音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH
“遺言”を刻んだ1stミニアルバム「WILL」
LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける若手コンポーザー・堀江晶太が2015年に結成した5人組バンド・PENGUIN RESEARCH。彼らがメジャー1stミニアルバム「WILL」を3月30日にリリースする。
メジャーデビューシングルのタイトル曲であり、アニメ「デュラララ !!×2 結」のエンディングテーマに採用された「ジョーカーに宜しく」を含む全6曲を収録した本作のテーマとして掲げられたのは「死生観」。音楽ナタリーでは去る3月6日に東京・新代田FEVERにて初のワンマンライブを開催した翌日にメンバーにインタビューを実施し、ミニアルバムに込めた思いやバンド結成までの道のりを聞いた。
取材・文 / 須藤輝
上京したてのボーカルを不意打ちでソニーに連行
──初ワンマンライブお疲れ様でした。
一同 ありがとうございます!
──ライブのお話は後ほど伺うとして、まずはバンドの成り立ちから聞かせてください。PENGUIN RESEARCHは、もともと作編曲家として活動してらした堀江晶太さんを中心に結成されたわけですが、結成のいきさつから教えていただけますか?
堀江晶太(B) 僕は生来引きこもり体質で、1人で作業するのが性に合っていたんですけれど、あるとき僕が楽曲を提供したアーティストさんのライブを観に行く機会があったんですね。そこで、その方がステージで僕の曲を歌ってるのを観て、オーディエンスがメッセージを受け取って感動したり騒いだりしている光景を目の当たりにしたんです。そこでいつか僕もそういう経験をしてみたいと思い始めて。で、よく一緒に仕事をしているソニーミュージックのプロデューサーさんに相談したら「クリエイターと並行して、一緒に組めるシンガーを見つけてアーティスト活動もしてみれば?」と言ってくださって。
──それでメンバーを集め始めたと。
堀江 でも、そのときはまだすぐに組みたいと思える人はいなくて、どうしようかなと考えながら、一般の方々が、僕の作った曲を歌ってインターネットに投稿した動画をぼーっと眺めていたんです。
──いわゆる「歌ってみた」ですね。
堀江 はい。その中の1つに、いい声だなと思った人がいて。その歌い手の経歴をよく見ると、昔、僕が高校生のときにネット上の音楽仲間が集まったオフ会のようなイベントで一度だけ一緒にバンドをやった人だと気付いたんです。それが鷹司だった。
生田鷹司(Vo) どうも(笑)。
堀江 鷹司とはそのとき以来まったく交流がなかったんですけど、共通の友人に近況を聞いてみたら、彼はそれまで地元で保育士をしていたんだけれど、どうしても音楽がやりたくて、仕事を辞めて上京することに決めたところだと。
生田 上京する2週間前くらいでしたね、晶太から連絡をもらったのは。
堀江 いいタイミングだし、何か不思議な縁があるなと思って、鷹司が上京した当日か次の日くらいに彼を呼び出して、ソニーミュージックの事務所に連れて行ってプロデューサーに紹介したんです。「一緒に組んで音楽をやるなら、彼がいいです」と。
──生田さんは上京した矢先、有無を言わさずソニーに連行されたわけですね。
生田 正直わけがわからなかったですね。晶太からは「会わせたい人がいる」「僕がお世話になっている人」としか聞いてなかったんで、会議室で1人待たされながら「誰だろ? 『世話になってる』って、まさかお母さんじゃないよな?」みたいな(笑)。
堀江 不意打ちだったよね(笑)。
死に物狂いのドラムとキーボードに「もういいから」
──まずボーカルの生田さんを引き入れて、お次は?
堀江 ギターの神田さんです。
神田ジョン(G) 僕は昔からいろんなバンドをやっていて、晶太くんとも対バンしたんですけど、いつからか疎遠になって。でも、僕が当時所属していたバンドを脱退して今後について悩んでたとき、パッと晶太くんの顔が浮かんで相談したんです。それで彼が書いた曲でギターを弾く仕事をもらったりしていて、あるとき晶太くんが鷹司と2人で何か始めると聞き、じゃあ僕もぜひそれに加わりたいと。
堀江 神田さんを入れて3人編成になって、その次はドラムの恵大くん。
新保恵大(Dr) 僕が晶太くんと会ったのは、彼が作曲を担当しているベイビーレイズJAPANさんのライブで、僕がドラムを叩かせてもらったのが最初なんですね。で、その後しばらくして晶太くんから「バンドのドラマーを探してる」と連絡を受けたんです。もともと僕も10代のころからロックバンドをやってて、いつかメジャーデビューしたいと思ってはいたんですが現実は厳しくて。一時期はバンドを諦めてサポートミュージシャンという生き方も考えたくらいなんで、晶太くんからもらったこのチャンスは絶対にモノにしようと。
──新保さんは、大学に8年在籍してたんですよね?
新保 はい、PENGUIN RESEARCHの話が来たのも大学8年生のころで、「俺の人生、そろそろマジでやべーな」みたいな(笑)。だから余計に必死で。
堀江 僕が恵大くんと初めて会った、ベイビーレイズのバックバンドの顔合わせが、ちょうど8年目の留年が決まった日だったんですよね。挨拶のとき真っ青な顔をしてたのをよく覚えてます(笑)。
新保 おかげさまで無事に卒業しました。
──おめでとうございます。で、最後にキーボードの柴崎さんが加入すると。
柴崎洋輔(Key) 僕は恵大さんと前から知り合いで、恵大さん経由で「晶太さんのバンドで鍵盤を探してる」と声がかかって。僕はそれまでけっこうアニソン系のサポートをやってて、晶太さんが編曲したLiSAさんの「Rising Hope」とかも聴いてたので、これはチャンスだなと。
新保 僕の大学の先輩がよく洋輔とセッションをやってまして、彼が「若くてめちゃめちゃいい鍵盤がいるんだよ」って言うんです。で、実際にセッションを観に行ったら、ほんとにうまくて、当時19歳くらいだったのにクソ渋いフュージョンやってるんですよ。
神田 洋輔は小学校5~6年からフュージョンを聴いてたんだよね?
──それは渋い。お父さんの影響とかですか?
柴崎 いや、僕は小学校からエレクトーンを習っていて、たまたま先生がフュージョン好きだったんです。その影響でT-SQUAREやカシオペアといった日本のフュージョンにハマって、人生で初めて買ったCDもT-SQUAREにいた本田雅人さんのアルバムだったりして。
──同世代でそういう人、あんまりいないですよね?
柴崎 全然いないです。僕も高校生のときからフュージョンを演奏するようになったんですけど、正直、バンドという選択肢は考えてなかったですね。
堀江 実はドラムとキーボードに関してはほかにも候補がいて、恵大くんと洋輔にはオーディションを受けてもらったんですよ。で、なぜこの2人が受かったかというと、彼らが一番死に物狂いだったから。その執念に、僕らも「もういいから、わかったから!」みたいになって(笑)。あと、僕の曲を好きで来てくれたのが伝わってきたんですね。であれば、この先も一緒にやっていけるだろうと。それが決め手になりました。
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収録曲
- SUPERCHARGER
- A WILL
- ジョーカーに宜しく
- 雷鳴
- 世界最後の日に
- 敗北の少年
ライブ情報
PENGUIN RESEARCH presents ミニアルバム「WILL」レコ発ワンマンライブ「アップセットも宜しく」
- 2016年4月9日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
OPEN 17:00 / START 17:30
PENGUIN RESEARCH presents ミニアルバム「WILL」レコ発ワンマンライブ「ジーラも宜しく」
- 2016年4月17日(日)大阪府 梅田ZEELA
OPEN 17:00 / START 17:30
チケット料金:前売り 3000円(ドリンク代別)/ 当日券 3500円(ドリンク代別)店頭 / イープラス
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴崎洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月には6曲入りミニアルバム「WILL」をリリース。また4月から放送のアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマとして「スポットライト」を提供する。