ナタリー PowerPush - 人間椅子

イカ天出演から22年 傑作アルバム「此岸礼讃」堂々完成

でも、コンピュータで作ってる音楽でしょ?

──そういうメッセージが詰まったアルバムなのに、ボクは「あゝ東海よ今いずこ」という曲を歌詞を見ないで聴いてたら……。

和嶋慎治

「阿藤快」に聞こえたんでしょ(笑)。録音したときから、ちょっとこれは空耳かもと思ったんだけど、意外にそういうところは別の意味でのキャッチーさになるんですよ。これはこれでいいかなと思って。いっぱいいっぱいで聴いてて疲れるっていうのもちょっと困るなと思ったんで、笑いも取りつつ。「あゝ東海よ今いずこ」なんて、自分で好きなことやってて言うのもなんですけど、なんか日本人が失ってる気がするわけですよ。魂というやつを。やっぱりそういうことを書きたいなと思って。東海というのは日本のことで、べつに戦前の帝国主義に戻れとは言いたくないですけど。

──フジテレビに韓流反対デモする人の気持ちがわかるとかでもなく。

……ん? 何それ?

──あ、そういうことも知らないわけですね(笑)。最近、フジテレビが韓国をプッシュしすぎてるっていうことで、ネットの人たちがデモをしてたんですよ。

へえーっ、テレビ番組に対してデモ起こしてるの?

──今、ちょっとネット右翼的な若い人が多いんですけど、そういう人たちが昨日もデモで4000人とか集まってたんですよ。

4000人! 別にいいんじゃないですかね。だって韓流ドラマって、ある種の純粋さを表してるようなドラマじゃないの? あ、でも、韓国の歌手とかが今すごい多いんでしょ。それはどうなんだろうとは思ってるけど。なんで日本でそんなに売れてるのかなって。

──最近の音楽はある程度、把握はしてます?

いや、あんまりわかんない。

──AKBが流行ってるらしいとかはボンヤリと理解して。

ああ、それは。ネットは見るからね、Yahoo!ニュースとかでなんとなくわかってます。曲はよくわからない。でも、コンピュータで作ってる音楽でしょ?

──またザックリとした感想ですね(笑)。

すみません、一刀両断みたいで。

──いや、面白いです!

だから、あんまり人間味は感じないわけよ。

──そういえばさっきレコード会社の人が言ってたんですけど、ライブでアンケートを初めてやって、「人間椅子以外に一番好きなアーティストは誰ですか?」っていう項目で、ももいろクローバーZがすごい多かったっていう話を聞いて。

1位じゃないかもしれないけど、意外にいるみたいです。

──ももいろクローバーZはご存知ですか?

さっき聞いた。知らなかった。そんなに売れてるの?

──勢いはありますね。8月にはよみうりランドでライブやったぐらいの動員力で。

すごいですね。女性アイドルグループ?

──正解です!

今AKBの次ぐらいなわけ?

──そこまで売れてないけど、その座は狙ってますね。

わからない! それはいわゆるアイドル歌謡みたいな感じ?

──アイドル歌謡の中でおかしなことをやってる人たちっていう感じですね。特撮のメンバーの人が曲を作ったりして。

あ、そうなんだ。その流れもあるのかな。特撮のギターの人が作ってるの?

──そうです。最近のバンドで交流があるグループってあります?

ライブハウスシーンでやってる子たちとは友達になったりするけど、そんなにはないですかね。やっぱり友達はこの世代の人たちなんだよ。

自分を表現できる場は人間椅子以外にはない

──それにしても、バンドを解散せずに続けるのってホント大変だと思うんですよ。

結構大変ですね。なんだかんだいって人間同士ですから。

──人間椅子の2人がこれだけ続いてるのはすごいと思いますね。

それはやっぱり幼なじみっていうか、10代の頃からの友達だからでしょうね。

──幼なじみでも揉めてるとこいっぱいありますよ(笑)。

うん、いる(笑)。兄弟でやってても仲悪かったりするからね。だから難しいですよ。

──精神的に危うかったとき、バンドも危うくはならなかったんですか?

どうしようかなって、そのときは特に俺が思ったんだけど。でも、完全に活動停止っていうのは僕らはないですからね。

──酒でヤバいときでも続いてたわけですもんね。

写真左から吉田豪、和嶋慎治

続けてた。ある意味、バンドが拠り所だったんですよ。あとホントに自分を表現できる場ってほかになかったですから。例えば僕が全然別のところで1人で音楽やったとしても、こんなには人に影響を与えられないっていうのもわかってますから。やっぱりこういうロックサウンドをやれるのは人間椅子だけで。鈴木くんもその意識が確実にあると思うし。

──この先もケンカ別れはまずなさそうな。

ないでしょうね……ないですよ、もうこの年だもん。だいたいバンドがヤバくなるのはたぶん30代とかそれぐらいじゃないかな。

──エゴがぶつかり合う時期があって、家庭を取るかどうかの時期があって。

うん、そういうのが出てきて。みんな家庭ができたりしますからね。話がいろんなとこいっちゃって、ニューアルバムのことあんまり言わなかったけど(笑)。

ニューアルバム「此岸礼讃」 / 2011年8月3日発売 / 3000円(税込) / 徳間ジャパン / TKCA-73676

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CD収録曲
  1. 沸騰する宇宙
  2. 阿呆陀羅経
  3. あゝ東海よ今いずこ
  4. 光へワッショイ
  5. ギラギラした世界
  6. 春の匂いは涅槃の薫り
  7. 悪魔と接吻
  8. 泣げば山がらもっこ来る
  9. 胡蝶蘭
  10. 地底への逃亡
  11. 愚者の楽園
  12. 地獄のロックバンド
  13. 今昔聖
人間椅子(にんげんいす)

和嶋慎治 (G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスや、ハードロックを基調とした独自のサウンド、文学的な歌詞などで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。