音楽ナタリー Power Push - 植田真梨恵

覚悟を決めた「スペクタクル」

植田真梨恵が1月20日にニューシングル「スペクタクル」をリリースする。

2016年第1弾シングルとなる今作は、「向かい風でも歩き続けよう」という力強いメッセージが込められた軽快なロックナンバー。カップリングには「カレンダーの13月」「ソロジー」という2つのバラードが収められる。メジャー1stアルバムの発売、コンセプトの異なる4本のツアーの成功、夏フェスへの出演など充実の2015年を過ごした彼女の口から語られたのは、意外にも「もうポジティブな曲ができないと思った」という言葉だった。彼女はいかにしてその境地を抜け出し「スペクタクル」を完成させたのか。今作に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 押尾健太郎

 
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あ、またネガティブだった

──2016年第1弾シングルの「スペクタクル」ですが、歌詞の冒頭で「それでも 信じる それだけのことで」と歌うなど、今まで以上にメッセージがストレートな印象を受けました。

植田真梨恵

今回はただただシンプルに思いをつづっていますね。秋頃からツアーと並行してちょこちょこ楽曲作りを始めていて、その流れの中でできた曲なんです。そのときの自分の気分とも連動していたんだと思うんですけど、この曲の前にできていたのがわりと暗めのトーンの曲ばっかりで。ただ暗いだけの曲じゃなくて、もうちょっと上を向いた曲が書けないかなと思っていたときにようやくできた曲ですね。

──その頃はわりと気分が沈みがちだった?

そうですね。日々生きていく中で、家族のこと、友達のこと、自分自身のこととかいろいろあって。本当にめまぐるしく毎日が変化する中で揉まれていたんですよ。そういう時期に、それでも信じるしかないなと思って書き始めた曲なので、ポツポツと言葉をつづるような感覚で作り始めました。

──いろいろと揉まれる中でも「スペクタクル」のような前を向いた曲ができたきっかけはあったんですか?

いやー……もうできないと思ったんです、ポジティブな歌が。曲ができたと思ったら「ネガティブだ」「あ、またネガティブだった」の連続で。自分自身がヘコんでるときは曲もネガティブなものしかできないんですよね。だからすごく困ってしまって。私はメジャーデビューしてからずっと、曲を聴いた人に元気になってもらいたいと言い続けてきたのに……って。結局、時が経つにつれて「いい加減うだうだ悩むのにも飽きたな」っていう気持ちに少しずつなってきて、それでようやく上を向けたのかなと思います。「スペクタクル」も最初はどういう作品になるか全然わからなかったんですけど、できてみたら思いのほか明るい曲になったという感じですね。

──とことん沈んだあと、そこから自然に上がっていったと。

全部を受け入れていくしかないなという思いが芽生えたんですよね。自分の中で余裕がないときはいろいろと手放してしまいたくなるんですけど、そうではなくて、とにかく変化を受け入れて進んでいくしかないとふと思ったときに、やっと前向きなテンションになって曲が書けましたね。

──そのときの心情が「それでも 信じる それだけ」という言葉に現れているんですね。

その通りです。

歌はおまじないであり呪い

──2015年にリリースした作品は、1stアルバム「はなしはそれからだ」もシングル「わかんないのはいやだ」も非常にポジティブな雰囲気でしたよね。今回の「スペクタクル」も前向きなメッセージが詰まった楽曲で。逆に影のある曲を書きたくはならないのかな?と思っていたんですが、実際は書いていたんですね。

書いてたんです。

──そういうトーンの暗い曲をリリースしようとは思わない?

植田真梨恵

リリースしようとも思ったんですよ。トーンが暗くてもそれはそれでそのときの自分だし、私自身の情念がしっかりと詰まっていて、曲のパワーが強い作品だと思ったので。そういうのもありかなと思ったんですけど、作っていくうちに「スペクタクル」が生まれて、タイミングとか、今、届けたいものとか、いろいろ考えて、今はこっちにしようと思って変更しました。もちろん、ゆくゆくはそういう影のある曲もリリースしていくと思います。

──情念が詰まった曲というのも気になりますね。植田さんは歌っていると歌詞に感情が引っ張られる感覚というのはありますか?

歌っておまじないのようであって、呪いのようでもあって。ものすごくパワーが宿っているものだと思うんですよね。なので歌っているとどうしても気持ちが引っ張られるというのはあります。だからこそ自分自身のソウルがきちんと込められたものを作っていきたいですね。

──それはプラスの感情にしてもマイナスの感情にしても。

そうです。

──今は聴いた人に前向きになってもらいたい気持ちが強いというわけですよね。それで「スペクタクル」をリリースすることに決めたと。

はい、今は後味としてプラスの感情になるものがいいなと。ただ、前向きにと言ってはいるものの、実際にこの「スペクタクル」で描きたいのは、なるべく五分五分の状態なんです。歌詞の「雷鳴が響く」「海が割れる」「道ができる」とか、いいこととも悪いこととも言い切れないですよね? 私はそういうふうに人生を捉えているので。

──確かにどちらとも言えないですね。ただこの曲では、「雷鳴が響いたり海が割れたりいろいろあるけど歩いていく」という覚悟を歌っていますよね。

うん、まさしくそういうことです。それでも歩いていこうって。

ニューシングル「スペクタクル」 / 2016年1月20日発売 / GIZA studio
初回限定盤 [CD+DVD] / 2000円 / GZCA-4144
通常盤 [CD] / 1296円 / GZCA-4145
CD収録曲
  1. スペクタクル
  2. カレンダーの13月
  3. ソロジー
  4. スペクタクル -off vo.-
  5. カレンダーの13月 -off vo.-
初回限定盤DVD収録内容
「植田真梨恵LIVE OF LAZWARD PIANO -青い廃墟-」2015.1.18 BIGCAT公演
  1. a girl
  2. 壊して
  3. 心と体
  4. 優しい悪魔
  5. センチメンタリズム
  6. ハルシネーション
  7. 朝焼けの番人
ライブ情報
植田真梨恵Live of Lazward Piano "Old-fashioned."
2016年1月16日(土)福岡県 Gate's 7
2016年1月30日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
2016年2月5日(金)北海道 札幌KRAPS HALL
2016年2月7日(日)宮城県 retro Back Page
2016年2月11日(木・祝)大阪府 大阪市中央公会堂 中集会室
2016年2月13日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
植田真梨恵Live of Lazward Piano "Old-fashioned." Special Edition!
2016年2月20日(土)神奈川県 Motion Blue yokohama
植田真梨恵(ウエダマリエ)

植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」発売後、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROでワンマンライブを成功させ、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」を発表し、東名阪と地元・福岡を回るツアーを実施した。2016年1月にメジャー4枚目となるシングル「スペクタクル」をリリース。