完全新作映画。サンライズが中心となって立ち上げた、新たな宇宙世紀100年の歴史を描くプロジェクト「UC NexT 0100」の出発点ともなる記念碑的作品だ。
コミックナタリーでは「ガンダムNT」の公開を記念して、主人公ヨナ・バシュタ役を演じる榎木淳弥を取材。登場人物が抱えるそれぞれの思いが複雑に絡み合う本作の中で、主人公ヨナを演じる意気込みとキャラクターの魅力を聞いた。撮り下ろしのフォトギャラリーとともにお届けする。
取材・文 / はるのおと 撮影 / 石橋雅人
暴走事故を起こし行方不明となったユニコーンガンダム3号機フェネクスと、パイロットのリタ・ベルナル。その捜索を行う「不死鳥狩り」作戦のため編成されたシェザール隊に増援として送り込まれたのは、リタの幼なじみでナラティブガンダムを操る青年ヨナ・バシュタと、ニューホンコンを拠点に地球連邦政府とも密接な関係を築く大企業・ルオ商会の特別顧問ミシェル・ルオだ。幼い頃にオーストラリアでコロニー落としを事前に察知し街を救った3人は、“奇蹟の子供達”と呼ばれており……。
「ラプラスの箱」が開かれて1年。U.C.0097を舞台に「機動戦士ガンダムUC」のその先を描く、宇宙世紀サーガ最新作。
絡み合う3人の運命
- ヨナ・バシュタ
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──聞こえてるんだろう、リタ!?
25歳。地球連邦宇宙軍所属。階級は少尉。ナラティブガンダムのパイロット。ユニコーンガンダム3号機フェネクスのパイロットであるリタ・ベルナルとは幼なじみ。同じく幼なじみであるミシェル・ルオとともに、フェネクスを捜索する「不死鳥狩り」作戦に増援として送り込まれる。
- ミシェル・ルオ
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──3人とも生き残るには、こうするしか……!!
25歳。ニューホンコンを拠点に地球連邦政府とも密接な関係を築く大企業・ルオ商会の特別顧問。ルオ商会会長ウーミンの娘で、略筮法での占いに長け、政財界から絶大な信頼を得ている。「不死鳥狩り」作戦を展開するクラップ級宇宙巡洋艦ダマスカスに、増援のナラティブガンダムを伴って乗り込む。
- リタ・ベルナル
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──ねぇ。天国って、本当にあると思う?
地球連邦宇宙軍所属。階級は少尉。機動実験中に暴走事故を起こして消息不明となったユニコーンガンダム3号機フェネクスのパイロット。ヨナとミシェルとは幼なじみ。U.C.0079、1月3日、ジオン公国が地球連邦政府に対して宣戦布告し独立戦争を仕掛けた当時は、プライマリースクールの2年生だった。
思いが絡まって物語が作られていく、それを体現したキービジュアル
──いよいよ「機動戦士ガンダムNT」が公開となりますね。昨日行われた公開目前イベント(このインタビューは10月17日に行われた)も取材させていただきましたが、そこで榎木さんがファンに“組体操”と呼ばれたキービジュアルのポーズについて触れたのがとても印象的でした。
ありがとうございます。「キャラクターがそれぞれ見ている方向は違うけれど、思いが絡まり合って1つの物語になっている」という話ですね。人間同士の思いが絡まって物語が作られていくというのはどの作品も同じでしょうが、「ガンダムNT」は特にそういった人間ドラマの要素が濃いと思うので、ああいう挨拶をさせていただきました。
──キービジュアルは公開時にかなり話題になりましたね。
やっぱり作品は話題にならないといけませんからね、そういう意味でも素晴らしいキービジュアルですよ。ただ、これを描いたアニメーターさんは「全然ウケ狙いではなく、大真面目に描いた」とおっしゃっていたそうです。
──「キャスト陣でこのポーズを再現しよう」という話も出たとか。
女性に参加してもらうとセクハラになってしまうので止めました。股をくぐったりして、けっこう絡まっているポーズなんですよね。ゾルタン役の梅原(裕一郎)くんもたぶん僕の股をくぐってはくれないだろうし。
──なるほど(笑)。それでは、榎木さんが演じるヨナについて伺います。まず演じることが決まった際の率直な感想は?
歴史ある「ガンダム」シリーズの主人公ということで、プレッシャーが大きかったです。昔からシリーズを観てくださっている皆さんの期待が大きい分、それに応えなきゃいけないでしょうし。声優としては、一度は“ガンダム”に乗ってみたいという方も多いし、僕自身もそうだったので。もちろん、うれしい気持ちも確かにありましたが、初めはあまり実感が沸きませんでした。
──榎木さんはヨナをどんなキャラクターだと捉えていますか?
小さな頃からいろいろな体験をしてきて、その中ですごく後悔するような出来事が起こったために、後悔や怒りをずっと抱えながら生きてきたキャラクターです。25歳になった今もその生きる原動力は変わらず、幼なじみのリタが乗ったフェネクスを追いかけることだけを考えています。
──ヨナは「ガンダム」シリーズにおいてはかなり年長の主人公ですが、絵コンテを読んだ限りナイーブなところがあると感じました。
そうですね。幼少期や10代の頃の体験をずっと引きずっています。精神的には25歳らしい部分もありますが、幼いままの自分がいるんでしょうね。
──内面の表現が難しそうなキャラクターですね。演じる際に気を付けていたことはありますか。
口数の多いキャラクターではないので、例えば思い悩んでいるときに漏れ出す息の音だとか、そういった細かいアドリブの部分にヨナの感情を丁寧に乗せようと気を付けていました。映画館の音響だと聞こえやすいはずなので、ぜひ注意して聞いてほしいですね。
──ヨナは25歳ですが、作中では8歳と15歳の姿も登場し、15歳のほうは榎木さんが演じられていますね(8歳のヨナは中村文徳が担当)。
15歳のヨナは世間に対する諦観があるので、少し世の中を斜めに見ているふうに演じました。25歳になると周りや自身への怒り、後悔を原動力にしているように感じられたのですが、僕自身もそういった気持ちに共感できるところがあるので、オーディションの頃から「演じやすいな」とは思っていましたね。
──オーディションの段階で、キャラとの相性のよさを実感していたと。
オーディション中に受けた指示は「もう少しこのセリフを強く読んで」とか、細かいところを言われたくらいで。終わったあとに音響監督の木村さんの顔を見るといい笑顔でいらしたので「感触よさそうだな。もしかしたら受かるかも」と淡い期待を抱いていました(笑)。その笑顔が実際に受かったことに関係しているかはわかりませんが、そういった思い出があります。
──そうして見事にヨナ役を獲得。「ガンダム」の主演といえば大役かと思いますが、周囲からの反応はいかがでしたか。
歳が近い知人や同業者から「『ガンダム』に出るんだって?」と声をかけてもらうことが多いです。特に宇宙世紀シリーズの「ガンダム」に出るというところが皆さんに刺さるようで。ヨナは作中でディジェに乗るんですけど、「ディジェいいね」という感想をいただくこともあり、「ガンダム」シリーズが愛されていることを日々実感しています。
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ゾルタンのぶっ飛び方はアンジェロ以上かも
- 「機動戦士ガンダムNT」
- 2018年11月30日(金)全国90劇場にて公開
- スタッフ
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原作:矢立肇、富野由悠季
監督:吉沢俊一
脚本:福井晴敏
メインキャラクター原案:高橋久美子
キャラクターデザイン:金世俊
メカニカルデザイン:カトキハジメ、小松英司
企画・制作・アニメーション制作:サンライズ
- キャスト
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ヨナ・バシュタ:榎木淳弥
ミシェル・ルオ:村中知
リタ・ベルナル:松浦愛弓
ゾルタン・アッカネン:梅原裕一郎
ミネバ・ラオ・ザビ:藤村歩
ブリック・テクラート:古川慎
マーサ・ビスト・カーバイン:塩田朋子
モナハン・バハロ:てらそままさき
イアゴ・ハーカナ:中井和哉
アバーエフ:山路和弘
フランソン:星野貴紀
アマージャ:佐藤せつじ
タマン:駒田航
デラオ:荒井勇樹
パベル:島田岳洋
マウリ:玉野井直樹
ヨナ(8歳):中村文徳
ミシェル(8歳):横溝菜帆
©創通・サンライズ
- 榎木淳弥(エノキジュンヤ)
- 10月19日生まれ、東京都出身。主な出演作に「この音とまれ!」倉田武蔵役、「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」パンナコッタ・フーゴ役、「風が強く吹いている」城太郎(ジョータ)役、「活撃 刀剣乱舞」堀川国広役、「アイドルマスター SideM」舞田類役、「スパイダーマン:ホームカミング」ピーター・パーカー / スパイダーマン役など。