私はマリアさんになります。そしてシェルターで死にます!
──この取材の前に、オープニングテーマを手がけた天月さんにもお話を伺いまして。「majikoさんがこういうストレートな曲を作ると、優しさとか感情の揺れ動く部分がきれいに伝わってくる」と、エンディングテーマ「WISH」を絶賛されていました。
majiko ありがとうございます。オープニングも、天月さんの曲と合っていてめっちゃカッコよかったですね。イントロから隕石が降ってきて「うわー!」みたいな感じで(笑)。
──majikoさんが「7SEEDS」という作品を知ったのはいつ頃ですか?
majiko 私もオファーをいただいてから全部読みました。個人的に好きなエピソードがあって、地下シェルター・龍宮でマリアがみんなを冷凍庫に導くところです。それから夏のAチームの過去編。すごく残酷な話なんですけど、好きというか、すごく泣きました。あとは新巻さんのワンちゃんたちが、新巻さんを救うために命を投げ捨てるところ。あそこはもうガチ泣きしましたよ。
高橋 天月さんも、新巻のエピソードを挙げていましたね。
majiko そうなんですか、うれしい(笑)。あのシーンは、ペットを飼っている人なら本当に心をえぐられますよ。
──majikoさんは「7SEEDS」を読んで「これまで読んだマンガの中で3本の指に入る」とおっしゃっていたそうですね。
majiko あらすじを読んだ段階で、めっちゃ面白そうだと思いました。選ばれた人たちが人類滅亡後の世界を生きるっていう設定だけで、もうズキュンときちゃいました。春、夏A、夏B、秋、冬とそれぞれのチームにいろいろな過去があって、さまざまな悲しみがあって、でも未来に向かっていくにつれてどんどん謎が解けていく。過酷な世界に送り込まれて最初は困惑しているけれど、本当はみんな愛されていたんだな、というのがわかってきて、本当に面白いマンガだと思います。めちゃくちゃ好きなので、会う人みんなにオススメしています!
──歌手としては、やはりマリアにシンパシーを感じますか?
majiko 原作を読んだ段階でマリアにはすごく共感しました。「私は歌のプロだから」って言うじゃないですか。そうだよなあ、と勇気づけられました。最後に歌でみんなを誘導していくんですけど、私もあの状況に置かれたら、絶対にマリアと同じことをします!
──先ほど天月さんに「自分が入るならどのチームがいいか」という質問をしたのですが、majikoさんは……。
majiko 私は未来には行かず龍宮でマリアさんになります。そしてシェルターで死にます!
世界がなくなっても、花と嵐のように好きな人がそばにいてくれさえすれば
──監督はエンディングテーマ曲について、どのようなオーダーを?
高橋 天月さんとの対談でもお話しましたが、まず男性歌手と女性歌手をOP・EDで使いたいという狙いがあって。それでなんとなくのイメージですけど、男性歌手には嵐の気持ちを、女性歌手には花の気持ちを仮託するような、そういったニュアンスが出るといいかなと思っていました。
──曲を作るにあたり、原作からインスピレーションを受けた部分はありましたか?
majiko チームの名前が四季から名づけられているので、たとえば季語を入れるとか、あるいは最後に生まれる希望の象徴として「未来」という言葉を入れようかなとか、そういった原作の要素をちりばめられないかと思って歌詞を書きました。でも、あざとくならないようにはしよう、と。
──その「あざとくない」程度の案配は、難しくありませんでしたか?
majiko すっごく難しかったです。やっぱり個人的に大好きな作品なので、全部の要素を入れたくなっちゃうんですよ。でも、ピントを絞りに絞って、花と嵐の関係性を核にして歌詞を書きました。あの歌詞は、花と嵐がお互いに生きていることを知って、でもすれ違ってなかなか出会えなかった状況から、ようやく出会ったところをイメージしています。
高橋 お話の中でなかなか出会えないじゃないですか、この2人。
majiko 本当ですよね。
高橋 現在配信されているアニメ第12話までの中では、まだ花と嵐は会うことができていないんですよ。だから物語の中で会えない分、2人の関係性を歌でフォローしてもらえたら、作品としての厚みも出るんじゃないかとは思っていました。
majiko 例えば私に恋人がいたとして、相手が死んでいるかもしれないという状況を考えたら、すっごく怖かったです。あんなに好きだった人がもういないなんて……みたいな気持ち。当たり前にあった日常がなくなってしまう絶望と、愛している人がいなくなる絶望。その両方の絶望を抱え込むなんて、とても耐えられない。そういう怖さは個人的にも共感できる部分でした。だからエンディングテーマ曲「WISH」には「世界がなくなっても きみがいてくれるなら 怖くはないから 暗闇でも手を繋いで」っていう歌詞を書いたんですけど、本当にそれがすべてじゃないかと思います。何もない絶望的な状況でも花がいれば大丈夫、嵐がいれば大丈夫、って。「それさえあれば大丈夫」といった、希望とか願いみたいなものを込めました。
──監督は、エンディングテーマ曲があがってきたときに、どのような感想を持たれましたか?
高橋 「7SEEDS」ではいろいろなことが起こるけれど、最後には希望とか未来に辿り着く。希望があるから、未来に向かってがんばって行こうよ、というメッセージが伝わってきますからね。そういったところを感じてもらって、汲み取ってもらえたんじゃないかと思います。アニメ本編は内容をかなり詰め込んでいるので、怒濤の展開が続くんですよね。そこでこのエンディングテーマ曲を聞くと、ホッとするというか、浄化されますね。
majiko よかったです。それを願って書いたので。原作の内容がシビアなので、せめてエンディングくらいはほっとしてほしいなと思っていました(笑)。素晴らしいアニメーションを付けていただいて、本当に感動しました。
次のページ »
もう蟬丸大好き!
アニメ「7SEEDS」
- 原作
-
田村由美「7SEEDS」(小学館「flowersフラワーコミックスα」刊)
- スタッフ / キャスト
-
監督:高橋幸雄
シリーズ構成:待田堂子
キャラクターデザイン:佐藤陽子
アニメーション制作:GONZO
- 田村由美「7SEEDS」
-
フラワーコミックスアルファ(小学館)より全35巻+外伝1巻が発売中。
- majiko「寂しい人が一番偉いんだ」
- 発売中 / UNIVERSAL MUSIC
-
初回限定盤A [CD+DVD]
税込4500円 / UICZ-9119 -
初回限定盤B [CD 2枚組]
税込3850円 / UICZ-9120~1 -
通常盤 [CD]
税込3000円 / UICZ-4453
- CD収録曲
-
DISC 1
- エミリーと15の約束[作詞・作曲:カンザキイオリ / 編曲:大西省吾]
- ワンダーランド[作詞・作曲:majiko / 編曲:majiko、木下哲]
- MONSTER PARTY[作詞・作曲:majiko / 編曲:majiko、木下哲、菅原一樹]
- 狂おしいほど僕には美しい[作詞:Hiro-a-key / 作詞・作曲:Michael Kaneko]
- パラノイア[作詞・作曲:majiko / 編曲:majiko、木下哲]
- ひび割れた世界[作詞・作曲:小倉しんこう / 編曲:横山裕章]
- レイトショー [作詞・作曲・編曲:みきとP]
- 春、恋桜。[作詞・作曲:majiko / 編曲:横山裕章]
- ミミズ [作詞・作曲:majiko / 編曲:majiko、木下哲]
- マッシュルーム[作詞:蝶々P / 作曲:majiko / 編曲:NAOTO]
- グラマー[作詞・作曲:haruka nakamura / 編曲:haruka nakamura、majiko、木下哲]
- WISH[作詞:majiko / 作曲・編曲:横山裕章]
DISC 2(初回限定盤Bのみ)
- morrow - Acoustic Version
- Learn to Fly - Acoustic Version
- ノクチルカの夜 - Acoustic Version
- ひび割れた世界 - Acoustic Version
- 光の種 - Acoustic Version
- Avenir - Acoustic Version
- 君に最後の口づけを - Acoustic Version
- 初回限定盤A DVD収録内容
-
[LIVE]
- ミミズ
- ロキ
- アイロニ
- AM
- ひび割れた世界
- 心做し
- 命に嫌われている。
- パラノイア
- 世田谷ナイトサファリ
- アマデウス
- 狂おしいほど僕には美しい
- WISH
- HUSH
- 声
[MV]
- 声
- ひび割れた世界
- パラノイア
- 狂おしいほど僕には美しい
- 春、恋桜。
- majiko(マジコ)
- 2010年に“歌ってみた”動画を初投稿し「まじ娘」名義で歌い手としての活動をスタートさせる。2015年6月には東京・東京キネマ倶楽部にて初のワンマンライブ「Contrast release party」を開催。2016年12月にmajikoへと名義を変更し、2017年2月にメジャーデビューミニアルバム「CLOUD 7」をポニーキャニオンより発表。2018年2月にはユニバーサル ミュージックに移籍し、新作ミニアルバム「AUBE」をリリース。2019年6月にメジャー1stフルアルバム「寂しい人が一番偉いんだ」を発売した。8月から全国8カ所にてアコースティックツアーを開催、12月15日には恵比寿LIQUIDROOMでの公演を控えている。
- 高橋幸雄(タカハシユキオ)
- アニメ監督、演出家。主な監督作に「ラストエグザイル ‐銀翼のファム‐ Over The Wishes」「犬とハサミは使いよう」など。