本を耳で聴いて楽しむオーディオブックAudibleでは、ライトノベル作品を多数配信中。「魔術士オーフェンはぐれ旅 新装版」「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」「転生したらスライムだった件」「妹さえいればいい。」「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」と魅力的な作品を多数ラインナップしている。
コミックナタリーでは声優の朗読でライトノベルを聴くAudibleの魅力に迫るべく、アニメ・マンガ好きで知られるフリーアナウンサーの宇垣美里に取材。“声がすごく素敵で、「ありがとうございます」という感じでした(笑)”と純粋にリスナーとして朗読を堪能した感想と、アナウンサーと声優での声の演技の違いなどを聞いた。
取材・文 / 丸本大輔 撮影 / 武田真由子
“美里”と“ミサト”の名前つながりで「エヴァ」を観て、アニメ好きに
──宇垣さんは、アニメやマンガが大好きとのことですが、好きになった時期やきっかけを教えてください。
たぶん一番最初に観たアニメは「美少女戦士セーラームーン」だと思います。幼稚園の頃、周りのお友達もみんな大好きだったので、アニメだとか意識せず、当たり前のように観ていました。自分の好きなものを自分で守るために戦う女の子って、すごくキュートでカッコいいなと感じたことは、今の性格にも反映されているのかなって思います(笑)。あと、「カードキャプターさくら」も、つらいときに観たら「絶対だいじょうぶだよ」って言ってくれるので、今も大好きなアニメです。「ありがとう」と思いながら次の日もがんばれています。
──その後、女児向けのアニメだけでなく、いわゆる深夜アニメなども観ていたのですか?
深夜アニメに関しては、高校生の頃まで観る機会は全然なかったんです。ただ、本を読むのは大好きで、マンガも好きだったし、ドラマや映画も好きだったので、物語に対する愛情はずっと大きかったと思います。観るようになったのは大学生になってから。新入生に時間割りの組み方とかを教えてくれる先輩方の中にアニメを好きな方がいて。「『みさと』って名前なんだ。僕は『みさと』っていうと『ミサトさん』のことを思い出すんだよね」と言われて、なんのことだろうと思ったら、「新世紀エヴァンゲリオン」の話で(笑)。
──葛城ミサトさんのことですね(笑)。
それで気になって観始めたら面白くて。その後、周りから勧められる作品を次々と観るようになり、ズブズブとアニメ好きになりました。大学生は自由になる時間も多いですからね(笑)。
──当時、特に好きだった作品を教えてください。
取材などで、いつも名前を挙げている作品が2つくらいあって、まずは「コードギアス 反逆のルルーシュ」。特に(主人公の)ルルーシュ(・ヴィ・ブリタニア)がすごく好きなんです。今年、映画の「コードギアス 復活のルルーシュ」が公開されて復活したので、「本当にありがとう」という気持ちでした(笑)。素晴らしかったです。「コードギアス」は、今もずっと好きですし、自分にとってのバイブルと言ってもいい作品だと思ってます。あと、もうひとつは「とらドラ!」という作品です。
──ライトノベルが原作のラブコメですね。2008年から2009年に放送されたアニメも評価が高いです。
「とらドラ!」では、あーみん(川嶋亜美)という子が大好きで。今でも「好みの女の子は?」と聞かれたら、あーみんと答えます(笑)。
──最近の作品でお気に入りの作品や、気になっている作品はありますか?
今、観ているのは「さらざんまい」などですね。あと、すごく気になっていて観に行きたいのが映画の「プロメア」です。観た方が皆さん、「すごく良かった!」とおっしゃるので。
Audibleは、アニメを観るのと近い感覚で本を楽しむことができる
──先ほど挙がった「とらドラ!」のように、アニメの原作となっているライトノベル作品というのは多数ありますが。アニメやマンガだけでなく、ライトノベルを読む機会もあったのでしょうか?
中学校の図書館に「キノの旅」などがあったので読んでいました。ただ、特に「ライトノベルを読みたい」と意識していたわけではなく、いろいろな本を読む中で自然に手に取っていた感じですね。そういう感じで西尾維新さんの〈物語〉シリーズも読んでいました。
──今回、声優が朗読を担当しているAudibleのライトノベル作品を聴いていただいたのですが、「ライトノベルを聴く」という体験はいかがでしたか?
ライトノベルって状況説明などがすごくしっかりされていて、映像を思い浮かべやすい描写が多いうえに、テンポもいいですよね。だからこそ、ライトノベルはアニメ化するのにも向いているのだと思いますが、耳で聴いて楽しむのにも、すごく合っているなと感じました。音だけではありますが、アニメを楽しむのと近い感覚で楽しむことができた気がします。あと映像の場合は、どうしてもじっと観てないとしっかり楽しめないですが、Audibleだと目が自由になるので、聴きながら洗いものもできるし、洗濯ものを干すこともできるし、散歩もできる。きっと皆さんもそうだと思いますが、日々、すごく忙しいじゃないですか(笑)。だから、そうやって何かをしながら作品も楽しめるのは、すごくありがたいなと思います。
──読書好きな人にとっては、日々の生活の中で読書の時間をどうやって確保するかも、重大な課題ですよね。
もう睡眠時間を削るしかなくなってくるんです(笑)。普段は移動中とかに読むことも多いのですが、さすがに歩いているときは読めないですよね。そうなると、耳で聴けるのはすごくありがたいです。
──今回、聴いていただいた作品の中で、特に気になった作品はありましたか?
「魔術師オーフェン(はぐれ旅 新装版1巻)」は、 森久保(祥太郎)さんが、地の文も男性の声も女性の声も全部1人でやっていらっしゃるし、(異世界の)想像上の生き物なども出てくるのに、朗読を聴くだけで、それがちゃんとイメージできるようになっているんですよね。もし自分が朗読する立場だったら、そういったことを伝えられるように読むのは、すごく難しいだろうなと思いました。あと、やっぱり森久保さんの声がすごく素敵で、「ありがとうございます」という感じでした(笑)。そのほかの作品だと、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」と「転生したらスライムだった件」は、アニメも観ていたので映像がすごく想像しやすかったですし、アニメだけでなく、こういう物語の楽しみ方もあるんだなって思いました。
Audible「魔術士オーフェンはぐれ旅 新装版」1巻冒頭
──これまでに宇垣さんご自身が読む側として、朗読に触れる機会はあったのでしょうか?
私は今年の3月までTBS所属だったのですが、TBSのアナウンサーは朗読会(「A'LOUNGE」)を定期的にやっていまして。私も去年の5月に一度、参加させていただきました。それ以前にも「ママサカス」という(ファミリー向けの)イベントで、子供さんたちに向けて絵本を読む機会はありましたが、しっかりとした朗読をするのは、その朗読会が初めての経験でした。今までとはまた違う技術を学べると思って楽しみでしたね。実際、演出家の方が指導に来てくださいました。あと、先輩が私の朗読を聴いて、アドバイスをくださったりすることもありましたし、自分個人でも練習しました。
自分以外の存在に感情を乗せる朗読は、すごく楽しい仕事だった
──ニュースなどの原稿を読むときと、朗読をするときでは、どのような違いがあるのでしょうか?
まず報道番組などでニュースを読むときには、個性は一切必要がなくて。なるべくフラットにして聴きやすく読むことが一番大事。感情を乗せることって、ほぼないんです。あと、ニュースは決まった尺の中で読むということがよくあるので、そこに収めるための技術というものもあるんです。逆に朗読は、その人の気持ちになって読んだりもしますし、「何分の中で読め」といったことは、ほぼ言われません。
──では、アナウンサーとしての読み方とは異なる朗読をしてみて、どのような感覚がありましたか?
多少聴きづらくなったとしても、少し早口で読んだり、あり得ないような長い間を取ったりすることは、ニュースではほとんどないことなので、すごく新鮮でした。それに私は、もともとの普段のしゃべり方もそうなうえに、ニュースで培われたものもあるので、基本的にフラットに読むことが多いんです。だから感情を乗せたり、ある種、自分では大げさに感じるように読むことはなかなか機会のないことだったので、最初はそこにすごく苦労しました。
──先ほどお話にあがったA'LOUNGEでは太宰治の「燈籠」を朗読されたそうで。年下の男性のために万引きをして捕まった女性のひとり語りの形で書かれた短編で、主人公の情念も色濃く表現されている作品です。「基本的にフラット」な読み方とは、かなり異なるものが求められたのでは?
そうですね。でも、私には割と合っている作品だったのかなと思います。その年の朗読会には「手紙」という全体のテーマがあって、その中で私は女性の手紙というか独白という内容の「燈籠」を読ませていただくことになりました。もともと、太宰治の作品が好きということもあって、主人公の気持ちがわからないでもないというか……。私はああいうふうにはなりませんけど、主人公の感情が激しすぎて感情移入がしやすかったところはありました。正直「ハッピーハッピー!」みたいな主人公のお話よりは、よっぽどやりやすかったです(笑)。(年下の)恋人への思いが強いあまり犯罪に走ってしまう彼女の気持ちって、例えば、大切な家族、妹とかが同じ目にあってたら、自分も同じようなことをするかもしれない、というふうに気持ちを持っていきやすかったので。
──初めての朗読会を終えたとき、またやってみたいなと思いましたか?
自分以外の存在に感情を乗せるというか、同じような気持ちで読むのはすごく楽しいお仕事だったので、ぜひ今後もやってみたいなと思いました。
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違うキャラクターのセリフや動きを1人で読むのは相当に大変
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- 宇垣美里(ウガキミサト)
- 2014月4月、TBSに入社。アナウンサーとして数々の番組に出演。2019年3月にTBSを退社し、同年4月よりオスカープロモーションに所属。趣味は読書、アニメ鑑賞など。