もっと吉田秋生作品を楽しめる!
画業40周年の歴史を辿る「漫画家本Special 吉田秋生本」
昔の作品には興味がない?吉田秋生の本音が炸裂
「吉田秋生への質問座談会」
本書の目玉企画となる「吉田秋生への質問座談会」では、Twitterにて募集したファンからの質問に吉田が次々と答えていく。「各作品の着想はどうやって得たのか?」「今まで描いた作品の中で特に思い出深い話は?」などの作品に関する質問はもちろん、「マンガ家になっていなかったらどんな仕事をしていた?」「先生にとっての小さな幸せは?」「日課を教えてください」など、吉田のパーソナルな部分に迫る質問も飛び出す。「興味があるのは今描いてるもので、描き終わったものには一切興味がない」という“過去を振り返らない”吉田ならではの作品との向き合い方や、「BANANA FISH」の最終回は某有名マンガに影響を受けていることなど、貴重なエピソードが楽しめる。
デビュー作から「海街diary」まで、40年を振り返る
「徹底解剖~吉田秋生の40年」
このコーナーでは吉田の画業40周年の軌跡を5つの時代に分けて紹介している。
- デビュー~カリフォルニアの時代(1977~1981)
- 多作&吉祥天女の時代(1982~1984)
- BANANA FISHの時代(1985~1995)
- YASHAの時代(1996~2005)
- 海街diaryの時代(2006~)
時代ごとに名場面とあわせて各作品の解説が記されており、「BANANA FISH」のコーナーでは懐かしのグッズの一部も公開。また世の中で起きた事件や当時流行したものと照らし合わせながら、吉田が発表してきた作品を振り返ることのできる「吉田秋生まんがHistory」や、カラーイラストが並ぶイラストギャラリーも展開されている。
マンガ家・吉田秋生の素顔が見えてくる
「プレミアムトーク」
めったに表舞台には立たず、自身の趣味であるテニス仲間にもマンガ家であることを明かしていないという吉田。そんな吉田がこれまでに行ってきた著名人とのトークセッションの様子が、本書では堪能できる。それぞれのトークから吉田が影響を受けたものや創作に対しての思い、そして吉田の素顔が垣間見える。
- 吉田秋生×江口寿史(1983年、1989年)
友人としても交流のある2人。初対談の様子に加え、6年後に行われた対談も掲載された。2人のデビュー当時の失敗談も?
- 吉田秋生×新井素子(1985年)
“朝型人間”の吉田と“夜型人間”の新井。マンガと小説の表現方法の違いや好きなSF作品の話題に花が咲く。
- 吉田秋生×くるねこ大和(2017年)
マンガ家としてお互いにファンであり、ともに猫好きの2人。お互いの作品の印象や、愛猫とのエピソードが披露されている。
- 吉田秋生×伏見憲明×三浦しをん(2017年)
新宿二丁目のバーで常連客を交えて行われた“大人の”トーク。伏見、三浦それぞれが思う吉田作品の魅力や、「BANANA FISH」のアッシュと英二の関係性についても言及している。
- 吉田秋生×中島梓(1994年)
吉田の創作の原点に迫る対談。プライベートでも仲のいい2人がざっくばらんに語り合い、吉田が大学の卒業旅行で訪れたというアメリカの思い出にも触れた。
- 吉田秋生×三代目魚武濱田成夫(2001年)
学生時代に吉田の作品を読み衝撃を受けたと語る魚武。「カリフォルニア物語」や「BANANA FISH」など、男性から見る吉田作品の魅力についてじっくりと語られている。
吉田と思い出の地を巡る
「鎌倉さんぽ」
ファッション、食べ物、そして“役者”? 魅力をとことん紹介
「Akimi's ATTRACTION~吉田秋生の魅力~」
吉田作品を魅力的に演出する5つの要素とは? 「Akimi's ATTRACTION」では5つの項目が設けられ、作中に登場するファッションや料理などが紹介されている。
- 「吉田コレクション」
吉田秋生作品にとって欠かせないアイテムの1つであるTシャツや、時代・国を象徴するファッションに注目! お気に入りのファッションを見つけよう。 - 「アクション監督吉田」
銃撃戦、肉弾戦……“吉田監督”による数々の戦闘シーンをピックアップ。激しいアクションから名(迷?)アクションまで掲載されている。 - 「吉田食堂」
作中に登場する魅力的な料理をメニュー表風にまとめて紹介。あなたが注文したい一品は? - 「吉田プロダクション」
複数の吉田作品で活躍するキャラクターを“役者”としておさらい! あちこちに登場する吉田社長のいちおしタレントも登場。 - 「名画座吉田」
映画に例えられることの多い吉田作品の表現方法に着目し、名場面をプレイバック。読者を感情移入させる演出に迫る。
- 「吉田コレクション」
そのほかにもコンテンツが充実!
吉田秋生の原点や“少女マンガらしくない”作風に触れる
「プレミアムトーク」の一部を公開
「漫画家本Special 吉田秋生本」に掲載されている吉田と著名人によるトークの中から、1994年に行われた吉田と中島梓による対談の一部を特別に公開。吉田の“少女マンガらしくない”作風やすべての原点だという作品についても触れられている。
地下室の得意な少女まんが家
中島 ベッドシーンなんて他の少女まんが家とはケタ違いにはっきりと描かない?(笑)
吉田 そうかもしれない。
中島 二人でベッドにいるところだって普通の少女まんが家は描かないわよ。だからどこか少女まんが家じゃないとこはあるよね。
吉田 あら失礼しちゃう。私は可愛い少女まんが家なのに。
中島 みんなそういうの直接描くようになるとレディースコミックのほうに行くから。
吉田 あ、ほんと! でも私の描くものとレディースコミックのスタンスは違ってると思うけど。
中島 違うよ。でも少女まんがともはげしく違っているかもしれないね。
吉田 ひ~。アイデンティティが崩れ去っていく~(笑)。なんてことを。こんなに少女まんがが似合う職業の人はいないと思うんですけど。
中島 でもさあ、バラの花を散らしたりという感じでもないじゃない。
吉田 いや、描けないのよ。たんに。描いたことはあるんだけど、うまく描けないんだよ。幼稚園児がちり紙でつくった花みたいになっちゃうんだよ(笑)。あれセンスなんだよ。練習してもモノになるもんじゃない。才能というものなのよ、これが。
中島 不思議だね。
吉田 ただし、ただしっ、地下室とか描かせたらうまいで~(笑)
中島 バラが苦手で地下室がうまい少女まんが家がどこにいますかっ(笑)
吉田 トタンでできた小汚らしいようなのとか、中国人の厨房とかさ。
中島 すっごくわかるような気がする(笑)
吉田 ムダな才能だけど(笑)。結局そういうところが得意だから、東京やニューヨークの路地裏とかがけっこう舞台になっちゃう。アンティークとか嫌いだしね。ロココ調のドレスとかさ、そういうものを描く才能は一切ないの。
中島 ロココ風ドレスを描いたことは確かにないよね。
吉田 描けないんだもん。
中島 わりと汚なづくりの洋服ばっかり着てるよね、みんな。
吉田 だから、なんでニューヨークとかアメリカかっていうとさ、TシャツとGパンでいいわけ。これは得意(笑)。着物もだめなんだよね、鎧着てるみたいになっちゃう。
中島 でも『吉祥天女』の時にけっこう着物描いたじゃない。
吉田 だから私は少女まんが家としては確かにハンディキャップを負ってるんだよ。
中島 でも私は気に入ったな。バラが描けないで地下室の得意な少女まんが家(笑)
吉田 ゴミバケツとかも得意だしね。サイバーパンクなのは得意だよ。
中島 人の顔でもヒゲ面とかが好きなんじゃない?
吉田 好きよ。オッサン好きなの。
中島 めったに他の人が描かないようなものを描くのよね(笑)。いわゆるいい男じゃないのって好きなんじゃない?
吉田 好きだよ。好きっていうか描きやすいよ。いい男は私ワンパターンしか描けないからさ。ちょっと色や髪型かえるとかさ、その程度のバリエーションしかないのよ。それっていうのもさ、「いい男はこれだ!」っていうのがあるから。フェイバリット・タ~イプが。もうそれ以外描けない。
中島 基本的にはジョン・ローンですか。
吉田 ちっちっちっ。
中島 だれだっけ。
吉田 いまはね、やっぱりキアヌ・リーブスかな。
永遠に追い求めていくもの
吉田 『カリフォルニア物語』は水谷豊と萩原健一の『傷だらけの天使』がベースになっているんですよね。それといわずと知れた『真夜中のカーボーイ』が。私が最初にものを描くきっかけになったのは70年代のアメリカン・ニューシネマの影響だから。
中島 『スケアクロウ』とか『俺たちに明日はない』とか。
吉田 私の場合はとにかく『真夜中のカーボーイ』だったの。あれが強烈でさ。あれが私の原点なんだよね。
中島 そうか、『真夜中のカーボーイ』が原点なのか。
吉田 うん、原点。今にして思うと。
中島 それは『カリフォルニア物語』の原点ってことじゃなくて吉田秋生そのものの原点なの?
吉田 すべての原点。
中島 そこまでいう(笑)
吉田 この際、いいきってやる。だから、私の描くものには男性同士の関係がでてくるときには肉体関係は絶対でてこない。あれが原点だからさ、想像がつかないんだよ。
中島 たしかに。
吉田 キスとかはでてくるけれどもホモセクシャル的な肉体関係が一切でてこないのは……。
中島 ジョン・ボイドとダスティン・ホフマンだからなわけだね、イメージが。
吉田 そう。だからベッドインに至らない。つまり、ほら生まれたてのヒヨコが最初に見たものを親と思ってしまうようなもので。
中島 インプリンティングね。
吉田 だから永遠に追い求めていくものだよね。
中島 永遠に追い求めていくものが『真夜中のカーボーイ』かぁ~。
吉田 そう。悲しい、悲しすぎる(笑)
ここで紹介したトークの内容は、本書に掲載されているもののごく一部。
そのほかの対談・鼎談の様子が気になる人は「漫画家本Special 吉田秋生本」をチェック!
- 吉田秋生「漫画家本Special 吉田秋生本」
- 発売中 / 小学館
-
1728円
- 月刊flowers 2018年2月号
- 発売中 / 小学館
-
590円
2018年2月22日に都内にて開催される、テレビアニメ「BANANA FISH」制作発表会を間近で見ることのできる“プレミアシート”の応募券が付属。また赤石路代の新連載や、萩尾望都と宝塚歌劇団の演出家・小池修一郎の対談などが掲載される。
- アニメ「BANANA FISH」
- スタッフ
-
原作:吉田秋生「BANANA FISH」(小学館 フラワーコミックス刊)
監督:内海紘子
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:林明美
アニメーション制作:MAPPA
©吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH
- 吉田秋生(ヨシダアキミ)
- 8月12日、東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。1977年に別冊少女コミック(小学館)にて「ちょっと不思議な下宿人」でデビュー。1983年に「河よりも長くゆるやかに」及び「吉祥天女」、2001年に「YASHA-夜叉- 、2016年に「海街diary」でそれぞれ小学館漫画賞を受賞している。2007年には「海街diary」が文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞に輝き、同作は2015年に是枝裕和監督により実写映画化された。その他の代表作に「カリフォルニア物語」「櫻の園」「BANANA FISH」「吉祥天女」「ラヴァーズ・キス」など。その多くが映画化、舞台化されており、2018年には「BANANA FISH」のテレビアニメ化が決定している。
2018年2月22日更新