及川大輔・村瀬克俊「アラタプライマル」 PR

「アラタプライマル」及川大輔(原作)・村瀬克俊(漫画)×「Dr.STONE」稲垣理一郎(原作)座談会|“サバイバル”を共通項に集った3作家、キャラや物語の作り方などそれぞれの創作論を丸裸に

新鋭・及川大輔と「カラダ探し」の村瀬克俊がタッグを組んだ「アラタプライマル」1巻が発売された。少年ジャンプ+にて連載されている同作は、原始時代へと突如タイムスリップしてしまった人々を描いた“原始サバイバルミステリー”だ。

コミックナタリーは1巻の発売に合わせ、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されているSFサバイバル「Dr.STONE」で原作を担当する稲垣理一郎と、及川、村瀬の座談会をセッティング。座談会の話題は両作品の成り立ちに始まり、それぞれのキャラクターやストーリーの創出方法などの創作論、原作と作画に分かれてマンガを作るうえでの執筆方法などにも及んだ。「Dr.STONE」の主人公・千空と、稲垣が2002年から2009年まで週刊少年ジャンプに連載していた「アイシールド21」のキャラクターの共通点なども明かされているのでぜひチェックしてほしい。

取材・文 / 宮津友徳 撮影 / 武田真由子

皆素新太

「アラタプライマル」作品紹介

STORY

太陽フレアに端を発する長期間の大停電が起こった2027年の地球。主人公の少年・新太はとある特殊な体質のため、父親とともに電子機器を使用しない原始的な生活を送っていた。そんな中、大停電期間が3カ月を過ぎた頃に新太たちが住む街の一部が原始時代へとタイムスリップしてしまう。新太たちは未知の昆虫や動物が棲まう原始時代で、さまざまな謎を解明するためサバイバルをすることになる。

POINT1主人公は変な奴?

主人公の高校生・新太は電気で動く製品に近づくとその動きを止めてしまうという体質のため、「電磁パルス原人」と疎まれ、父親とともに山奥で暮らしていた。そんな環境にいたせいで人とうまくコミュニケーションを取ることができない新太は、空気を読むのが苦手で、素っ頓狂な会話しかできず周囲を苛つかせてしまう。

POINT2世界を救う鍵が原始時代に

世界規模の大停電を何年も前から予言していた新太の母・蓮美。彼女が残したメモによると、停電はその後に起こる人類のさらなる危機の発端にすぎないらしい。さらに蓮美は人類を救う際には新太が持つ“力”が必要になり、人類を救う方法の秘密は原始の時代にあるというが……。

及川大輔×村瀬克俊×稲垣理一郎座談会

村瀬さん、マンモスを描きたくないですか?

──村瀬先生と稲垣先生はジャンプで「K.O.SEN」と「アイシールド21」を同時期に連載されていたこともありますが、交流はあったりするんでしょうか?

左から稲垣理一郎、村瀬克俊、及川大輔。

稲垣理一郎 二桁以上一緒に飲んでるよね。

村瀬克俊 「トリコ」のしまぶー(島袋光年)先生が仕切っている飲み会があるんですけど、そこによく呼んでいただいて。

稲垣 しまぶー先生が長で、僕らはその手下みたいな感じで(笑)。よく村瀬くんのヤンチャ伝説を話したりね。

村瀬 そんなにヤンチャな話はないですけど(笑)。

稲垣 今回2人が一緒にやることになったのはどういう経緯だったの?

及川大輔 もともと僕は「K.O.SEN」で村瀬さんのアシスタントをしていたんです。

村瀬 「K.O.SEN」はすぐに終わっちゃったので、及川くんはそのあと「トリコ」のアシスタントをしていて。そこからはマンガ仲間という感じだったんですけど「トリコ」の連載が終わったあとに「カラダ探し」をちょくちょく手伝ってもらっていたんです。そのときに「村瀬さん、マンモスを描きたくないですか?」って突然言われて。

及川 すごいざっくりした言い方ですよね(笑)。

左から村瀬克俊、及川大輔。

村瀬 まあ付き合いが長いからざっくりした感じでも伝わるけどね。「なになに?」って聞いたら、「原始時代の動物が出てくる話を描きたいんですよね」と言っていて。僕もこれまで人間がメインになる作品しかほぼ描いてこなかったので、「動物描くの面白そうじゃん」と思って、「こうしたら面白くない?」って話を膨らませ始めたのが最初ですね。

──アシスタントをされていたということは及川先生ご自身も絵を描かれていたんですよね。そこで原作に徹することにしたのはどういった理由が?

及川 村瀬さんのほうがコマ割りなんかが間違いなく上手なので、そこを自分でやるよりもうまい人が描いたほうが作品的にもいいかなと思いまして。

村瀬 僕からすると及川くんが描いている読み切りを読んでいたときから、こういう派手なアイデアがポンと出てくるのは面白いなと感じていたんです。当時から「これ俺が描いたら面白いのに」と思っちゃったりもして(笑)。

「アラタプライマル」第1話の見開き扉ページ。

及川 「アラタプライマル」に関して言うと、僕はもともと「ジュラシック・パーク」みたいな昔の生物が出てくる映画が好きだったんですけど、「マンモスとかサーベルタイガーが出てくる映画で代表的な作品ってないな。じゃあ自分で作ろう」と思いまして。そこから「原始時代にタイムスリップさせたら面白いかな」といった形で考えていった感じですね。

稲垣 タイムスリップものっていうのはもう言っていい話なんだ。1巻を読みながら「このキャラクターたちはタイムスリップをしたのか」「それともキャラクターたちの周りにあの世界が過去から現れたのか」って、ちょっと考えながら読んでいて。

及川 大丈夫です。

「アラタプライマル」より。新太たちは突如原始時代へとタイムスリップしてしまう。

稲垣 僕は「アラタプライマル」の絵を見て、最初に「村瀬くん、こうきたか」って思いましたね。村瀬くんの絵って、デフォルメがあまりきつくなくてリアリティがあるんだけど、少年マンガらしい見やすさを守っていると考えていて。「そういうタイプの人に合う話ってどういうものなんだろう」と僕も考えたことがあるんですけど、「カラダ探し」でホラーをやったときに村瀬くんのタッチに話がバシッとハマっていて「うまいこと考えるな」と感じていたんです。それで次に描いてきたのが、いわゆるサバイバルものでしょ。まずサバイバルものにファンタジックなデフォルメなんていらない。ジャングルとかが出てきたときに、背景があまり黒くなっちゃうと見づらくなっちゃうけど、スッキリしすぎていてもリアリティが出ない。そんなときに、リアルなのに見やすいっていう村瀬くんの絵がすごく生きてくるなって思いました。

村瀬 そう言ってもらえると、無茶苦茶心に染みます(笑)。

地道にがんばる奴がカッコいいから始まった「Dr.STONE」

「Dr.STONE」のカラーカット。

村瀬 「Dr.STONE」はどういうふうに始まったんですか?

稲垣 キャラクターから話を構想していたんですけど、少年マンガの主人公って派手だったりとか突飛な一点突破の能力があったりすることが多くて、「地道にがんばる奴がカッコいいって言われることって少ないよね」という考えが僕の中にあって。人類全体を見たとき、みんなから讃えられる天才もすごいんだけど、ほとんどのすごい人ってそれこそ「プロジェクトX」の世界じゃないですけど地道にやっているんじゃないか、「表には見えないけど、その地道さが人のカッコよさなんじゃねーの」と若干思っているんです。そこをじっくり描けたら面白いかなって考えたのが始まりですね。

「Dr.STONE」より。千空は自らが石化してしまった後、何千年もの間、ひたすら時間を数えて過ごしていた。

及川 第1話の時点で千空が何千年もの間、ひたすら時間を数えて過ごすという描写がありましたけど、地道な作業ですよね。

稲垣 無意味かもしれないけど延々とやるっていうのを体現したのが第1話のあのシーンなんです。あのシーンから始まって「なんでそういうシチュエーションになったのか」とかいろいろ考えていった感じです。

──先ほど及川先生は「マンモスとかサーベルタイガーが出てくる作品を作る」という部分からタイムスリップものにすることにしたとおっしゃっていましたが、ほかにどのような肉付けをしたんですか?

及川 まず原始時代で映える主人公はどんなキャラクターかなと考えて。サバイバル能力に長けているのは必須だと思って、「どうしたらサバイバル能力に長けていても自然に見えるかな」「山で電化製品とか便利なものから離れて生活をしていたらそうなるかも」「じゃあ生まれつきの体質で電化製品に近づくとそれを動かなくさせてしまうキャラにしよう」と膨らませていきました。

村瀬 主人公の新太のサバイバル能力を生かすために、第1話で世界規模の停電を起こしたりね。

及川 そうですね。そういう感じで肉付けしていきました。あと自分がサバイバルものが好きだったということもあるので、ライターやマッチなしで火をつけるにはどうするのか、水はどうやって手に入れればいいのか、みたいな実生活でも使える知識も入れたいなと思っています。

──火をつけるというシーンは「アラタプライマル」にも「Dr.STONE」にも登場する、ある意味サバイバルをするうえでは欠かせない要素ですが、それぞれ火をつけるためのアプローチの仕方も違いますね。

「アラタプライマル」より。木を薄く削りフェザースティックを作って火をつける新太。 「Dr.STONE」より。弓切り式の火起こし器を作って火をつける千空。

稲垣 火って人類が最初に手に入れる武器としては象徴的な第一歩ですからね。「Dr.STONE」では弓切り式っていう棒と紐を使った有名な方法で火を起こしてるんです。でもこのマンガでは火を持たないキャラクターが、人類が進歩したというシンボルのひとつである火を手にするまでの過程が重要であって、実際のつけ方とか技術に関しては省略しているんですよ。一方で「アラタプライマル」は細かくテクニックが描かれていて、その違いは面白かったですし、「アラタプライマル」の火のつけ方は自分でもできそうだなっていう感じがして具体的でよかったです。

原作:及川大輔 漫画:村瀬克俊「アラタプライマル①」
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人類を危機から救う方法は原始の時代にあります──。2027年。世界同時大停電発生の後、現代から消えたとある街の一部は、原始時代へタイムスリップしていた──!! 漂流者達に容赦なく迫る太古の自然や動物、生物……。危機を奪回する鍵を握るのは1人の少年・皆素新太(みなもとあらた)だった!? 謎が謎を呼ぶ原始サバイバルミステリー、開幕!!

原作:稲垣理一郎 作画:Boichi「Dr.STONE⑩」
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氷月の裏切りを受け、千空と司は共闘を決意! 奇跡のタッグで氷月に立ち向かう!! 一方、石化現象の謎を突き止めようと世界進出を企てる千空たち。大海原へ出るには船と船長が必要で!? いざ大航海時代へ!!

及川大輔(オイカワダイスケ)
及川大輔
岩手県出身。2007年、集英社が主催する新人マンガ家の登竜門・第73回手塚賞に準入選。「トリコ」のアシスタントを経て、2019年に少年ジャンプ+にて「アラタプライマル」で原作者として連載デビュー。
村瀬克俊(ムラセカツトシ)
村瀬克俊
神奈川県出身。週刊少年ジャンプにて「K.O.SEN」「DOIS SOL」、週刊ヤングジャンプ(ともに集英社)にて「モングレル」、少年ジャンプ+にて「カラダ探し」「カラダ探し解」を連載。「カラダ探し」シリーズは累計250万部を突破するヒット作となった。2019年より少年ジャンプ+にて「アラタプライマル」を連載する。
稲垣理一郎(イナガキリイチロウ)
稲垣理一郎
1976年生まれ。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)および同誌の増刊にて読切を発表した後、週刊少年ジャンプ(集英社)の主催による第7回ストーリーキングのネーム部門に「アイシールド21」を投稿し同賞史上初となる大賞を受賞する。村田雄介を作画に迎え週刊少年ジャンプにて2002年から2009年まで連載された同作は、アニメ化やゲーム化などさまざまなメディア展開が行われるヒット作となった。2017年からはBoichi作画による「Dr.STONE」を週刊少年ジャンプにて連載しており、第64回小学館漫画賞の少年向け部門を受賞。同作は2019年7月よりTVアニメが放送されることも決定している。