音楽ナタリー PowerPush -田村ゆかり

2015年第1弾はさわやか切ないラブソング

田村ゆかりが2015年第1弾となるニューシングル「好きだって言えなくて」を4月1日にリリースした。昨年末にリリースされた前作「あのね Love me Do」ではドキリとするような“素”の表情を見せたゆかりんだったが、本作では爽やかなラブソング、明るく軽快なポップチューン、スウィングジャズの要素を取り入れたアダルトなナンバー、しっとり聴かせるバラードと、全4曲でさまざまなゆかりんの歌声を楽しむことができる。インタビューではシングルの話題に加えて、今年2月に行われた東京・日本武道館公演の舞台裏や、4月から始まる全国ツアーについても話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃

武道館で見せた最高のデレ

田村ゆかり

──前回、田村さんがシングル「あのね Love me Do」の収録曲4曲について深く語ってくださったインタビュー(参照:田村ゆかり「あのね Love me Do」インタビュー)が、えらく反響が大きくてですね。

あ、ありがとうございます。楽しんでもらえたのでしたらよかったです。

──インタビューでファンに対する思いをしっかり語ってもらったあとだったので、先日の日本武道館公演2日目、最後の言葉はずっしりと胸に響きました。

最後……? なんか言いましたっけ?

──覚えてないんですか? アンコールが終わり、長い時間をかけて客席全体に届くように手を振り続けたあとで「私はとってもネガティブな人間なので皆さんに心配ばかりかけてしまいますけど、これからも支えてくれるとうれしいです」と。

ああ、ちょっと泣いちゃったやつですね。行き当たりばったりなので何も覚えてない(笑)。

──ライブ中はさんざん客席をいじり倒したり(笑)、本編ラストの「エキセントリック・ラヴァー」では無表情で歌ったあげくマイクスタンドをぶっ倒して無言で去ったりという流れのあとで、最後の最後に出た涙ながらのあの発言は、相当破壊力のある一言でしたよ。

ツンデレのデレみたいなことですか?

──最高のデレでしたし、最高にエモかったですね。

エモい! やった! とっさに出た言葉だから正確なことは覚えてないし、どんどん忘れていっちゃうんですよ。武道館のあとすぐに取材だったらもっと話せたかもしれませんけど(笑)。ただ、武道館の1日目にうまくいかないことが重なって、ちょっと考えちゃったんですね。私、今まではロボットみたいにちゃんとできると思ってたし、そうだったはずなんです。前にプライベートでよくないことがあってリハでは泣いて歌えなくなってたときも、本番になるとロボットみたいに笑って歌ってて……自分で気持ち悪いなと思ったんですね。それもあって「もう辞めてもいいかもな」と思った時期もあったんですけど、今回の武道館の1日目は「私、ロボットになれなかったな」って(笑)。うまくいかなかったことは反省だけど、私個人としてはちょっとホッとしたというか。自然と素の自分が出ちゃってるんですよね、最近のライブでは。

めちゃめちゃポップに、少しだけ切なさを

──前作は田村さんのディープな一面が垣間見える作品だったこともあってか、今作は比較的ライトに楽しめるポップなシングルになっているなと感じました。

めちゃめちゃポップな内容になりました。頭2曲はあまりメッセージが強いものにはしたくなくて。

──表題曲の「好きだって言えなくて」はリズムも軽快なポップソングで、ジャケット写真のイメージも相まって非常に春らしい楽曲ですね。

そうですね。でもポップなだけじゃなく、切なさも加えたくて。あっさりとしたラブソングにならないように、実は歌詞については3回ぐらいまるっと書き直してもらってるんですよ。本当に申し訳ないんですけど。

──PVはベレー帽をかぶった芸術家のアトリエという設定で、色使いも非常にポップです。ベタにラブリーな展開と思わせつつ、ラストは田村さんの地元・福岡オチという。

はい(笑)。最後にちゃんと文字を並べるには、けっこうムチャな感じでグルンとやんないといけないから、みんなで「どうやってなぎ倒したらうまくいくかね」って話し合いながら撮りましたね。結果的にうまくいきました。

なのは曲、ジャズ風味ロック、センチなバラード

──カップリングの3曲についても聞かせてください。「Pleasure treasure」は田村さんが声優を務めているアニメ「魔法少女リリカルなのは」シリーズの最新作「魔法少女リリカルなのは ViVid」のエンディングテーマです。

今回の作品はシーズンが変わって、なのはの娘の高町ヴィヴィオちゃんが元気にがんばる話なんですよ。「なのは」の曲はいつもバラードなんですけど、今回はヴィヴィオちゃんの元気なイメージに合わせたくて、ポップで疾走感のある、それでいて「好きだって言えなくて」とはまた違うテイストの曲を選びました。

──なるほど。確かにキービジュアルを見ても、今までより元気なイメージですよね。

そうなんですよ。私が演じるなのはは今回お母さんの役なので、今までほど前には出ないんです。「ごはんよー」を言う役目ですね(笑)。

──3曲目の「Luv Fanatic」はガラリと変わってアダルトな、スウィングジャズ風味の楽曲で。思いきりジャズサウンドというよりは、ロックな雰囲気を感じますが。

はい。ジャズっぽい曲をと思って選んだんですけど、どちらかというとロック寄りにしたかったんです。次の「雨のパンセ」のほうが先に入れることが決まっていて、4曲のバランスとしてここで一度ガクッと落とすような曲がやりたかったのと、今後のライブでいい位置に置ける曲が欲しかったんです。明るくて元気な曲と、大人っぽい曲の合間をつなぐような。

──ライブでのクールな演出は想像しやすいですね。続く「雨のパンセ」はすごくセンチメンタルなバラードです。

この曲を選んだのは……単純に好きだったからです(笑)。好きな歌しか歌いたくないので。私が思っているイメージを松井(五郎)さんに伝えたら、期待していた通りの歌詞を書いてくださいました。最初におっしゃっていた通り、前作に比べたらサラッと楽しんでもらえるシングルになったかなと思うんですけど、実は「Luv Fanatic」も言ってることは「エキセントリック・ラヴァー」と同じなんですよ。もう少しマイルドになっていますけど。……ただ、武道館ライブでの「エキセントリック・ラヴァー」の演出は、ああいうふうに見せた上で次のツアーの演出を考えてたんですけど、意外とみんな「よかった」という感想だったのでどうしようかなって(笑)。

──あはは(笑)。本当はもっと批判される演出のつもりだったと。

そうなんです。計算が違っちゃった(笑)。

田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily*
  • 2015年4月11日(土)千葉県 松戸森のホール21 大ホール
  • 2015年4月19日(日)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2015年4月25日(土)香川県 サンポートホール高松 大ホール
  • 2015年4月26日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2015年5月3日(日・祝)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
  • 2015年5月4日(月・祝)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
  • 2015年5月6日(水・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2015年5月17日(日)北海道 札幌市民ホール
  • 2015年5月23日(土)大阪府 グランキューブ大阪 メインホール
  • 2015年5月24日(日)大阪府 グランキューブ大阪 メインホール
  • 2015年5月31日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2015年6月7日(日)新潟県 新潟テルサ
  • 2015年6月27日(土)東京都 国立代々木競技場 第一体育館
  • 2015年6月28日(土)東京都 国立代々木競技場 第一体育館
田村ゆかり(タムラユカリ)

2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる日本武道館公演を行った。2015年4月には通算26枚目のシングル「好きだって言えなくて」をリリース。4月からは全国11会場を回るライブツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily*」を行う。