にゃーにゃーするの、いいと思います！

──そしてインスト2曲を挟んだ5曲目は「くちひげ泡バルーン」のショートバージョン「お出かけサイズ」なんですけど……。

問題作（笑）。

──ある意味（笑）。メインボーカルやコーラスはおろか、オリジナルバージョンでは楽器隊が弾いていたオブリガードすらも悠木さんが……。

にゃーにゃーしてみました（笑）。

──なぜにゃーにゃーしようと？

ディレクターさんが突然「にゃーにゃー言ったらすごくいいと思うんだよね」って言い出しまして。私も私で「にゃーにゃーするの、いいと思います！」って答えちゃったら「じゃあとりあえず、全部にゃーにゃーで歌ってみましょうか」ってことに（笑）。「モンハン」でのアイルーは立場的にペットの猫というか、人間であるハンターのお供なんですけど、「アイルーライフ」はアイルーが主人公で、その生活を追いかけるゲームだし……。

──にゃーにゃーするべきだろう、と。

「こんな悪ふざけできるタイミングはめったにないんだから、悪ふざけしとこう！」ってことで、プロが本気を出して悪ふざけするとこうなるんだっていう楽曲にしてみました（笑）。

──確かにこの曲の悠木さんって本気ですよね。実はこの曲のボーカルレコーディングが一番時間がかかったんじゃないか？っていう気がしますし。

そうなんですよ！ 一番低いにゃーから、一番高いにゃーまで、全部私が本当に歌っているので。何十回もにゃーにゃーしてますから。しかもディレクターさんの悪ふざけが次第にヒドくなっていったというか「三毛猫、白猫、黒猫で歌ってください」みたいな指示も飛び出すようになり……。

──あっ「くちひげ泡バルーン」の世界には三毛猫も黒猫もいるんですね。

大人の三毛猫もいました（笑）。「オッサンの三毛猫の声をください」っていう注文もありましたし。

──熟練の肉体労働系までいましたか（笑）。

「お出かけサイズ」にはほかにもいろんな猫が出てきますし、実はオリジナルの「くちひげ泡バルーン」にも白、黒、三毛の3匹は登場してるので、ぜひそれぞれのにゃーにゃーを聞きわけていただけたらな、と思ってます（笑）。

1曲の中にすべての色を塗り込む快楽

──“新社会人”になるにあたって抱負ってあります？

今までは学校もあったので「仕事に全力投球です！」っていう感じではなかっただけに、これからは新しいものをどんどん作っていきたいですね。

──「ビジュメニア」という超力作の“卒業制作”を仕上げたばかりなんだけど、気持ちはすでに新しい創作に向かっている？

時間が許すならいくらでもやりたいです。表現を職業にしていると1つアウトプットをするたびに本当にたくさんのフィードバックをいただけて。ファンの方のメッセージやネットの書き込みだったり、こういう取材中に聞かせてもらうお話だったり、そういう新しいインプットがあると次の作品のための素材がどんどん集まってきている気になって、すぐにアウトプットをしたくなるんです。

──「今、これをやりたい」っていうビジョンはあります？

ライブをやりたいのと、あとはまたシングルを作りたいです。悠木碧名義では「ビジュメニア」が初めてのシングルになるんですけど、作るのがメッチャ楽しかったので。アルバムっていろんな色の曲を重ね合わせることで曲ごとの色合いとはまた違う、アルバム全体の色を産み出せるレイヤー型だと思うんですけど、シングルはどちらかというとベタ塗り型。1曲勝負じゃないですか。

──「ビジュメニア」の場合、カップリングも抜群に面白いんだけど、それでもシングル盤って表題曲ありきのアイテムに見られがちではありますよね。

だからプチアルバムなら、収録曲それぞれの色がたとえ極端な色だったとしても、最終的に全曲の色を重ね合わせたとき、1つの私なりの色を出せればいいと思うんですけど、シングル曲の場合は、そのアルバムで使った色と同じくらいの数の色を1曲の中にバランスよく配合しなきゃ面白くない気がしていて。でもそういう調整をすることがすごく楽しかったんです。それに、2枚のプチアルバムと今回のシングルをリリースしたことで「この方にこういうお願いすれば、私の思いをちゃんと音や言葉にしてもらえるんだ」っていうことが少しわかってきたので、今ならやりたいことをより明確に皆さんに伝えられるかなあ、と思ったりもしてますし。

悠木碧新曲「隙間の歌」＆「ドライヤーの中の歌」

──「サドな幼女の世界征服宣言」と「猫かわいい」の次は皆さんに何を伝えましょう？

隙間の話を書きたいんですよね。

──「隙間」？

私、ちょっと開いてるドアとかがすごい苦手で。あの隙間には絶対何かいると思ってるので、その隙間の妖怪のことを歌いたいんです。

──猫がかわいいから猫の歌を歌い……。

隙間が怖いから隙間の歌を歌う（笑）。私、怖いはずなのに隙間があると絶対に見ちゃうんですよ。ということはたぶん、一周回って隙間のことが超好きなんだと思っていて。

──「好き」の反対は「嫌い」じゃなくて「無関心」ですもんね。好きになるにせよ、嫌うにせよ、関心を寄せているという意味では一緒だし。

なので隙間の歌を歌いたいです！ あと私、ドライヤーの中も超嫌いで……。

──吹き出し口の中ですか？ コイルみたいなのがいっぱいある。

あれ、ずーっと見ていたことってあります？

──あれは覗くものじゃなくて頭にかざすものなので、ありません！（笑）

あれが熱せられていくさまはぜひ見てみてください。超怖いですよ、マジで。

──了解です（笑）。その隙間の歌もドライヤーの歌も自分で作詞はしない。また腕のあるクリエイターさんと共作するんですよね？

言葉を選ぶ天才の方に歌にしていただいたほうが、隙間の妖怪の存在を信じてない人や、ドライヤーを覗いたことのない人にも、ちゃんと私の気持ちを届けられると思ってます。それに私が感情の赴くままに隙間やドライヤーのことを歌うとホントに怖い歌になっちゃう気がしていて……。それはそれで隙間やドライヤーがちょっとかわいそうですし（笑）。