「デモンズゲート 帝都ノ魔女」|「クーロンズ・ゲート」の木村央志が仕掛ける 昭和10年、帝都を騒がす伝奇譚がマンガ化

小林ゆうと森久保祥太郎をモデルにキャラクターは作られた

──魔法学園という設定から、実際のキャラクターが生まれるまではどういうプロセスがあったのでしょうか。

ゲーム版の旭のビジュアル。

実はこのとき、キャラクターの設定作りと平行して声優さんのブッキングも行っていて、旭は小林ゆうさん、レンザは森久保祥太郎さんでいこうということになっていたんです。それぞれの声優さんの特徴や人となりを聞いて、そのイメージを膨らませる形でキャラクターを作っていきました。

──当て書きに近い形だったんですね。

そうですね。小林ゆうさんは謎めいた雰囲気とキツい演技もできるところとか、森久保さんはチャラ男的な(笑)演技にも定評があると聞いて、その辺のイメージを膨らませていきました。そこから「じゃあ彼女、彼の葛藤はなんだろう」というのを考えて、旭には「魔法がうまく使えない」、レンザには「転生し損なう」という設定をつけました。転生に失敗は付きものですから。

──ちゃんと転生に成功しているより、失敗しているという部分に1つドラマを感じますね。

ゲーム版のレンザのビジュアル。

転生に成功したらそれで「めでたしめでたし」で、何も起こらない。失敗するから物語が始まるわけです。だから、この辺はすごく真っ当な設定です(笑)。

──キャラクターと同時に印象的だったのが魔神です。兵器と融合した悪魔というのはインパクトがありますね。

ゲームの最初の構想段階は、単純に悪魔が出てくるというものだったんです。でも普通に悪魔をモチーフにすると、どうしてもアトラスの作品と衝突するんですよ(笑)。それで、何か別の道を探そうということになって「兵器との融合」というアイデアに行き着いたんです。時代的にも第一次世界大戦を経て、第二次世界大戦に向かう途中で、近代兵器がたくさん出てきた頃ですから。ドイツの巨大列車砲・グスタフとか、面白いものもいろいろありますし。

──兵器にもロマンがある時代だったと。

今の兵器はスマート兵器みたいな感じですからね。この時代に作られたものは「強いやつは口径がでかい!」みたいなわかりやすさがある(笑)。ただ、融合となるとデザイン的にはなかなか難しいことをする必要がある。ただ悪魔が兵器を持っているだけではダメで、融合合体している感がないと。

──結果的に魔神のデザインは見ていて、とても面白いです。

デザインに関しては僕はほとんど関わってないんですが、やっぱり絵師さんの発想に素晴らしいものがありますよね。僕もちょっと考えたりもしたんですが、もう難しくて全然ダメ。理屈で考えてもできないんです。

──水木しげる先生も列車をモチーフにしたものとか、近代的なものを取り入れた妖怪を描かれたりしていますよね。そういうものにもちょっと似ていると感じました。

死神とロケットランチャーが融合した魔神・グリムリーパー。

そうですね。絵描きさん的な発想が必要なんでしょう。「デモンズゲート」でも絵師さんが面白がって描いてくれたりしたようで、非常にありがたかったです。個人的にはグリムリーパーなんか好きですね。死神の背骨がロケット砲になっていて、これ(ゲームで)3Dになること考えてないだろっていう難しいデザインなんですけど(笑)。こういうのって、やや嗜虐性みたいなものも入ってますよね。カッコいい感じの悪魔がぐちゃぐちゃにされるじゃないですか。「こんな形になってしまって」っていうのが、この「融合」という形のひとつの魅力なんだと思います。

「デモンズゲート」は終わっていない、もう一度やる

──コミカライズ版でも魔神の登場シーンはやっぱりワクワクします。

「デモンズゲート 帝都ノ魔女」より。魔神の召還シーン。

魔神の召喚には、マンガ版で初めて加わった要素もあるんです。たとえば、魔神を召喚するときどういう動きをするのかって質問が墨天業さんから来て。思わず「え?」って。考えていなかったんですよ。ゲームでは召喚時にシミュレーションゲームのボードが表示されます。そのマス目に駒を配置する、それが召喚です。でも、マンガではそういうわけにはいかないですよね。だから、みんなで「こんな感じか?」なんて言いながら後付けでキャラクターのポーズを考えて(笑)。

──ゲームでは省略されている部分が、マンガだと必要になってくると。

はい。マンガって背景もすごく重要じゃないですか。でも、ゲームっていくつか決まったアングルしかない。ゲーム内で描かれている背景もありますが、それだけでは全体像がわからなかったりするので、コミカライズのために改めて舞台となる場所の見取り図を作ったりしました。舞台としても悪魔と兵器を融合させる工場・魔神工廠(まじんこうしょう)を描こうと、新しく追加した要素もあります。

──コミカライズで作品の世界観が拡張された感じですね。

そうですね。僕も改めてマンガを読んで、「デモンズゲート」の街が立体的に見えました。やっぱり能海旭というキャラクターの視点が入ったことが大きいと思います。彼女が見たこの世界の有象無象というのをうまく描いてもらえた。もともとゲームにあった古式ゆかしいものもあれば、魔神工廠のような怪しい一面もあるし、魔法といった西洋的な要素もある。軍隊なんかも顔を出してますよね。そういうバラエティ豊かなものが1つにまとまった、幕の内弁当的な調和が見られた気がします。

──今回はひとつのエピソードですが、この世界観の中でもっといろいろなことができそうですね。

単行本描き下ろしマンガ「デモンズゲート學園日誌」。旭の日常を描いた短編で、キャラクターのくだけたやり取りが見られるコミカルな内容となっている。

そうですね。ゲーム自体も去年サービスが終了するときに「捲土重来(けんどちょうらい)」つまり巻き返しを宣言していて、もう一度やるつもりで動いています。ゲームはもちろんですが、最初からいろんなコンテンツとして派生させることも計画に入れてやっていきたいですね。マンガも次の機会があるなら、コミカルな方向のものもやってみたいです。今回の作品でも単行本でキャラクターたちの日常を描いた4コマやおまけマンガを作家さんにお任せで描いてもらったりしていますが、ああいう形のものも見せられたら、もっと世界観が広がっていくんじゃないかと思っています。

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昭和10年。帝都では怪人と呼ばれる不死身の者たちが蔓延り、特務機関・山王機関がその鎮定に当たっていた。ある夜、魔法学園の女高生・旭の元に魔法陣と共に現れた麗しき青年──。
悪魔を名乗り魔神を使役する青年・レンザと未熟な魔女・旭の伝奇ファンタジー!

木村央志(キムラナカジ)
木村央志
京都市出身。ゲームシナリオライター。初監督・脚本作品は「クーロンズ・ゲート」。独立後「真・女神転生III-NOCTURNE」の世界観設定・シナリオを担当し、以降は携帯電話・スマートフォンゲームの企画やシナリオに携わる。Donuts入社後「デモンズゲート~帝都審神大戦~」の企画、シナリオを担当。