ナタリー PowerPush - 悠木碧

“サドな幼女”と“にゃーにゃー”の世界

bermei.inazawaが魅せる「知らないバスに乗る不安」

──bermeiさんの曲のどんなところが“素敵”でした?

とにかく聴いたことがなかったところですね。

──確かにストレンジな楽曲ですよね。8分の6拍子を基調にしてはいるんだけど、Aメロはかなり複雑な複合拍子になっているし。

それがなんか不安にさせてくれて素敵なんです(笑)。この曲を歌っていると芽生える気持ちを、私は「知らない路線バスに乗ったときの不安感」って例えてるんですけど、知らないバスって「なんか全然目的地に着かない!」みたいな感じがするじゃないですか。

──居眠りしたり、音楽を聴いていたりして車内アナウンスを聞き逃すと、今走ってるところがまだ目的地の手前なのか、もう乗り過ごしちゃってるのかわからなくなって焦ったり。

それですそれです、その不安感です! そのみんな知ってるんだけど、でも漠然とした不安感を音で表現しているところがまず素敵で。しかもただ不安なだけじゃなくて、メロディはかわいいし、そのメロディが「Aメロやサビがどこかわからない」っていう抽象的なものじゃないところもすごくよくて。

──変拍子もいいところなんだけど、かわいらしいメロディラインがA→B→サビってスムーズに展開しているし、しかもダンサブルですよね。シンセがスカっぽい裏打ちのリズムを刻んだり、キックがときどき4つ打ちならぬ6つ打ちになったりして。

だから聴いたことがない曲だと思ったし、その不安なのにかわいくて踊れる感じが「世界征服~」っぽいなって思ってます。あと、ヘッドホンでガッツリ聴いてもらうとわかると思うんですけど、私、曲のいろんなところでメッチャささやいてるんですよ。それはbermeiさんが「ここでたぶんささやいたらすっごいかわいいと思うんですよ」って提案してくださったから入れたコーラスなんです。

──まさにみんなのアイデアが集まったからこそできた「不安なのにかわいくて踊れる」曲なんだ、と。

はい!

面倒くさくてサドな幼女「ビジュメニア」の誕生

──歌詞についてもディスカッションはあった?

まず最初別のタイトルだったんですけど「なんかかわいい単語を作ってください」って。

──またもボヤーっとしたオーダーを(笑)。

ボヤーっと投げてみました(笑)。それで作っていただいたのが「ビジュメニア」って単語なんです。

──じゃあタイトルに特に意味はない?

いえ。「プティパ」「メリバ」の楽曲もそうだったんですけど、今までの私の曲には1曲に1人ずつ主人公がいて、この曲の場合は「ビジュメニア」が主人公ですね。で、このビジュメニア氏は非常に高圧的な幼女でして。

──「世界征服~」のヴィニエイラ様とはまた別の幼女?

別の幼女です。彼女は白いものと透明でキラキラしたものを好むんですけど、それ以外の色は大っ嫌いなので、世界を全部白に塗ってしまいたくて。しかもその願いが叶って全部が白く染まったら、なんかすごくハッピーになったらしくて、今度は「そのキレイなものだけを集めて万華鏡を作れ」ってまた無理難題を笑いながら言ってのける。そんな幼女です(笑)。

──面倒くさい幼女ですねえ(笑)。

「プティパ」「メリバ」でも詞を書いていただいた藤林(聖子)さんに「白くてサドな女の子が主人公です」ってボヤーっとしたことをお伝えしたら、面倒くさくてサドな幼女が誕生してました(笑)。あと藤林さんには「猫を登場させるつもりなんですけど、どんな猫にしますか?」って聞かれたので「三毛猫はこの世界にいないので」っていうお話をして「えっ、三毛はいないの?」ってビックリされたりもしていて。

温室育ちの白猫とガテン系の三毛猫

──藤林さんとまったく同じ質問をさせていただきますけど、ビジュメニアさんの住む世界に三毛猫はいないんですか?

なんかリアルじゃないですか、三毛猫って。ガテン系というか。

──すみません。三毛猫が肉体労働しているイメージはあまり……。

あれっ!? 白猫、黒猫に比べて肉体労働感ないですか? 白はわりとボケっとしてると思うんですよ。大事に育てられている家猫というか。

──ああ、確かにカリカリの硬いエサじゃなくて、缶詰の軟らかいエサをもらってそうですね。

そういう軟らかいエサを食べて幸せに暮らしているのが白で、黒はおいしいものをもっと食べたいからっていろんなお家を転々としてはエサをもらってるイメージ。で、三毛はその黒がもらったエサを横からかっさらう。そういうたくましいのが三毛なんです(笑)。しかもそもそもビジュメニアって子は全部を白に染めたい幼女なので、彼女のファンタジーな世界に三毛はいないんです。

──だから黒猫もいない?

はい。それに黒猫って物語的にちょっと意味がありすぎる気がしますし。

──黒猫って不吉な動物扱いされたりもするからヘタに歌うと物語に色が付いちゃう?

そうなんです。その点、白猫ってちょっと神聖なんだか病的なんだかわからない感じがして、すごく好きなんです。

──そして1コーラス目のサビの頭で「白猫が あくびを」することになった。

あと黒猫の「く」からサビが始まるとちょっと音が強すぎる気もしていて。もっとふわふわした曲にしたかったので「Sから始まる音ってKよりもふわっとしてませんか?」ってお話をさせていただきました。

──藤林さんとのディスカッションはそんな感じ?

「魔法の呪文を入れてほしいです」っていうお願いと、「2コーラス目のAメロにはちょっとチマチマしてて、かわいいものを集めてください」っていうお願いもしました。そしたらサビの「シュテルン エストレーヤ スヴィズダー」っていう呪文を考えて、2コーラス目のAメロを「ケサランパサラン」とか「チェンバロの音色を リボンにしたいの」とかホントにチマチマしててかわいいもので固めてくださって。でも呪文も「音色を リボン」も意味はわからないじゃないですか。こういうなんか通じるんだけど、実は不思議な言葉遊びってホントに大好きなんです。

ニューシングル「ビジュメニア」/ 2014年1月29日発売 / FlyingDog
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / VTZL-73
通常盤 [CD] 1260円 / VTCL-35173
収録曲
  1. ビジュメニア(テレビアニメ「世界征服~謀略のズヴィズダー~」エンディングテーマ)
  2. くちひげ泡バルーン(ゲーム「モンハン いつでもアイルーライフ」テーマソング)
  3. ビジュメニア without Aoi
  4. くちひげ泡バルーン without Aoi
  5. くちひげ泡バルーン お出かけサイズ
初回限定盤DVD 収録内容
  • ビジュメニア(Music Video)
  • ビジュメニア(Making Video)
初回限定盤・通常盤初回プレス特典
  • イベント参加応募用シリアルナンバー(シングル発売記念イベントは2月16日に大阪、2月23日に東京にて実施)
  • 「モンハン いつでもアイルーライフ」スペシャルアイテムダウンロード用シリアルナンバー
悠木碧(ゆうきあおい)
悠木碧

3月27日生まれ、千葉県出身の声優・歌手。4歳の頃から子役として活動し、2003年にテレビアニメ「キノの旅」で声優デビュー。2008年放送の「紅」では初のヒロインに抜擢され、その後さまざまな作品で主要キャラクターを演じる。2011年には「魔法少女まどか☆マギカ」の主人公、鹿目まどか役で大きく注目を集めた。またその一方で2012年3月に1st“プチ”アルバム「プティパ」を発表し、アーティストデビューも果たす。2013年2月には新居昭乃らを迎えた2nd“プチ”アルバム「メリバ」をリリースし、11月には神奈川・横浜アリーナでのアニソン系イベント「ANIMAX MUSIX 2013」に出演。そして2014年1月、表題曲がアニメ「世界征服~謀略のズヴィズダー~」のエンディングテーマに採用された1stシングル「ビジュメニア」を発表した。