コミックナタリー Power Push - 高田慎一郎「放課後アサルト×ガールズ」
ミリタリー好き上坂すみれと紐解くゲーム的な物語
戦争は大嫌い! だって兵器が壊れちゃうじゃない!
高田 今MP40の話をしましたけど、実は僕、近代兵器って苦手なんですよ。
上坂 あっ、私もです。
高田 それが綾子たちに第二次大戦時の米軍の装備をさせた理由でもあるんですけど。
──なぜですか? より高性能な兵器のほうがカッコいい気もしますけど。
高田 さっきおっしゃっていた、人を傷付ける道具だからですね。特に近代兵器は、今まさにリアルに誰かを傷付けているだけに萌えられないっていうのがあって。第二次大戦中の兵器ももちろん誰かを傷付けていたんですけど、もう70年前の話だから、ちょっと不謹慎なのかもしれないけど歴史の一部って言うんですかね。傷付けられた方々には哀悼の意を表すけど、兵器に対しては、もう少し客観的。もはやただの“モノ”として萌えられるんです。
上坂 確かに第二次大戦の頃の兵器と近代兵器の魅力ってぜんぜん違いますよね。当時の兵器の、あのある種異様な魅力ってなんなんですかね? 私は第二次大戦時にソビエト軍が使っていたOTシリーズっていう、火炎放射戦車がすごく好きで。フロント部分に火炎放射器があって、火を噴く戦車なんですけど……。
高田 それ、戦車で人を焼くってことですか?
上坂 どうなんだろう? 人を焼くのか建物を焼くのかはわからないし、リアルに人を焼くところを見たいわけでもないんですけど……。
──ゴアはお嫌いなわけですもんね。
上坂 はい。でも「戦車なのになぜか火を噴いてる」っていう、そのすごく不思議な感じがすごく好きなんです。
高田 きっと我々が今話しているような感覚って過去の兵器が好きな人間だけのものではなくて、近代兵器が好きな人も皆さん持ってると思うんですよね。
──先生は近代兵器には「現在運用されている」というバックグラウンドがあるからイマイチ乗れないけど、とはいえ近代兵器が好きな人たちだって当然「現在誰かを傷付けている」という事実をよしとしているわけではない。兵器という“モノ”に対するフェティッシュみたいなものに動かされている点では一緒だろう、と。
高田 ええ。ミリタリーマニアの名言に「戦争は大嫌い! だって兵器が壊れちゃうじゃない!」っていうのがあるくらいですから。
上坂 まさにその通りです。作るだけ作って使わないのが一番。
──兵器ってなんなんだろう(笑)。
高田 確かにミリタリー趣味のない方にはそう見えるかもしれないですね。でも戦争ドキュメンタリーなんかをマジメに観て歴史を反省しつつ、その一方で兵器はいいなって思う。そういう人種なんです(笑)。だから本当に戦争が好きなミリオタっていないんじゃないかな? 兵器を使ったらどうなるかっていう現実を知っているぶん、いざ戦争が始まったら最初に反対する気がする。
偵察兵・スミレーノフ、出撃!
──上坂さんは「放課後アサルト×ガールズ」2巻の帯に「選ぶなら偵察兵かなぁ」というコメントを寄せてますよね。
上坂 やっぱり突撃兵は死にやすいし(笑)、どちらかというと、前線に立つ人を後ろから援護するほうが好きですし。アニメでも誰かに付き従う役をやることが多いので、向いているんじゃないかなと思ってます。それに偵察兵ならいざというとき「君のことは忘れないよ」って、突撃兵を置いて逃げることができますし。任務はあくまで偵察だから。
──言っていることが汚いです(笑)。
上坂 で、戦友だった突撃兵の恩賜タバコを手に帰国して、それを遺品として家族にそっと渡すという役がいいなあって(笑)。あと「放課後アサルト×ガールズ」の世界では突撃兵になると運動神経が強化されるじゃないですか。
──そうですね。
上坂 私の中では運動神経のいい人、足の速い人イコール、ショートカットのイメージがあるので、そういう子にやってほしいですね。
──ロングヘアの私は突撃はしない、と(笑)。そして上坂さんは2巻のCMのナレーションも担当なさっています。収録のとき、気を付けたことってあります?
上坂 ミリタリーものってシリアスなものも多いんですけど、さっきもお話した通り、この作品からはサバイバルを楽しむ女子の明るさみたいなものも感じられたので、真剣だけど明るさを忘れないようにというのを心がけましたね。
高田 作品と非常に合っていてうれしかったですね。で、そのナレーションの収録時に「ロシアのキャラが出ないの」とおっしゃっていたと聞きまして。
上坂 言いました、言いました。
高田 なのでソビエト軍をモチーフにした上坂さんのイラストを描いてみたんですけど……。
上坂 すごーい! これで私、マンガの中にも出られるし、アニメ化されたら、そのアニメにも出られますよ。スミレーノフ……上坂スミレーノフとして。名前が「ノフ」で終わってしまうと男性疑惑も出てきますけど(笑)。あのー……このイラストっていただいてしまっていいんですか?
高田 逆にもらっていただけますか?(笑)
──あはははは(笑)。でももし上坂スミレーノフを今後登場させるとしたら、どうやって物語に絡んでくんでしょうね。
高田 ソビエト軍の装備ですし、この子を出すのであれば「実はよその学校からさらわれてきた別の軍勢がいて」みたいな話と絡めることになるのかな? 実際、こういう思い付きみたいなところから作品の世界がどんどん広がっていくことが多いので、これからもせわしなく話が進んでいくとは思うんですけど、読者の皆さんにお付き合いいただければうれしいですね。
高田慎一郎直筆 “上坂スミレーノフ”のイラストボードが当たる!
対談内にも登場した高田慎一郎描き下ろしによる上坂すみれのイラストボードに、2人のサインを入れて抽選で1名にプレゼント。希望者はCOMICメテオの公式Twitterアカウント(@comicmeteor)をフォローし、所定のツイートを10月31日までにRTしよう。
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ミリタリー×少女。
ときに真面目に、ときにゆるく。
高田慎一郎の描く、少女兵士たちのレジスタンス・ストーリー、第2巻!
消息を絶った仲間達を捜すアヤコたち。
負傷した彼女に、イヨガミが迫る……!!
第2巻では本格的な小隊行動も開始!
さらには第二次大戦の「あの地」をモチーフにした戦闘も勃発…!?
高田慎一郎(タカダシンイチロウ)
福岡県北九州市出身。月刊Gファンタジー(スクウェア・エニックス)にて、1995年に「神様のつくりかた。」で連載デビューを果たす。以降「シリウスの痕」「ククルカン 史上最大の作戦」「少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ」などの作品を発表。2015年よりCOMICメテオにて「放課後アサルト×ガールズ」を連載している。
上坂すみれ(ウエサカスミレ)
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。小学生時代よりジュニアモデルとして活動し、2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。以来、注目作に出演する一方でメディアやイベントなどを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。そして2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。その後も桃井はるこ作詞作曲の「げんし、女子は、たいようだった。」や、大槻ケンヂ作詞、NARASAKI作曲の「パララックス・ビュー」など話題作を立て続けにリリースし、2014年1月には1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」を発表する。同年7月、及川眠子、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子らを作家陣に招いた4thシングル「来たれ!暁の同志」を、12月には5thシングル「閻魔大王に訊いてごらん」と自薦の80年代アイドルナンバーをコンパイルした「上坂すみれ presents 80年代アイドル歌謡決定盤」を発売した。2016年1月には丸2年ぶりとなる2ndフルアルバム「20世紀の逆襲」を、同年8月に7thシングル「恋する図形(cubic futurismo)」をリリース。12月には東京・両国国技館でワンマンライブを実施する。