アニメ「ドロヘドロ」 PR

アニメ「ドロヘドロ」特集 林田球インタビュー|このインタビューでわかったこと。林田球、悔しいくらいアニメ「ドロヘドロ」にワクワク!

2000年に月刊IKKI(小学館)でスタートし、2018年に全23巻で完結した林田球の「ドロヘドロ」。所有欲を煽るメタリックなデザインの単行本、特徴的な絵柄、唯一無二の世界観から、未読の人は「難しそう」「とっつきづらい」と思うかもしれない。しかし、とても簡単に「ドロヘドロ」のあらすじを紹介すると、主人公のカイマンが友人のニカイドウと一緒に、自分の本当の顔と記憶を取り戻す物語。アクション、ミステリー、ファンタジー、ホラーと面白い要素を詰め込んだ、直球の娯楽大作である。

このたび、「どろろ」「ゾンビランドサガ」などハイクオリティで挑戦的な作品を手がけてきたMAPPAが、「ドロヘドロ」を待望のアニメ化。1月より放送がスタートすることを記念してコミックナタリーでは林田にインタビューを実施し、率直な思いを語ってもらった。

取材・文 / 三木美波

木村真二さんにホールを描いてもらえて、夢が叶った

──10月に林田さんから「すっごいから見てね!!」とアニメ「ドロヘドロ」への期待を煽るコメントが届きました。林田さんが「すっごい」と思ったのはどういった部分でしたか?

「ドロヘドロ」のアニメ化にあたり、林田球から届いたイラストとコメント。

いろいろすっごい要素がありすぎて、「とにかく観てほしい」って感じです。はっきり言って、けっこう全部いいんですよ。粗探しをするのが難しい。

──絶賛ですね。

この「すっごいから見てね!!」のコメントを書く1週間前くらいに、初めてMAPPAさんに映像を観せていただいたんです。声優さんの声は入っていたんですが効果音は入っていなかったりと未完成の第1話でした。でも画面の隅から隅まで気を配られていて、どこを切り取っても絵になる。キャラクターだけ見てね、という感じではなく画面全体が作り込まれていて、絵を見せようというこだわりと熱意を感じました。しかもキャラクターの表情や細かな仕草も丁寧に演出していただいていて……。実は、それまではアニメに関して期待しすぎないようにしていて、「がっかりしないといいなー」くらいの心構えだったんです(笑)。

──それが第1話の映像を観て、読者にもおすすめできると思えた。

ホールにあるニカイドウの店・空腹虫(ハングリーバグ)。

そうです。もちろん観る前も岸(友洋)さんのキャラクターデザイン画が上がってくるたびに「とっても素敵だな」と思ったり、背景美術を木村(真二)さんが担当することになったと聞いたときには「わあ、すごい!」となったりしたんですが、それらが合わさって動くのがあんまり想像できなくて。映像を観て「こんなことができるんだ!」と思えたし、先日完成した第1話を観ましたが、何回も観たくなる感じでした。

──私も第1話を観るまで、「あの陰鬱で汚いホールをアニメでどうやって表現するんだろう」と思っていたんです。でも、ちょっと言葉として変かもしれませんが、「観ていて楽しい、気持ちいい陰鬱さ」という感じで、まさに「ドロヘドロ」の世界観でした。木村さんは最近だと「海獣の子供」、少し前だと「スチームボーイ」や「鉄コン筋クリート」、劇場版「青の祓魔師」の美術監督を担当した方ですが、もともとご存知だったんですか?

はい。「ドロヘ」の初代担当さんって、松本大洋さんの「鉄コン」の担当編集者もしていたんです。それで「鉄コン」の映画のチケットをもらって観に行きまして、「この映画の美術すごい! こんな人がいるんだ」とびっくりして。それから木村さんの仕事はちょこちょこチェックしていて、刺激を受けていました。

──木村さんが参加することになったのは、林田さんのご希望ですか?

いえ、具体的に「誰にやってほしい」ということは言っていなくて。ただ最初にMAPPAの大塚(学)さんや林(祐一郎)監督、シリーズ構成の瀬古(浩司)さんたちが一堂に会した会議があったんです。それに参加する前に、ゲッサン(小学館)の編集長が「最初に希望を全部伝えておきなさい。言うだけならタダだから」ってアドバイスをくれて(笑)。できたら「ドロヘドロ」のファンに「アニメになってよかった」と思ってほしいというのが一番の望みだったので、「とにかく絵が期待外れにならないようにお願いします」「背景も『ドロヘドロ』の世界の一部です」「キャラクターも原作に似ていたほうがいいです」というのは強く主張させてもらいました。MAPPAさんも「うっ」となったと思うんですけど(笑)。そうしたらキャラクターデザインも原作に寄せてくれたし、木村さんをMAPPAの大塚さんが口説き落としてくれたそうで。

──木村さんは、アニメ「ドロヘドロ」では美術監督だけでなく、世界観設計としてもクレジットされています。

ええ。最初に2~3枚、ホールのビル群や街並みを描いたグレーの設定画を見せてもらいました。それを見て、「世界観はもうこれでOK」という感じ。イメージ通りのホールの街でした。もともと、木村さんに「ドロヘ」の汚いホールの街なんかを描いてもらえたらと思ってはいたんです。木村さんの持ち味は、もう少しファンタジー寄りだったり、かわいくてきれいな世界観なのかもしれませんが、私が好きな荒廃していて汚くてちょっとブラックな世界観を描いてもらえたら本当にうれしいなと。夢が叶ってしまいました。

アニメで観て初めて、心をカッコいいと思った

──私はアニメで色がついた「ドロヘドロ」の世界を見て、けっこう新鮮だったんです。というのはマンガの「ドロヘドロ」のカラーは、ページ全部が赤の濃淡で表現されていたり、ページごとに色がバラバラだったりしますよね。だからあまり「ドロヘドロ」の世界に決まった色のイメージがなくて、モノクロの印象が強かった。林田さんの中では、ホールや魔法界に色はついてるんでしょうか?

ついてない、と言っていいかもしれません。カラー絵を描くときはそれなりに時間との戦いで、でも毎回「楽しんで塗る」「作業にはしない」って思ってやってるので、その時々で色が違ってしまうんです。特に色合いの縛りとかはないですけど、ホールは暗くて汚い。魔法界はファンタジックで明るい色、青空もある、という感じで塗っていました。

「ドロヘドロ」のカラーページ。

──なんとなくイメージだけ決めて、自由に楽しく塗っていたんですね。アニメでは木村さんの設計した世界観を背景に、カイマンやニカイドウが大暴れします。背景とキャラクターの質感が違うところも面白いですよね。

そうなんです。木村さんの背景美術は手描き感があるのに対し、キャラクターはCGで質感が違うんです。でもキャラクターもキメ顔のアップなんかは手描きの部分もあるみたいで。私は質感の違うものが合わさって1枚の絵になっている状態がとても好きなタチなんですが、「ドロヘドロ」のアニメでもCGと手描きを場面によってうまく使い分けていて、それが見事にミックスされていました。

──林田さんのマンガでは質感や陰影を、線をたくさん描き込むことで表現しています。アニメのキャラクターもCGですがのっぺりとした感じではなく、服や顔に線が入ってるんですよね。それで服のくたっとした柔らかさや骨格の様子がわかるし、林田さんのタッチにも近くなる。

ええ、タッチを再現してくれてます。最初、「CGはどうなのかな」って思ったんですが、CGの使い方がすごくいい。それに例えばカイマンは私も描くのが大変なくらい要素が多いんですが、CGで作られたキャラは絵が荒れないと言いますか。

──いわゆる“作画崩壊”がない。確かにカイマンは頭にトゲがいっぱいありますし、顔はトカゲだし、ガスマスクやらナイフやらもたくさんつけていて手描きだとすごく手間がかかりそうですね(笑)。アニメは何話まで観ましたか?(取材は12月に行われた)

心は、煙ファミリーの掃除屋(殺し屋)。なんでもバラバラにする魔法を使う。

3話まで観ました。自分のキャラを本当に客観視できたのって、アニメの映像を観てからかもって最近思いました。心ってけっこう人気があるみたいなんですけど……。

──絶対、心はすっごく人気のあるキャラだと思います!

あはは(笑)。アニメで心が出てきたときに初めて「ああ、カッコいいな」って思ったんです。「人気出そうだな」って。

──他人事みたいです(笑)。

恵比寿は煙ファミリーの居候。アレやコレやに巻き込まれ、ちょっとおかしくなってしまう。

アニメのニカイドウと能井も恵比寿も「あ、かわいい」って普通に思いました。マンガの中でキャラクターがけっこう頻繁に着替えるんですけど、それもほぼ再現していただいていて、キャラデザが大量にあるんですよ。恵比寿の動きとか、私はコマの隅っこに小さく描いてるだけなんですが、アニメでは本当に面白く表現してくれてます。

──マンガだと、野球回の恵比寿の動きがかわいいですよね。サメの着ぐるみを着てキュートなダンスと歌を披露してくれて。

そう言っていただけてうれしいです。実はシナリオ会議で「野球回は飛ばします」って話になりかけたんですが、「人気の回なのでやっていただきたいです」とお伝えしたら瀬古さんが入れてくれて。全12話なので野球回も入れたらぎゅうぎゅうになっちゃったけど、アニメのスタッフさんも「入れたほうがよかったね」と言ってくださった回です。あの変な歌も聴けますよ。