文明が滅んでも、心に大切にしまっておけば音楽は残せるんだ

──天月さんはこれまでにもドラマやアニメの主題歌を手がけていらっしゃいますが、ご自身の曲を作る際と作品ありきで作る場合の違いはありますか？

天月　特になくて、けっこう一緒ですかね。曲を作るときはテーマとかイメージ映像みたいなものを自分なりに思い浮かべて、「この曲は何色かな」とか「この曲を歌っているのはどんな場面かな」と考えるんですね。原作がある場合は、そこに当てはめなきゃいけない大変さはありますけど、むしろ世界観が決まっているので作りやすいところもあります。

──曲を色でイメージする発想は面白いですね。

天月　頭の中に一枚絵みたいなのがあって、そのイメージみたいな感じですかね。「7SEEDS」で僕が最初にイメージしたのは、海とか自然の部分です。青とか緑だったんですよ。そこに対して、絶望との向き合いだったので黒も出てきた。でも、どの色にも暖色寄りの色が混ざっていて、明るい方向に向かっていく感覚はあります。

──同じように、監督も作品を色で例えてみるとどうでしょうか。

高橋　えっ僕も？ ……うーん、青、ですかね？ 文明は失われたけど、残された地球環境の中で生きていかなきゃいけないというところで、最後に残るのは自然なので。もちろん今とは自然の形が変わっちゃって、巨大昆虫とかもいますけどね。自然の中でも、最後に残るのは海なんだろうな、と。

──今までの曲とは違う、「Ark」ならではのアプローチはありましたか？

天月　今まで僕はポップな曲を中心にやってきて、もちろんカッコいい曲もやってきましたけど、今回の曲は弦が中心になっていて。広大さというか、スケール感を出すことを意識しました。崖にポツンと取り残されている感じを出すのにはどうすればいいのかな、と。そういうイメージをサウンドで一気にバッと伝えることを、すごく考えましたね。

──本作ではコウモリを音叉で撃退したり、パイプオルガンを弾いたり、音楽に関するエピソードも多いですよね。

高橋　そうですね。原作ではクラシックの楽曲が出てきたり、サブタイトルに邦楽やJ-POPのタイトルが使われていたりします。アニメ本編でクラシックが流れるシーンは、既存のものを使っているのではなく、この作品用に収録してもらいました。

天月　音楽って形がないものなので、文明が滅んだあとの世界でも、自分たちの心に大切にしまっておけば、残すことができるんだと、そういうところを描いてくれたのがすごく素敵だと思いました。

自分が入るなら、どのチームがいい？

──これから「7SEEDS」を観る人に、注目してもらいたい点はありますか？ 天月さんは、お気に入りのキャラクターは新巻だとおっしゃいましたが。

天月　僕はやっぱり、新巻さんがいる冬のチームに注目してほしいですね。吹雪が虎のような獣に襲われ、美鶴さんは踊りながら亡くなって、そこから15年も1人で生きていかなきゃいけないじゃないですか。ほかのチームより圧倒的に過酷だし、いちばん絶望的ですよ。もう1人の主人公として見てほしいな、と思います。

──監督はいかがですか？

高橋　僕は全体を俯瞰で見ているので「このキャラクターが」というのは難しいんですけど、夏のBチームの岩清水ナツは主人公的な存在なので、がんばってほしいという気持ちは持っちゃいますね。最初は本当にダメダメだったので、そこからどう成長していくかを見届けたい。親目線に近いのかもしれません（笑）。

──おふたりは、もしご自分が入るとしたらどのチームがいいですか？

天月　えーっ……村を作って生活していた秋のチームだったら、幸せになれるんじゃないんですか？ 結局、住む場所にしても生活にしても、ルーティーンを作っていかなきゃいけないし、合理的な秋チームがいるから全体が機能する部分もあったんじゃないかと思います。できる人がいると助かる、というだけの話なのですが。お蘭さんみたいにほかの人の尻を叩いてくれる人がいたほうがサバイバルには向いてますよね（笑）。

高橋　僕は夏のBチームかなあ。楽しそうでいいですよね。まあ、入れても年齢的にガイド役かもしれませんけど。

──最後に読者へのメッセージをお願いします。

天月　確実に読んでよかった、観て面白かったと思える作品です。本当に素晴らしい作品に巡り合わせてもらいました。一貫して登場人物たちの心持ちを描いていて、誰にでも刺さる場面がたくさんあるし、自分の好きな言葉も見つけてもらえたらいいなと思います。

高橋　キャラクターの世界観や世界の広さをなるべく表現したいと思っていました。そのあたりに共感して、いろいろな感情を持っていただけたらうれしいです。

──ちなみに、天月さんはmajikoさんのエンディングテーマはお聞きになりましたか？

天月　すごく素敵なエンディングですよね。もともと僕はmajikoさんはすごく説得力のあるアーティストさんだと思っていて、ライブで歌を聴いてもすごく圧倒されます。そういう人がこういうストレートな曲を作ると、優しさとか感情の揺れ動く部分がきれいに伝わってくるんだなと思いました。

──この特集記事はインタビュー2本立てで、このあとmajikoさんにもお話を伺いますので。今の感想も、お伝えしておきますね。

天月　ぜひ（笑）。