「BURN THE WITCH」久保帯人(原作者)×川野達朗(監督)対談|久保帯人の“王道“を征く新作を気鋭の監督はどうアニメ化したのか?約1万4000字の大ボリュームで語り合う

荒木哲郎監督も「あれどうやったの?」って

──監督の中で「BURN THE WITCH」をアニメ化するうえでこだわっていたのは、どういった部分なんでしょう。

川野 大前提としてキャラクターを見せるというのがあるのは間違いないです。ただキャラクターはある種、原作で完成していただいているので、色がつくという部分だったり、背景をちゃんと見せるという部分に力を入れていましたね。タワークレーンの上でしゃべるシーンなんかは、色の管理がけっこう複雑で、「進撃の巨人」に携わっていた荒木(哲郎)監督に「あれ、どうやって処理してるの?」って真っ先に聞かれたりしました。

タワークレーンでのワンシーン。

──光源がたくさんありますよね。

川野 ニニーとのえるには街のフットライトの光源がメインで当たっているんですよね。そしてバルゴやメイシーには、航空障害灯のライトが当たっていて。さらにニニーとのえるには航空障害灯の光源の照り返しも当たっているんです。キャラにそれぞれ当たる光源の距離を計算して、キャラの色を調整しているので、ちょっと処理が難しいんですよね。

──対談冒頭で出てきたマントのお話もそうですが、すごく地道な作業の積み重ねですね。ちなみに今回、ロケハンでロンドンとエディンバラに行かれたと伺っています。その2カ所になった理由は、フロント・ロンドンはロンドンを、リバース・ロンドンはエディンバラをイメージしているということなのでしょうか。

川野 一応はそうですね。ただロケハンでロンドンに行くってなったとき、ちょっとイメージと違うというかロンドンをどれだけ調べても、リバース・ロンドン感が出せないんじゃないかなと思ったんですよね。で、近い時期にエディンバラの写真をネットで見ていてすごくいい雰囲気だったんで、「近くはないけど同じ地域なんで行ってみませんか」ということでお願いしたんです。でも結局、使った資料がほとんどエディンバラのものだったので、行ってよかったなって思っています(笑)。

リバース・ロンドンの風景。

久保 僕はロンドンに行ったことがないんで、原作はイメージのロンドンでしかないんですよね。監督からロケハンのときの写真をいただいたりもしたんですが、僕の中のイメージのロンドンもエディンバラに近くて。エディンバラって、古い建物が多く残っている地域なんです。

川野 日本でいう京都みたいな場所なんですよね。まあ、ロンドンはイングランド、エディンバラはスコットランドなので「ロンドンを舞台にしているのに全然違うじゃん」って言われたりしないかは不安だったんですが(笑)。

「ブルーノはヤンキーなんだ。かわいい感じにしたいんだ」

──キャストの方々についてもお伺いできればと思います。久保先生はオーディションにも参加されていたんですよね。

久保 そうですね。オーディション当日中にほぼすべてのキャストを決めたんですが、僕と監督は意見がすべて一致していたんです。

ニニー・スパンコール。ウイング・バインドの2等保護官で、人気アイドルグループ・セシルは2度死ぬ(セシル・ダイ・トゥワイス)のリーダーでもある。

川野 ニニーに関しては田野(アサミ)さんになるだろうなってイメージがあったんですけど、実を言うとそれ以外の方は当初僕が想定していたのとは違う方になっているんです。現場で声を聞いてみて考えが変わったというか。

久保 僕の中ではニニーは一発で覚えてもらえる声の人がいいなと思っていたんです。やっぱりニニー役を受けに来る方って、ニニーみたいな元気な声のキャラクターをやり慣れているというか、ピッタリの声質なんですけど、中でも一番印象的な声質だったのが田野さんでした。あとブルーノはカッコいい声に振るのか、ちょっと親しみやすい感じの声に振るのかでけっこう迷いましたね。

ブルーノ・バングナイフ。8つの部隊の長官から構成されるウイング・バインドの最高意思決定機関“トップ・オブ・ホーンズ”の1人。

川野 そうですね。音響監督の三好(慶一郎)さんはカッコいい感じの方のボイスサンプルを集めてくださって。でも僕とか副監督とかは「違う、ブルーノはヤンキーなんだ。かわいい感じにしたいんだ」っていうのを伝えて。実際にオーディションに来ていただいたのは、そういう声を出せる方がメインでした。

久保 カッコいい感じもすごくいいんですけどね。ただブルーノって悪党ではないですし、トップ・オブ・ホーンズの中で最初にニニーたちに心を見せてくる人物なので、声質に兄貴感、安心感みたいなものが一番あった小林(親弘)さんがいいんじゃないかなという話をして。

──ほかに選定するのに苦労したキャラはいましたか?

ニニーとのえるが所属する笛吹き隊の主任(チーフ)。ニニーとのえるの上司にもかかわらず、2人からは言いたい放題でやられっぱなしだ。

久保 チーフは苦労しましたね。結果的にチーフだけ当日に決まらなかったんです。

川野 久保先生のほうからその後、「平田(広明)さんはどうでしょう?」と提案していただいたんです。

久保 三好さんが選んでくださった方が、僕が想定しているよりちょっと上の年齢の声を出すような声優の方々だったんです。僕の中ではチーフってくたびれた50手前くらいのイメージで描いていたんですが、オーディションではそれよりも渋くて枯れた感じの声を出す方に来ていただいていて。もちろんそれもとてもカッコよかったんですが、もう少し艶とイケメン感のある声の方にくたびれた感じの芝居をしてほしいなと思って、提案させていただいたんです。

川野 視聴者の方からしてみると、チーフってむしろ最初に決まっていそうなくらいの感じでハマっていたと思うんですよね。けど実は真逆ですごく難航したという。

バルゴ・パークス。ドラゴンを強力に呼び寄せる体質・ドラゴン憑きとなったことで、ニニーとのえるの保護下に置かれている。

久保 逆に一番難しいだろうなと思っていたけどすんなり決まったのが、バルゴ役の(土屋)神葉くんですね。バルゴって青年なんだけど、少年っぽさがあるというか「おっぱい」とか「パンツ」って言ってもいやらしさが出ないキャラクターにしたいと思っていたんです。そういう声の方を見つけるのって大変だろうなと。

川野 バルゴの声は性を感じさせないようにしたいという話は、最初からおっしゃっていましたよね。

久保 神葉くんはまさにイメージ通りの声で。彼が女兄弟に囲まれて育ったっていうのも関係しているんじゃないかと思うんですよね(笑)。女性慣れっていうとちょっと言葉が違うかもしれないですけど、声質に品があって性欲みたいなのが乗ってないんです。

──その後久保先生はアフレコにも立ち会われたとのことですが、特集の第1回でのえる役の山田唯菜さんは、久保先生からアフレコ時に「のえるはすべてを受け入れているキャラなんだよね」と言ってもらったことで演じやすくなったとおっしゃっていました(参照:劇場中編アニメ「BURN THE WITCH」特集 田野アサミ(ニニー・スパンコール役)×山田唯菜(新橋のえる役)×土屋神葉(バルゴ・パークス役)座談会)。

新橋のえる。ウイング・バインドの1等保護官で、喜怒哀楽を見せないクールな性格だ。

久保 山田さんはけっこう悩みながら演じていたというか。のえるって演じるのがすごく難しいキャラクターなんですよね。声を張りすぎてもダメだし、抑えすぎると顔つきも相まってクールというか冷たく感じられちゃうから。のえる自身はクールキャラではあるんですけど、普通のクール系のキャラっていろんなことに対して「興味ないから」みたいなタイプが多いんです。

──「自分には関係ないからどうでもいい」という感じの。

久保 のえるはそういうキャラではなくて、「何があっても受け入れるっていうタイプだからあのテンションを保っているんだよ」という話をしたんです。

川野 こんな感じでアフレコにも普通に参加していただいて、アドバイスももらっていたのでありがたかったですね。

久保 初めてのキャラクターとか用語ばっかり出てくるので、あとから聞いて発音が違ったりするのも嫌だなと思って参加させてもらいました。

川野 だから録り直しもなくて、すごく楽でした(笑)。

モブキャラが僕が描いていそうな感じ

──先生がアニメを実際に鑑賞して、ここがすごいなと思ったシーンを挙げていただくとしたらどこでしょう。

劇中に登場するモブキャラクター。

久保 すごいって言ったら全部すごくて、気に入っているシーンもたくさんあるんですけど……。けっこうびっくりしたのは、僕が描いているわけではないのに、モブキャラが僕が描いていそうなモブの感じなんですよ。それはすごいなと思いましたね。

川野 その辺りはキャラデザの山田(奈月)さんの仕事なんですよね。山田さんは「ZOMBIEPOWDER.」の頃から久保先生の作品が好きだったらしくて、そういう思いがモブにも出ているのかもしれないです。

久保 モブ以外でも「ここの絵、めちゃくちゃ僕の絵に似てるな」ってシーンありましたよ。

川野 おそらくトレスです(笑)。現場に久保先生の原作切り抜き集があって、キャラ表とそれを一緒に使って似せようとしていたんですよね。

久保 (笑)。でも明らかにトレスじゃなさそうな「こういう横顔描きそう」ってところもあったりして。

川野 それは多分、久保先生の絵をスッと持ってきて、それを取り込んでちょっと角度をずらした感じで描いたやつじゃないかな(笑)。アニメってそういう感じでずらしながら描いて似せることができるので。

エリーがシンデレラへと羽化するシーン。

久保 気合いが入っているなと思いましたよ。ファンの反応で「先生の絵がちゃんと動いている」って喜んでいるのを見たりすると僕もうれしかったですし。

川野 僕もそういう反応はうれしかったですね。原作と絵が同じかどうかっていうのが観客が入り込めるかどうかの差だと思っていたので。

久保 あと「アニメならではだな」って思ったのは、エリーが羽化するシーンですかね。羽化シーンはマンガでは省いていたところなので、アニメで拾ってもらえてよかったですね。エリーの表情とかの芝居で「ああ、言葉が通じないキャラなんだな」っていうのも表現してもらえましたし。

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メイシーはヤベー奴