音楽ナタリー PowerPush - 木村カエラ
過去最高ポジティブアルバム「MIETA」ができるまで
木村カエラが自身8枚目となるオリジナルアルバム「MIETA」をリリースした。本作ではAxSxE(NATSUMEN)、渡邊忍(ASPARAGUS)、Pop Etc、牛尾憲輔(agraph)、Nomson、會田茂一、森岡義裕(撃鉄)、三浦康嗣(□□□)といった個性的な面々が楽曲を提供し、バラエティに富んだサウンドが展開されている。
デビュー10周年を迎えますます波に乗るカエラに、このアルバムに込めた思いを語ってもらった。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 須田卓馬
泣きながらスタジオを飛び出した
──ニューアルバム「MIETA」聴かせていただいたんですが。
どうでした?
──今のカエラさんが絶好調だということがよくわかりました。
あはは(笑)。そうですね。絶好調です(笑)。
──世間的にポップなイメージのあるカエラさんですが、アルバム1枚通して、ここまでポジティブで前向きな作品は初めてだと思うんです。
うん、アルバム単位で考えると、今までで一番ポップだし一番前向き。悩んでたところから抜け出してますね。
──どういう流れでそこに至ったんですか?
今年は10周年イヤーでシングルも出すし、アルバムも出すし、ライブもある。1年間通してずっと駆け抜けなきゃいけない年だし、私もいろんな気持ちをみんなに伝えていかなきゃいけないなって思ってたんです。でも10周年のライブ(10月25、26日の横浜アリーナ2DAYS公演)が近付いてきたときに、そのプレッシャーに勝てなかったんですよ。
──勝てなかったというのは?
大きいライブの前はいつもプレッシャーで「ちょっともう無理かも」みたいな気持ちになるんだけど、でもどこかで勝つんですよ。楽しみのほうが大きくなって、自分の中で「イケるっしょ!」みたいなモードに切り替わる。でも今回は本番が近付くにつれて、2DAYSで50曲やるっていうのと、規模が大きいっていうのと、すごくひさしぶりのワンマンだっていうこともあって、とにかくプレッシャーがすごくて。
──それで?
「ヤバいな」って思いながら練習してたんですけど、本番直前になってリハーサルスタジオを変えたんですよ。そしたらスタジオの音と今まで作ってきた音の相性が悪くて、まず音が聞こえなくなっちゃったんです。耳鳴りが止まらなくて、声も出なくなって、音も全部半音ズレて聞こえたりとか。それで歌えなくなってしまって……。
──それはスタジオを変えたせいではないのでは……?
そうなの! 今思うとプレッシャーのせいなんだけど、でもそのときはスタジオのせいにしてたんです。で、本番直前だしすごく焦って「これじゃライブできない」「ヤバいヤバい!」ってなって、最終的に泣いてスタジオを飛び出したの。
──かなり追い詰められていたんですね。
そのあと「わ、涙出た、ヤバい」って思ってさらに落ち込んでたら、バンドメンバーが「カエラちゃんが歌いやすいように音も変えよう」「ギターのバランスもドラムの音も変えられるから試してみよう」って言ってくれて。みんなが私の周りに集まって、私を慰め始めたんですね。で、その瞬間に「あれ? 私何やってたんだろう」って思ったんですよ。
──そこで気持ちが切り替わった。
しのっぴ(渡邊忍)には「完璧にやろうとしてるでしょ?」「いいんだよ、カエラちゃんは完璧じゃないんだから」みたいなことを言われて。それで「確かにそうだな」って思ったの。私すごいドジなのに、完璧主義者だから(笑)。あとスタッフやバンドメンバーがみんな「カエラちゃんが楽しくないと意味がないんだからね」って言ってくれて「それも確かにそうだな」と。
──なるほど。
デビュー当時からバンドで歌う女の子になりたくって、ずっと同じバンドメンバーで一緒にやってきたのに、どこかで途中から「私がみんなを背負わなきゃ」って思い込んでたんですよね。勝手にそう思い込んで、私だけにのしかかるプレッシャーに対して1人で戦ってるっていう感覚になってた。でもみんながそうやって話してくれたおかげで「あ、私すごいバカなことしてた」って気付けたんです。だって、これは私の10周年でもあるけど、スタッフもバンドメンバーもみんなで一緒に迎える10周年だから。10年続けるっていう夢が叶って、すごくうれしいことだし、みんなに感謝しなきゃいけないのに、自分ばっかり悩み抜いて精神的に追い込まれちゃってて。
──10年一緒にやってきたメンバーと話し合って……。
その瞬間に気持ちがブワッと晴れたんです。そのときちょうど「アルバムタイトルどうしますか?」っていうタイミングで「あ、『MIETA』にします」って決めたんですよね。
──まさに「見えた」わけですね。
アルバムを作るときはいつも、自分が悩んでるところから答えを見つけようとして制作に入るんですけど、今回は初めてすごく明確に「あ、全部見えた」みたいな感じになったんですよ。そこからアルバムがポジティブな方向にバンッと向いた。だから今は最強ですね。今までで一番いいモードに突入し始めてて、それがアルバムに出たっていう感じです。
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- ニューアルバム「MIETA」22014年12月17日発売 / ELA
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-746
- 通常盤[CD] 3240円 / VICL-64242
- 初回限定盤 [CD+DVD]
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- 通常盤[CD]
CD収録曲
- one more
- sonic manic
- TODAY IS A NEW DAY
- MAKE THIS DREAM REAL
- c'mon
- Satisfaction
- RUN
- MIETA
- OLE!OH!
- Wake up
- eye
初回限定盤DVD収録内容
- MUSIC VIDEO & MAKING:「OLE!OH!」「TODAY IS A NEW DAY」
- GO!GO! KAELAND BACKSTAGE
- オリジナルクイズ「MITEA Q」
木村カエラ(キムラカエラ)
1984年生まれ、東京都出身の女性シンガー。テレビ番組「saku saku」への出演をきっかけに、2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビューを果たす。2005年3月発売の3rdシングル「リルラ リルハ」が大ヒットを記録し、一躍全国区の人気を獲得。2006年には再結成したサディスティック・ミカ・バンドにボーカルとして参加した。2007年6月には初の日本武道館公演を成功させたほか、2009年7月には横浜赤レンガパーク野外特設ステージにてデビュー5周年記念ライブを行い約2万2千人を動員。同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場し、ヒット曲「Butterfly」を披露した。2013年からはビクターエンタテインメント内にプライベートレーベル「ELA」を設立し、コラボカバーアルバム「ROCK」を発表。デビュー10周年となる2014年は、6月に横浜アリーナで2DAYSの大規模ライブを行い、12月にオリジナルアルバム「MIETA」をリリースした。キュートで先鋭的なファッションやそのライフスタイルは女性からの支持も厚く、CM出演なども多数。