コミックナタリー PowerPush - コミックシーモア

上坂すみれがコミックシーモアからチョイスした「いつか誰かに食らわせたい必殺技が載っている」8作品

志織ちゃんが垣間見せる、不穏で必殺な可能性

「大好きが虫はタダシくんの」

──上坂さんの選書の中でも特に首をヒネらされたのが、阿部共実さんの短編集「大好きが虫はタダシくんの」なんです。収録作品はどれもコミュニケーションの難しさ・奇妙さを描くものばかり。1編を除いて直接的な暴力描写はないと思うんですけど、どの短編にフォーカスしたんですか?

表題作ですね。

──このお話のどこに必殺技がありました?

いや、私自身がこのマンガから致命的な一撃を食らったというか……。一昨年の初めにヴィレヴァンでオススメされていたので買ってみて、夜中の3時くらいに読んだんですけど「目が覚めたとき、志織ちゃんみたいに誰とも会話が繋がらなくなってたらどうしよう……」「というか、なんだこのマンガ! ふざけんなよー!!」ってなっちゃって……。

──真夜中に不安になったり逆ギレしたり大忙し(笑)。

精神的に殺されかけました……。例えば四次元殺法コンビのクロノスチェンジって私は絶対に食らうことはないじゃないですか。読者である我々は紙面の向こうで繰り広げられる“闘いのワンダーランド”を楽しんでいればいいだけなのに「大好きが虫はタダシくんの」は紙を飛び越えて私を殺しにきましたから。

上坂すみれ

──すごく不穏なお話なんですよね。昔の友達と街で会った志織ちゃんは、なぜか友達の質問をオウム返しにしないとそれに答えられなくて。その友達の友達が合流したら、今度は「大好きが虫はタダシくんの」って感じで助詞の使い方や文節の並びすらも怪しくなって……。

その友達たちと別れてからも自分で質問して自分で答える自問自答を繰り返して……。だからどんな可能性を考えても怖くなっちゃって。今、このマンガに描かれている風景、志織ちゃんがその友達と会っているっていうのは本当のことなのか?とか。

──最後1人で会話しているってことは実は最初から……。

という可能性も考えられますし、あと志織ちゃんのメチャクチャな言葉を意味が通じるように並べ替えてみると……。

──まあ陰惨な光景しか浮かび上がらない(笑)。

読んでてホントに死ぬかと思いました……。

上坂すみれ、「おろち」第1巻をR指定

「おろち」

──最後の1冊は「おろち」。「大好きが虫はタダシくんの」寄りというか、ヒロインは超能力者のおろちなんだけど、1話1話舞台と主要キャラが異なる作品です。

しかも「大好きが虫はタダシくんの」と同じく、私が楳図(かずお)先生の必殺技を食らって死にかけました(笑)。一番恐ろしかったのが1巻の「骨」のラスト、さらわれた子どもがウジ虫だらけの死体になって発見されるところで。あと同じ1巻に載ってる「姉妹」も……。

──18歳の誕生日を迎えたら額や手にほくろができて、いずれそのほくろで全身覆われる呪いにかかった美少女姉妹のお話。映画化もされましたよね。

このお話を18歳になる前に読んだんですよ。

──それは堪えそうですねえ(笑)。

もうホンットに怖くて。今はもう23歳だから「これぞ楳図ワールド!」って感じで楽しく読めますけど、あの頃は「他人事じゃないんだよ!」「18歳の誕生日なんか来なければいいのに!」ってブチギレてました(笑)。「おろち」とは関係ないんですけど「紫鏡」っていう都市伝説があるじゃないですか。

上坂すみれ

──「紫鏡」とかそれに類する単語を20歳まで覚えてると死んだり不幸になったりするってやつ?

私、あれも結構信じてて。でも私に限らず、多感な時期の女子はその手の話を本気にしがちだから、このインタビューを読んでいる18歳以下の女の子は「姉妹」と「骨」の載ってる1巻は飛ばして2巻から読み始めてほしいですね。

──「おろち」第1巻は女子限定でR指定だ、と(笑)。

悪いことは言わないので大人になってから読んでください(笑)。

……危険ですね、電子書籍

──ところで電子書籍ってお読みになります?

これが申し訳ないことにほとんど読んだことがなくて……。

──でも今もなんのレクチャーもなしにページをめくるときはフリックして、一気にページを飛ばしたいときは画面をタップしてスクロールバーを表示させている。スムーズにアプリを操作してますよね。

スマホの操作に慣れているからっていうのもあると思いますし、あとこのアプリの画面がすごくわかりやすいですから。このリボンみたいなのはしおりですか?

──そうですね。そのアイコンをタップしておけば、いつでもそのページを開けるみたいです。あと画面をピンチすると……。

上坂すみれ

コマが大きくなった! これ、絵を描く人には特にいいですよね。例えば「このキャラ描きたい」っていうとき、しおりを付けておけばいつでもそのページを開けるし、コマを大きくすれば模写しやすくなるし。あと欄外に描かれた小ネタ探しにも便利そうだし。

──確かに(笑)。ちなみに普段マンガを読むときは単行本派ですか?

はい。小さい頃、月刊のマンガ雑誌を買ってもらってたんですけど、新しい号を読むときには必ず前の号の展開を忘れちゃってて……。

──単行本派の理由は記憶力に若干の不安があるから(笑)。

あと週刊誌って当然1週間しかお店に置いてないんだけど、人にはお家から一歩も出たくない日っていうものがあるじゃないですか。

──上坂さんにはそういう日がおありになる、と。

しかもそういう日が何日も続くと週刊誌がお店からなくなっちゃってるんですよ。

──だからコミックスでまとめ読み(笑)。しかも電子書籍版なら……。

お家から出なくても買えるのか! ……危険ですね、電子書籍(笑)。

コミックシーモア

累計利用者数2000万人を突破した国内最大級の電子書籍配信サイト。 NTTグループのNTTソルマーレが運営し、2014年8月16日にオープンから10周年を迎えた。 22万冊以上の品揃えを誇り、「ブラックジャックによろしく」など、無料で読めるコミックも700冊以上提供している。 また常時100本以上の特集やキャンペーンを開催している。

上坂すみれ(ウエサカスミレ)

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来「中二病でも恋がしたい!」「ガールズ&パンツァー」「鬼灯の冷徹」「艦隊これくしょん -艦これ-」「アイドルマスター シンデレラガールズ」など、話題作・人気作の主要キャラクターの声を多数務める。またロリータファッション、ソ連・ロシア、ミリタリー、80年代アイドル、ナゴムレコードなど、サブカルチャーに対して広く深い造詣を示すことも話題に。2013年4月にはその趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビューし、これまでに桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家に招いた「来たれ!暁の同志」などのシングルを発表。2014年1月には1stフルアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を、同年末には自身がセレクトした80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」もリリースしている。