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「後ハッピーマニア」安野モヨコインタビュー|おかえり、シゲタ! 45歳になっても幸せ探して迷走中

安野モヨコが1995年から2001年にかけてフィール・ヤング(祥伝社)で連載した「ハッピー・マニア」。恋愛にすべての精力を傾ける女・シゲタは好きな男ができたら一直線、転んでも即立ち上がり、最終話までその勢いを緩めることなく理想の彼氏を追い求めた。

本作の続編「後ハッピーマニア」が2017年の読み切りを経て、2019年9月より本格始動。コミックナタリーでは安野にインタビューを行い、シゲタやタカハシ、フクちゃんを久々に描いてみての思いや、「ハッピー・マニア」連載当時の心境について語ってもらった。また今年でデビュー30周年を迎えるに際し、「脂肪と言う名の服を着て」「花とみつばち」「ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド」「さくらん」「シュガシュガルーン」「鼻下長紳士回顧録」「働きマン」「オチビサン」といった数々の著作の振り返りも。休業を挟みつつも長く第一線で活躍してきた安野が、大きく変わりつつある昨今のマンガ界をどのように見ているかも聞いた。

取材・文 / 門倉紫麻

タカハシはシゲタを甘やかしすぎた?

──2001年に完結した「ハッピー・マニア」の続編「後ハッピーマニア」の連載が、ついに始まりました。2年前の読み切りを経ての連載となりますが、16年ぶりに「ハッピー・マニア」をお描きになってみていかがでしたか?

フィール・ヤング2019年10月号に掲載された「後ハッピーマニア」より。離婚を切り出したタカハシにシゲタが詰め寄る。

連載のほうを描いてみて、もともとの「ハッピー・マニア」のラインに戻れたかなという気持ちです。読み切り版はちょっとだけ設定も違うんですが、全体のトーンが落ち着いたものになったなと思っていて。“45歳の主人公”と考えたら、そうならざるを得なかったんです。いくらシゲタさんでも(笑)いろんな苦労をしていると思うし、前と同じわけにはいかないと。でもその後で担当さんから「読者としてはあの結婚式の後、どうなったかを知りたいと思っている」と言ってもらって。それで連載のほうは、下書きまで終わっていたものをもう1回描き直しました。

──まさに、最終巻で結婚式直前の控室で「彼氏ほしい!!」と叫んだシゲタがどうなるのか、気になっていました。ただショックだったのが……ずっとシゲタを追いかけていたタカハシのほうに好きな女の人ができたことです。多くの読者が「タカハシはずっとシゲタのことを好きでいてくれないと困る!」と思ったのではないかなと。

「ハッピー・マニア」全11巻
「ハッピー・マニア」
全11巻 / 祥伝社
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私もそうであってほしいと願ってたんですが……。でも世の中的に、旦那さんのほうがずっと奥さんのことが好きで好きで、みたいなご夫婦でも、奥さんがわがまま放題で調子に乗りすぎて終わる、という話がけっこうあるんだなと。夫婦はお互いに成長しなきゃいけないと思うので、ちゃんと厳しくしなかった責任が旦那さんにもあるなとは思うんですが。

──シゲタ夫妻の場合は、タカハシもシゲタを放っておきすぎたんですね。

はい、甘やかしすぎた。他人の家のことをこんな……大きなお世話なんですが(笑)。

──結婚というものに対してのリアリティや重みが、前作のときとは違いますね。あの頃20代、30代だったシゲタや(親友の)フクちゃんも40代になったんだなあと思いました。フクちゃんの名言も深まっていますね。自分が不幸なので「不幸な話を聞かせてくれよ」と言うシゲタに、「どんなに不幸な話をきいたって幸せになんてなれないし なれたとしたらそれこそ不幸じゃん」と返します。

シゲタさんって……割とぼんやりした人間というか無自覚な人なので、切れ味が鋭くて一瞬で覚えられるようなフレーズじゃないと、入っていかないんです(笑)。普通は言われたら「ええっ?」ってなるぐらいのことじゃないと、堪えないんですよ。だから必然的にフクちゃんのセリフがキツくなってしまうんです。

──私たち読者も読みながらフレーズをどんどん暗記していったのは、そういう理由からだったんですね。

「ハッピー・マニア」=恋愛至上主義ではないんです

──前作連載時のことも伺えればと思うのですが、あの頃の読者の「私たちにジャストなマンガが現れた!」というような熱狂みたいなものを、安野さんご自身はどう受け取っていらっしゃいましたか?

「ハッピー・マニア」カット

マンガ家にはそういうのって伝わってこないんですよ。今はTwitterとかいろんなツールがありますけど、あの頃はなかったですし。カラーページを描く回数が増えて、なんとなく人気があるのかもしれないと思うくらいです。たぶんなんですけど……「ハッピー・マニア」を読むタイプの女性って、あまり熱狂的にファンレターを送るような方ではなかったように思うんです。皆さん、友達と飲みに行ったときに「ハッピー・マニア」の話題で盛り上がるけれど、せっせとファン活動をするような方たちではないのかなあと思って自分を納得させてました。

──それほど広く、マンガをあまり読まない人たちにも届いたということでもありますよね。その理由みたいなものを、ご自分ではどうお考えですか?

うーん……どうですかねえ。当時、20代、30代向けのマンガというのは、どちらかというとマンガをすごく好きな人たち向けのものが多かったと思うんです。そういう中で、私の友達がみんな、マンガを読まなくなっていて。彼女たちのような、マンガから離れつつある、洋服とか流行りのものを買いに行って恋愛もするような人たちに読んでもらいたいなという気持ちがあったんですよ。それまでは学校でもみんなマンガを読んでいたと思うんですけど、マンガを読む人と読まない人とがはっきり分かれていき始めた時代だったんです。

──90年代の半ばくらいから終わりにかけてですよね……確かにそうだった気がします。そうすると「もっとマンガを読もうよ!」という気持ちで描いたところもあったのですか?

「ハッピー・マニア」4巻より。シゲタはどうしたら彼氏ができるかフクちゃんにアドバイスを求める。

そんな偉そうなものでもないんですけど……マンガを読んでほしいなっていうのと、“普通の生活の感じ”というか、そういうマンガが描けたらなとは思っていました。まあシゲタさんは、全然普通ではないですけどね(笑)。

──確かに行動が激しいですし(笑)。でも「わかる!」と思ったり、「やめとけ!」とツッコミを入れたり、自分を見るような、友達を見るような気持ちでした。今回、改めて読み返していく中で、恋愛にのめりこむシゲタを正当化するような作品ではなかったんだ、と思いました。シゲタ以外にも、いろんな価値観を持った女の子が出てきていますし。

「ハッピー・マニア」1巻より。シゲタは彼氏が欲しいと言いながら、自分のことを思ってくれるタカハシのことは好きになれない。

ありがとうございます。それをもっと言ってください(笑)。恋愛至上主義のマンガだと思う方もいるようなんですが、私はそんなつもりはまったくなくて。フラットに、こういう人とこういう人とこういう人がいますよとボンボンボンと並べて描いているつもりでした。だって、シゲタさん自身は恋愛を追いかけても、いつもひどい目に遭って、何ひとつ幸せになっていない(笑)。恋愛至上主義というよりは、「そういうことをしていると、こんなふうになってしまうのだ」という話なんです。

──そういえば、単行本の巻末に「人生の反面教師としてぜひお手許に」と書いてありました。

そうなんですよ。連載中もずっといろんなインタビューで言い続けていたんですが……。もちろん恋愛大好き、恋愛最高!みたいな人を否定するつもりもまったくないです。それはそれで素晴らしいことだし、生命力があってうらやましいと思ってるんで(笑)。

──連載中のことを今振り返ってみると、どんなふうに思いますか?

本当に怒涛のような……24歳から6年くらいですかね。その間のことはあまり記憶がないぐらい。それまではがんばっても短編を年間5本ぐらいしか描いていないようなマンガ家で。連載当初は、「ハッピー・マニア」の原稿料だけではアシスタント代が払えないくらいお金がなかったんですよ。なので、アシスタント代を捻出するために並行してほかの連載を……週刊女性(主婦と生活社)で「脂肪という名の服を着て」というマンガを描いていました。

「脂肪と言う名の服を着て[完全版]」上下巻
「脂肪と言う名の服を着て[完全版]」
上下巻 / 祥伝社
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──そうだったんですか! ダイエットにのめりこんでいくOL・のこを描いた作品ですね。

「脂肪と言う名の服を着て[完全版]」より。

週刊女性を読んでみたら、そのとき3分の1ぐらいがダイエットの広告だったんですよ。読者の方々の関心の頂点が痩せるということなら、広告と同じような内容のものを描けば売れるかなと思って……。

──でも広告のような明るいテイストのものではまったくなかったですよね。シリアスな、ずしっとくるお話でした。

そうですね。1話目の原稿をお渡ししたとき「暗すぎる」と言われました。「2話目から明るくなるんです」って言ったんですが……ならなかった(笑)。タイトルも連載時は「やせなきゃダメ!」にして、明るい話です!という感じを出して。自分でも最初は明るい話にするつもりだったんですけど、たぶんくたびれていたんですね。「ハッピー・マニア」がテンション高いマンガだったので、その反動でなのか暗くなっちゃいました。どちらも明るいものにする、というのは難しいです。

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期間:~2019年10月7日(月)23:59

安野モヨコ「ハッピー・マニア①」
安野モヨコ「ハッピー・マニア①」
安野モヨコ「ハッピー・マニア②」
安野モヨコ「ハッピー・マニア②」
安野モヨコ「ハッピー・マニア③」
安野モヨコ「ハッピー・マニア③」
安野モヨコ「ハッピー・マニア④」
安野モヨコ「ハッピー・マニア④」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑤」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑤」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑥」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑥」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑦」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑦」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑧」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑧」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑨」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑨」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑩」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑩」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑪」
安野モヨコ「ハッピー・マニア⑪」
安野モヨコ(アンノモヨコ)
安野モヨコ
1971年3月26日東京都杉並区生まれ。1989年に別冊少女フレンドDXジュリエット(講談社)にて「まったくイカしたやつらだぜ!」でデビュー。岡崎京子のアシスタントを経て、別冊フレンド(講談社)にて「TRUMPS!」の連載を開始。著作には「ハッピーマニア」「ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド」「花とみつばち」「さくらん」「シュガシュガルーン」「働きマン」「監督不行届」「オチビサン」「鼻下長紳士回顧録」などがある。2017年にフィール・ヤング(祥伝社)にて、「ハッピー・マニア」の続編「後ハッピーマニア」を読み切りとして発表。2019年9月に同作の本格連載をスタートさせた。

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