いっぱい詰まった私の思いにみんなが振り回された卒業制作

──この春で大学ご卒業ですよね？

無事単位を取りきったので“ご卒業”します（笑）。

──おめでとうございます！

ありがとうございます！ 4月から新社会人です（笑）。

──今回のシングル「ビジュメニア」ってまさに“新社会人”の名刺代わりの1枚になりそうですね。

それか卒業制作って感じですね。ちょうど単位を取りきった頃にレコーディングしていたので。

──まずはその“卒業制作”の制作過程を聞かせてください。悠木さんは新居昭乃さんと対談したとき（参照：悠木碧「メリバ」インタビュー with 新居昭乃）、新居さんとの作詞の打ち合わせに「『咀嚼されてグチャグチャ』じゃなくて『パクリ』」というメモを持っていったと言っていて。

あはははは、持っていきました持っていきました（笑）。新居さんに猫に飲まれる女の子のイメージの歌（「ポポン...ポン！」）を作っていただくとき、猫に噛まれると女の子がスプラッターなことになっちゃうので丸飲みしてくださいってお願いするために。

──そして、そうやって自らの手で緻密に物語やキャラクターを設計した上で、名うてのクリエイターと共作することでパーソナルな世界観を一般性が高くてハイクオリティな音楽に昇華させたかったとも言っていた。

そうですね。

──で、実際新居さんたちと作り上げた「メリバ」はそれを実現した快作だと思うんですけど「ビジュメニア」の表題曲はアニメ「世界征服～謀略のズヴィズダー～」のエンディングテーマ。たとえ「悠木碧」名義であってもパーソナルな世界観だけを楽曲に投影するわけにはいかないですよね。

でも最終的には私の強すぎるこだわりにみんながメチャメチャ振り回される感じになっていた気がします（笑）。

──そこが不思議だったんです。確かに「ビジュメニア」はタイアップものでありながら「メリバ」の進化形になっている。なんでちゃんと“悠木碧の音”になったんでしょう？

うーん……。「プティパ」「メリバ」っていう2枚を作ったことでスタッフさんが私のどストライクを理解してくださったんだな、という気はしています。「ビジュメニア」は最初作家さんの名前を聞かされていない状態でデモを聴いたんですけど、その瞬間「あっ、これ好きです」って言ってましたから。デモを作ったのがデビューアルバムの「プティパ」に入っている「回転木馬としっぽのうた」と「Night Parade.」を書いてくれたbermei.inazawaさんだったことはあとから知りました。

──スタッフは悠木さんには絶対にbermeiさんの曲がハマることを知っていたし、当のbermeiさんもドンピシャのトラックを一発で作り上げるくらい、悠木さんの趣味嗜好を知ってくれていた、と。

そういう感じなんだと思います。私はぼんやりとした輪郭を伝えただけ。「世界征服～」のヒロインのヴィニエイラ様には純白の少女っていう印象があって私のテーマカラーも白なので「白をイメージした曲にしたい」ということとか、ヴィニエイラ様のキャッチフレーズである「最強幼女」っていう単語が気になっていることとか、そういうすごくボヤーっとした話をさせてもらっただけですし。「最強」っていう言葉と「幼女」っていう言葉の並びは超シュールなんだけど、ヴィニエイラ様はホントにすごい強くてかわいいからみんな従っちゃう。しかもみんなと「世界征服」を目指している。その女王様気質が面白いってお話をしたら、bermeiさんがすごく素敵な曲を書いてくれてました（笑）。

「最強幼女」と悠木碧をつなぐもの

──出発点からして「悠木碧のシングル」というよりも「『世界征服～』のエンディングテーマ」であることに力点を置いた楽曲だったんですか？

最初から「絶対にアニメに即して作ってください」ってお願いしていました。「最強幼女」っていう言葉や「世界征服～」という作品そのものの裏にある、子供の純粋さに対する恐怖とか、純粋ゆえの残酷さやシニカルさって「プティパ」や「メリバ」と重なるところがあるなと思っていたので。「世界征服～」にガーッと寄せて曲や詞を作っていただいたあと、クリエイターさんやスタッフさんと「ここをこうしたらもっとかわいいと思うんですよ」って相談していけば大丈夫。悠木碧の世界と「世界征服～」の世界がちゃんと折り合うだろう、って。

──そして実際“大丈夫”な楽曲を作り上げた。

皆さん、「世界征服～」の世界観と悠木碧の世界観についてすごく考えてくれた上で「ねえねえ、こういうのどうかな？」っていうアイデアをいっぱい持ってきてくださって。皆さんのひらめきを集めた結果「悠木碧の言葉と音で『世界征服～』の世界を表現してみました」っていう曲になったんだと思ってます。