とにかくウィーネがかわいそう……
──まずは「ダンまち」という作品や、ウィーネというキャラクターの第一印象を教えてください。
「ダンまち」という作品の存在は、仲のいい声優さんもたくさん出ているので、前から知っていました。あと、飛び飛びではあるのですが、何回かアニメも観たことがあって。そのときに観たのがたまたま、どれもベルくんがピンチな状況に陥っているような回だったこともあって、CMやイラストから勝手に想像していた「主人公の男の子の周りに女の子がたくさんいて、楽しくキャッキャしているお話」ではないんだなって(笑)。「主人公のベルくんがつらい経験や、いろいろな困難を乗り越えて、強くなっていくお話」なんだと思いました。そのあと原作を読ませていただいたときは、とにかくウィーネがかわいそうというか……。自分が悪いことをしたわけではないのに、「モンスター」として産まれただけで周りの全部が敵になってしまう。それって当たり前と言えば当たり前なんですけれど、ウィーネは人の言葉をしゃべれるとか、中間的で複雑なポジションなので。「つらいなあ、かわいそうだなあ」というのが最初の印象でした。
──ウィーネが何か悪いことをしてつらいポジションにいるのなら、悪いことをやめれば解決するかもしれないですが、何もしていないから、どうしようもないんですよね。
そうなんですよね。生まれた段階で「人間の敵」になってしまっているので。でも、それって私たちの日常生活で考えてもハッとさせられるところがあるというか。確かに「悪いものは悪いもの」って、常識として捉えていることってあるじゃないですか。でも、それって私たちが勝手に常識だと思っているだけで、反対側の立場から見たら、また違うかもしれないなって。先日、最終回のアフレコも終わったのですが、振り返ってみると、そういった考えさせられるセリフやシーンも多い作品だったなという印象です。あと、ウィーネって見た目はとてもかわいい少女じゃないですか。だからこそ、痛めつけられているシーンとかは、より胸が苦しいんです。PVにも出ていましたが、本当はすごくたくさん笑って、明るい表情をする子なので、もっと平和に生活してほしいなって気持ちになってしまいました。
一言だけのセリフから方向性を決めていった
──ウィーネは第2期最終話のCパートで初登場しましたが、最終話のアフレコにいきなり参加して、最後に一言だけセリフを言うという状況は、緊張したのでは?
すごく緊張しました! それに収録のときには「3期があって、そのときに活躍するよ」と聞いていたので。でも、「ここどこ?」という一言だけでキャラクターの方向性を決めるのは難しくて。「どれくらい方向性を決められるかな?」みたいな不安な状態で収録へ行ったんです。でも、スタッフさんには「今回は一言しかないから、改めて3期でキャラを決めていきましょう」と言ってもらえました。とはいえ、現場では、けっこういろいろなパターンで録ったのを覚えています。
──どういった変化をつけながら録ったのですか?
原作を読ませていただいたとき、「いわゆる幼女とはちょっと違うな」と感じて、最初はもう少し大人びた感じで少し低めにやったんです。でも、いろいろなパターンを録っていくうちに、「もう少し幼さやかわいらしさも足していきましょう」という方向で落ち着いた記憶があります。1回やって「とりあえずオッケー」という形ではなく、原作者の大森先生もいらっしゃる中で何パターンか録っていただいて、多少なりとも方向性を決められたのは、私としては3期に向けても、すごくうれしいことでした。
──では、第3期のアフレコが始まってからは、どのようなディレクションがあったのでしょうか?
1話の台本を読んで、最初に怖い思いもしているし、いくらベルたちが優しくしてくれても、すぐには人間と打ち解けられないだろうと勝手に思っていたんです。でも、現場へ行ってみると、最初は感情として恐怖心が多めでいいけれど、ヘスティア・ファミリアのホームへ行ってからは「もっと子どもらしく、元気に天真爛漫でいいよ」と言っていただきました。
──先ほどもお話に出たPVでのかわいい笑顔が見られるのは、まさにそのシーンでした。
はい。ただ原作も読んでいて先の展開も知ってしまっていた分、すぐには完全にシフトチェンジできなかったのですが、丁寧なディレクションもいただきながら少しずつそういう方向に寄せていって。「あ、ここまでやっていいんだ」とわかってからは、比較的スムーズだったというか。「ウィーネはこういう子なんだろうな」というイメージが自分の中でもできていきました。
ベルくんのことを嫌いな人いないよね
──大森先生とウィーネについてお話をしたことはあるのですか?
2期の打ち上げのときに「これからすごくつらい目にあって大変ですが、お願いします」と言ってくださったので、「がんばります!」と答えたのですが(笑)。ウィーネをがっつりと演じてからは、まだ、しっかりとお話はできていないんです。
──この特集では大森先生にもお話を伺うのですが、何か質問したいことはありますか?
「ウィーネ、どうでしたか?」って(笑)。大森先生もリモートでアフレコには参加されていたし、現場のスタッフさんがオッケーを出してくれたのだから、もちろん、自信を持っていいとは思うのですが……聞いてみたいです(笑)。
──質問しておきます(笑)。では、ウィーネにとってベルはどういった存在だと思いますか? また、日高さんご自身のベルへの印象も教えてください。
ベルくんは本当に救世主で、家族というか、お父さんのような存在なのかなって。ウィーネにとっては、それぐらい強い絆を感じる存在だと思います。あと、私から見たベルくんは、「こんなにいい人っているんだ!」って人。私は冷めた人間なので、普通はあんなにいい人を見たら、「何か裏があるんじゃない?」とか思いがちなんです(笑)。でも、ベルくんに関しては、そんなふうには思わないんですよね。
──素直に信じられるのですね。
まっすぐで心優しくて。しかも、自分もたくさんの困難を乗り越えて、壁にぶち当たってきたからこその説得力も感じさせる。「弱い存在の気持ちがわかる」というか、「私も好きだな」ってすごく思える主人公。男女問わず、「ベルくんのことを嫌いな人っていないよね」と思います。
──最後に、第3期の放送開始を楽しみにしているファンの皆さんへ、メッセージをお願いします。
長く愛されている「ダンまち」シリーズも第3期になります。私自身、原作を読み、アニメの収録にも挑みましたが、今回はいい意味でもつらい意味でも本当に胸が熱くなるというか……胸が痛くなるようなシーンもたくさんあります。第2期が終わった後、たくさんのファンの方から「(第9巻からの)異端児(ゼノス)編、大好きなんです」とか、「映像化されるのがすごくうれしいです」というコメントをたくさんいただきました。そういった皆さんの熱い思いも背負ってというか、そういう思いと一緒に全身全霊でウィーネを演じることができたと思っています。なので、つらい展開も続きますが、ぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです。よろしくお願いします。
- 日高里菜(ヒダカリナ)
- 6月15日生まれ。千葉県出身。大沢事務所所属。主な出演作に「ソードアートオンライン」(シリカ役)、「とある魔術の禁書目録」(ラストオーダー役)、「ストライク・ザ・ブラッド」(暁凪沙役)、「りゅうおうのおしごと!」(雛鶴あい役)、「転生したらスライムだった件」(ミリム役)など。
次のページ »
大森藤ノ(原作者)インタビュー