「MAJOR」「ONE PIECE」「バクマン。」…橋本祥平の半生を、“思い出マンガ”5選とともに辿る (2/2)

「ワンパンマン」が将来の不安をかき消してくれた

──次は高校卒業後。専門学校から20代前半にかけての思い出マンガについてお伺いしたいのですが、ちょうど電子書籍が普及してきた頃でしょうか?

そうですね。この頃からあまり紙のマンガを買わなくなった気がします。専門学校から20代前半の思い出マンガに選んだ「ワンパンマン」も電子書籍で読んでいました。

「ワンパンマン」1巻

「ワンパンマン」を読む!

──「ワンパンマン」も「ONE PIECE」「トリコ」に続きバトルものではありますが、設定がかなり斬新ですよね。

「ワンパンマン」は、専門学校の友人から勧められて読み始めたのですが、本当に衝撃的でした。今まで読んできた作品の主人公たちも強かったけれど、あらゆる敵をワンパンで倒すヒーロー・サイタマって斬新だなと思いましたし、読んでいてとにかく爽快でした。

──本作には、サイタマのほかにも個性豊かなヒーローが登場しますが、お好きなキャラクターを挙げるとするなら誰ですか?

でも、やっぱりサイタマが一番好きですね。普段はのほほんとした顔つきなのに、「マジ殴り」で見せる鋭い目とか、キリッとしたオーラのギャップもいいなと思いますし、やっぱりサイタマが登場するときは絶対的な安心感がありますよね。

橋本祥平

橋本祥平

──当時は何かと将来への迷いや不安を抱く時期だったかと思いますが、「ワンパンマン」から影響を受けたことはありますか?

20代前半は「どうしたら役者になれるんだろう?」といろいろな不安を抱いていた時期でした。でも、不安だからこそマンガだけは逆の存在であってほしいという気持ちがあって。例えば、「ワンパンマン」を読んでいると、サイタマがワンパンでバーンッと敵を倒していく。この作品に触れているときは不安も何かもサイタマがかき消してくれたなと。当時は、そういった不安を忘れさせてくれるような作品を好んで読んでいたように思います。

──「ワンパンマン」のほかには、どんな作品を読まれていたのでしょうか。

「ハイキュー!!」も当時の自分にすごく刺さった作品です。主人公の日向は小柄で、自分よりも背の高い選手が大勢いるバレーボールの世界でどうやって生きていくのかを考えるんです。考え抜いた結果、自分の武器を最大限に生かした戦い方を見つける。この展開にすごく勇気をもらいましたね。環境に準じるのではなく、どの場所だったら自分は輝けるのかという考え方をこの作品から教わりました。

「バクマン。」との出会いが仕事への意識に変化をもたらした

──最後に、ここ数年の思い出マンガについてお伺いします。仕事柄、マンガを読む機会も増えたと思いますが、思い出マンガを選ぶとしたらいかがでしょうか?

好きなマンガのジャンルはあまり変わっていないのですが、マンガを読む受け皿が広くなったように感じます。そんなここ数年の思い出マンガを1つ選ぶとしたら、「宇宙の卵」という作品ですね。

「宇宙の卵」上巻

「宇宙の卵」を読む!

──これまでに紹介いただいた作品とは雰囲気がガラッと変わり、硬派なSFマンガを選ばれましたね。

「ONE PIECE」の考察動画を投稿しているYouTuberのコヤッキーさんという方がオススメしていて読み始めました。フィリピンのマニラの貧困街で育った少年が、唯一の家族である祖父を亡くし、さらにいろいろな人から迫害を受ける。死を決意したときに不思議な卵を拾い、それが割れた瞬間に一気にSFな展開になるんです。最初は現実世界のシリアスめなストーリーだったのに、卵が割れたことをきっかけに急に本格的なSFになるという、このギャップに惹かれました。

──「宇宙の卵」は上下巻で完結の作品ですが、最後まで読み終えた今思う、本作の魅力を教えてください。

主人公が特別な力に目覚める展開ってマンガではよくあることだと思うんです。「宇宙の卵」は、卵が割れた瞬間に世界中のみんながとある不思議な力を使えるようになるのですが、唯一主人公のルイだけがこの力を使わないんです。さらに、不思議な力が使えるようになってしまったこの世界をどうしたら元通りにできるんだろうと思案する。そこでルイは特別なことをするのではなく、勉強をして知識で立ち向かっていくんです。設定はもちろん、ルイの戦い方も面白い。上下巻完結ですごく読みやすい作品なので、おすすめです。

橋本祥平

橋本祥平

──ここ数年、お仕事的にもマンガはより身近な存在になったかと思います。お仕事がきっかけで出会ったマンガで特に印象深い作品を教えてください。

「バクマン。」です。舞台「『バクマン。』THE STAGE」で新妻エイジ役として出演したことがきっかけでマンガを読んだのですが、マンガ家さんってこの世で一番しんどい職業なんじゃないかな?ってくらい、本当に命懸けの仕事だなと感じたんです。マンガはたくさんの人を笑顔にするけれど、その裏ではマンガ家さんがひたすら作業をして、締切と格闘して……。あんなに苦しい日々があるんだと衝撃を受けました。もちろん、マンガ家さんたちは楽しんでやっているのかもしれないし、僕は実際の仕事現場を見たわけではないけれど、それは体を壊してしまうこともあるよなと。

──「バクマン。」との出会いで、お仕事に対する意識にも変化はありましたか?

原作者さんへのリスペクト、原作への向き合い方がまたひとつ変わりましたね。マンガ家さんは、舞台で例えるなら脚本、演出、カメラワーク、衣装、ヘアメイクなど全部自分でやるわけじゃないですか。本当にすごいですよね。こんなにも魂を込めて完成させた作品を、僕は舞台で演じさせていただくことが多いのですが、マンガ家さん以上に作品と向き合わなければと背筋が伸びました。

──マンガ好きの橋本さんが、今後、舞台化を熱望する作品や出演したい作品がありましたら教えてください。

先ほど紹介した「宇宙の卵」も舞台化したら面白そうだなと思います。同じくジャンプ+作品でいうと「ダンダダン」も大好きなのですが、アニメ化が決定したからもしかしたら舞台化する日も近いのかな?と密かに心待ちにしています。あと、小学生の頃「MAJOR」と同じくらい「金色のガッシュ!!」も大好きで、「赤い魔本」のファイルにゲームカードをコレクションするくらい熱中していました。最近、続編の「金色のガッシュ!!2」の連載がスタートしたんですよね。当時の気持ちが蘇るとともに、令和にガッシュの続きが読めるうれしさを噛み締めています。しかもガッシュたちが成長しているから、これは舞台化しやすくなったんじゃないかな?と思っています。

橋本祥平

橋本祥平

──「金色のガッシュ!!」だと、どのキャラクターを演じてみたいですか?

演じさせていただけるならどのキャラクターでもうれしいですが、やっぱりキャンチョメですかね。

──いつか橋本さんのキャンチョメが見れる日を楽しみにしています。小学生時代から現在まで思い出のマンガを振り返っていただきましたが、天才型よりも努力型のキャラクターがお好きなのかなと感じました。

まさにその通りです。努力を怠らないキャラクターに惹かれるんだろうなと思いました。その感覚があるから僕自身も努力を惜しまずがんばろうって今思えているので、今の自分の土台を作ってくれたマンガに感謝ですね。

プロフィール

橋本祥平(ハシモトショウヘイ)

1993年生まれ、神奈川県出身。2013年に「陽炎ペイン」で舞台デビューし、2016年の歌劇「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」で初主演を務めた。近年の代表作には「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼︎』」西谷夕役、「舞台『刀剣乱舞』」太鼓鐘貞宗役、「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ」月永レオ役、舞台「KING OF PRISM」一条シン役、ミュージカル「封神演義-目覚めの刻-」太公望役、「機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-」刹那・F・セイエイ役、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』斎藤一 篇」斎藤一役、舞台「幽☆遊☆白書」飛影役などがある。2024年4月19日からは舞台「ヴィンランド・サガ」にトルフィン役として出演する。