ナタリー PowerPush - 悠木碧
“サドな幼女”と“にゃーにゃー”の世界
黄色い気持ちと、青い気持ちの話
──レコーディングはいかがでした?
私とディレクターさんとで「今すごく黄色っぽく歌ってみたんですけど、次は青っぽく歌ってみます」「ああ、なるほど確かに青っぽいかも。じゃあさっきの黄色と今の青を混ぜて緑っぽく歌えます?」みたいな話をしてました(笑)。
──へっ!?
「あっ、緑ですか。わかりました。じゃあ青から黄色にグラデーションかけてみますね」みたいな意味のわからない話を(笑)。
──あっ、ご本人的にも「意味のわからない話」なんですか。青はこういう歌い方で、黄色はこういう歌い方と明確に言語化はできない?
なんか黄色はハッピーで、ブルーはちょっとダークというか、含みがある感じかなあ……。
──一般的な色のイメージとは違いますね。ブルーっていうと切なさとか涼しさをイメージする人も多いと思うんですけど。
だからこの話をするときはいっつも「これ、絶対意味わかってもらえてないよな? 私はわかってるけど」って気がしてます(笑)。でも私自身は感情を黄色から青にグラデーションさせることで、ハッピーなところから物語が始まるんだけど、実はハッピーじゃないエンディングに着地させられるし、逆に頭をブルーで最後を黄色にすれば前向きな歌を歌えるはずだと思っていて。これは芝居をしているときもそうで、人の感情をなんとなく色で見てるんです。私のキャラクターの感情はこのシーンではこの色なんだけど、だんだんあの色に移っているなって。で、そのいろんな色を混ぜていくような気持ちでお芝居をしているんですけど、歌うときもそのやり方を変えちゃいけないと思っていて。声優・悠木碧が歌う以上、表現方法はお芝居と同じであるべきなんじゃないかって。
──新居さんとの対談のときにも言ってましたもんね。演じるように歌えることが声優である自分の特質であり、それこそが声優が歌う意味なんじゃないか、って。
はい。ビジュメニアっていう子の感情の波をちゃんと表現することと、ストーリーや映像が頭に浮かぶように歌うことが私の仕事なんだろうなと思ってます。
深緑な気持ちと、抜けるように白い気持ちの話
──結果「ビジュメニア」はどんな色に落ち着きました?
Aメロは深緑から始まって、サビは白衣みたいな抜けるような白。見ていると瞳孔が開いちゃうような白ってあるじゃないですか。ブラックライトを当てるとバッと光る白というか。深緑がだんだんそういう白になっていくイメージで歌ってます。
──深緑って悠木さん的にはどんな色なんですか?
まさに青と緑の中間。ハッピーでもないけど、含みもない。警戒というか、様子見の色です。しかも深緑なので、ちょっと慎重になってる感じかなあ。
──だからAメロの最初、ビジュメニアさんは1人ひっそり「星に願いをかけ」ている?
そういう感じですね。で、サビの抜けるような白は赤裸々な色。「ホントはこの気持ちを表に出してはいけないんだけど、ちょっとだけ教えてあげるね」っていう色で。
──まさに「この世界中の 綺麗なものを 集めてクルクル のぞき込む 私の夢を」カミングアウトしている色なんだ、と。
しかもその夢を「邪魔しないでちょうだい」って言っちゃうという(笑)。……というかこの話、大丈夫なんですかね? 自分自身でもちょっとそういう自覚はあるつもりなんですけど、オカシイ子だと思われてないですかね?
──面白いので大丈夫です!
ならよかったです(笑)。
猫はかわいいですから!
──そして2曲目の「くちひげ泡バルーン」はゲーム「モンスターハンター」シリーズのマスコットキャラ、猫のアイルーが主人公のアプリ「モンハン いつでもアイルーライフ」のテーマソング。で、トイミュージックテイストに仕上げている。
そうですね。
──ただ基本上モノはトイピアノやマリンバ、鉄琴、リコーダー、アコーディオンなんかで構成されているんだけど、突然やたらとゴージャズなオケヒットが鳴り響いて、リズムを構成しているのはド派手なシンセドラム。やっぱり「ファンタジックでかわいらしいんだけど、どこかヘン」な悠木さんの世界観をしっかり守ってます。
この曲については散々ワガママを言いまして……。
──どんなワガママを?
まずデモを聴かせていただいたあと「アイルーが自然の豊かな世界で暮らすゲームのテーマソングなので、もっと森の妖精っぽくしてください」っていうメッセージと一緒に、あるゲームに出てくるかわいらしい森の画像をお渡しして。曲がある程度形になったら今度は「アイルーが森の中でノンキに暮らしているイメージの曲にしたいのでお散歩感を出してください」と。
──作曲の佐々倉有吾さん、困ってませんでした?(笑)
「もっとお散歩で」「いや、もっともっとお散歩で!」ってお願いしてたら「お散歩感ってなんだよ!」って笑われました(笑)。あと「もっと気まぐれに!」「あっ、このアレンジの感じ、すごく気まぐれです!」みたいなことも言ってた気が……。でもホントに「アイルーライフ」っぽくて耳に残る曲を作っていただけたので、歌詞ももうガッツリとユルく。悠木碧の一番好きなユルいもので固めてみようってことになりました。
──そういうオーダーをしたら悠木楽曲ではおなじみの作詞家、中野愛子さんが「ねこあしのチェスト」「たてじまのパンツ」「ベロアのマント」「焼きたてのスコーンとアプリコットジャム」を集めてきてくれた?
絶妙にユルいものばかりを揃えていただきました(笑)。タイトルも「それ、なんだろう?」って感じですし。
──歌ってるご本人にもわかりませんか(笑)。
中野さんに「『くちひげ泡バルーン』ってどうですか?」って聞かれたので「あっ、かわいいと思います!」「『ルーン』が超かわいい!」って即答したらタイトルになってました(笑)。
──これまで悠木さんは愛猫に飲まれちゃう女の子の物語を歌うことで愛する対象と気持ちがすれ違ってしまう寂しさを表現したりしていましたよね。でも今回はそういうメッセージ性は一切ナシ?
タメになることなんかなんにも言わなくていいかな、と(笑)。猫がかわいいって歌えればそれでいいじゃん。猫はかわいいんだから、って。
──強いて言うならこの曲のメッセージは「猫がかわいい」だ、と。
はい! 猫はかわいいですから!
- ニューシングル「ビジュメニア」/ 2014年1月29日発売 / FlyingDog
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / VTZL-73
- 通常盤 [CD] 1260円 / VTCL-35173
-
収録曲
- ビジュメニア(テレビアニメ「世界征服~謀略のズヴィズダー~」エンディングテーマ)
- くちひげ泡バルーン(ゲーム「モンハン いつでもアイルーライフ」テーマソング)
- ビジュメニア without Aoi
- くちひげ泡バルーン without Aoi
- くちひげ泡バルーン お出かけサイズ
初回限定盤DVD 収録内容
- ビジュメニア(Music Video)
- ビジュメニア(Making Video)
初回限定盤・通常盤初回プレス特典
- イベント参加応募用シリアルナンバー(シングル発売記念イベントは2月16日に大阪、2月23日に東京にて実施)
- 「モンハン いつでもアイルーライフ」スペシャルアイテムダウンロード用シリアルナンバー
悠木碧(ゆうきあおい)
3月27日生まれ、千葉県出身の声優・歌手。4歳の頃から子役として活動し、2003年にテレビアニメ「キノの旅」で声優デビュー。2008年放送の「紅」では初のヒロインに抜擢され、その後さまざまな作品で主要キャラクターを演じる。2011年には「魔法少女まどか☆マギカ」の主人公、鹿目まどか役で大きく注目を集めた。またその一方で2012年3月に1st“プチ”アルバム「プティパ」を発表し、アーティストデビューも果たす。2013年2月には新居昭乃らを迎えた2nd“プチ”アルバム「メリバ」をリリースし、11月には神奈川・横浜アリーナでのアニソン系イベント「ANIMAX MUSIX 2013」に出演。そして2014年1月、表題曲がアニメ「世界征服~謀略のズヴィズダー~」のエンディングテーマに採用された1stシングル「ビジュメニア」を発表した。