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上坂すみれがコミックシーモアからチョイスした「いつか誰かに食らわせたい必殺技が載っている」8作品

魔太郎が魅せるスポーツマン的笑顔

──上坂さんの考える最もカッコいいうらみ念法は?

上坂すみれ

(タブレットを繰りながら)どの話に載ってたかなあ……。あっ、これです。「バレーボールほど運動になるものはない!!」。

──不良のバレーボールをパンクさせちゃって万引きを強要されたりするエピソード。

それでうらみを募らせた魔太郎くんが不良に石の詰まったバレーボールを一晩中打ち付けるという(笑)。しかも、魔太郎くんって最後にヒーローコメントみたいなのを残すことが多いんですけど、このときは「フーッ」「バレーボールってすごい運動になるな……」ってすっごいさわやかな顔で言うんですよ。

──コマを見るに顔にすごいシャドウが入っちゃってますけど……。

でもこのときの魔太郎くんは絶対に気分爽快だったはずで。だからこれはスポーツ後のいい笑顔だし、この笑顔が魔太郎くんのことを好きになったきっかけなんです。

──じゃあ上坂さんも“石詰めバレーボール”というスポーツをしてみたい?

魔太郎くんほどの行動力があるわけではないからそこが難しくて。彼はただのひきこもりじゃないですし。

──究極の「やられたらやり返す」タイプですもんね。

発想が完全にヤンキーのそれですよね(笑)。なので紙面の外側から「魔太郎くん! 早くやっちゃうのよ!!」って萌えてる感じ。あんまり親身な感じじゃなくて読者目線、ファン目線で読んでます。

ファーザーに見る、一人一殺の精神とパンクスピリット

──「神聖モテモテ王国」はどういう視点で読んでます? 自称宇宙人のファーザーのように異性にモテモテになる王国を建設したい?

これこそ親身になって読んでないです(笑)。ファーザーって同情の余地がないというか、こちらの感情移入を拒否しているようなキャラですから。

上坂すみれ

──毎度毎度、居候先の高校生・オンナスキーを巻き込んで何かをしでかしては警察にしょっ引かれる。確かに感情移入は難しそうですね。

しかもファーザーって社会的弱者のままじゃないですか。キン肉マンなんかがまさにそうなんですけど、最初は弱者だったキャラがだんだん成長して何かを成し遂げるのが物語の王道だと思うんです。なのにあの人はどこまでいっても……。

──ホメられた存在ではない(笑)。

でもそこが彼の輝きポイント、あの反社会性はパンクだと思っていて。で、ファーザーのお気に入りの必殺技なんですけど……。

──あれっ!? ファーザーって、逮捕という名の公権力の必殺技を食らってばかりじゃないんですか?

ちゃんとあるんですよ。「当然ヒーローはモテる!!」っていう回でファーザーはモテるためにファーザリオンというヒーローに変身するんですけど、これがホントにカッコよくて!

──いや、いつものファーザーよろしくズボン履いてないですよ?

「神聖モテモテ王国」

でもほら、必殺技だって紹介されてますから。「手ロケット」「耳ロケット」「足ロケット」「胴ロケット」「顔ロケット」って。

──ただ、そのあとには「欠点──総攻撃後はいなくなる」とある。要は「手ロケット」ことロケットパンチを打ったが最後、ファーザリオンの腕はモゲたままってことですよね?

その捨て身の技で相手を倒す、一人一殺の精神がパンクだと思ってます。一人一殺って考えると、ファーザーは1人だけなので、誰か1人を殺したらそこでおしまいになっちゃうんですけどね(笑)。

──建国への道のりは遠いなあ(笑)。

その孤独な戦いを強いられてるところもパンクなんです!

「白骨遺体発見」ってニュースになると思います

──続く1冊はまるで肌合いの違う「ディスコミュニケーション」です。

「ディスコミュニケーション」

確かに主人公の戸川(安里香)も松笛(篁臣)くんも社会に抗ってはいないですね。むしろ最初から社会とは関係のないところですごく伸びやかに生きている人たちというか。

──松笛くんの持つ霊能力とそれに起因した超常現象がキーになるマンガだから、2人とも浮き世離れしてますよね。

あと「ディスコミュニケーション」は“同志”(上坂ファンの総称)に勧められて読んだんですけど、まずビックリしたのが女子高生の戸川が全然純情じゃないところからお話がスタートしているところで。

──中学時代に経験済み。いわば清純派ビッチというか。

でも今の戸川は松笛くん命。その関係がすごく美しいから、このマンガは完全に戸川目線で読んでます。街外れの廃墟に住んでて、見たこともない神様の像を作ってみたり、夏休みはどこかに出かけたきり8月31日まで帰ってこなかったり……その松笛くんの自由奔放な感じがすごくステキなので。「こういう男の子が近くにいたら学校なんか行かずに彼の部屋に入り浸るだろうなあ」っていう感じ、私にとってこれは完全に恋愛マンガですね。

──必殺技を食らわせるはずが上坂さんが松笛くんに悩殺されちゃった(笑)。

上坂すみれ

でもこれにもちゃんと必殺技は出てくるんですよ。冥界編に両性具有の神みたいな存在と闘うシーンがあって。そのとき松笛くんは土管とかを使って作った呪術ミサイルみたいなものを発射していて、そのときの梵字で呪文を唱えながらミサイルを発射する姿がすごくカッコいいんです。梵字が発明された時代に「ミサイル」や「発射」って概念はあったのかな?っていう疑問はあるものの(笑)、だからこそ撃てた松笛くんはすごいんですよね。

──ホントに松笛くんラブなんですね。

はいっ! でも実際にあの2人みたいな恋愛をしたらと思うと……。小さな部屋に水晶玉とか神棚とかをたくさん置きまくり、そのせいでパンを買うお金すらなくなって。今、恋が始まったら「廃ビルで2体の白骨遺体が見つかりました」ってニュースが夏くらいに流れると思います(笑)。

コミックシーモア

累計利用者数2000万人を突破した国内最大級の電子書籍配信サイト。 NTTグループのNTTソルマーレが運営し、2014年8月16日にオープンから10周年を迎えた。 22万冊以上の品揃えを誇り、「ブラックジャックによろしく」など、無料で読めるコミックも700冊以上提供している。 また常時100本以上の特集やキャンペーンを開催している。

上坂すみれ(ウエサカスミレ)

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来「中二病でも恋がしたい!」「ガールズ&パンツァー」「鬼灯の冷徹」「艦隊これくしょん -艦これ-」「アイドルマスター シンデレラガールズ」など、話題作・人気作の主要キャラクターの声を多数務める。またロリータファッション、ソ連・ロシア、ミリタリー、80年代アイドル、ナゴムレコードなど、サブカルチャーに対して広く深い造詣を示すことも話題に。2013年4月にはその趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビューし、これまでに桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家に招いた「来たれ!暁の同志」などのシングルを発表。2014年1月には1stフルアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を、同年末には自身がセレクトした80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」もリリースしている。