音楽ナタリー Power Push - Ken Yokoyama
Ken BandのJun & Minamiが語る、横山健の実像
震災以降の変化
──震災の影響で「今歌うべきこと」という意識に変わった、と彼は言ってました。そのあたりはそばで見ていて感じましたか。
Jun 1個前に出した「Best Wishes」は明らかに震災を受けてのうちらからの答えという感じで作ったアルバムでした。でも今回は……もちろんまだ復興の最中だし、そういうことはいつも考えてるけど、震災直後の本当に助けが必要な時期からは時間も経ってる。今も大変だけど、でも楽しみたいという気分も出てきた。そういう時間を経ての今回の歌詞だと思う。
Minami 前作は震災を経験してのアルバムで、健さんにはその延長線上でもう1枚作るという考えはなかったと思うんです。健さんは次のテーマを何にするか考えて、“音楽”を選んだ。
Jun うん。
Minami 自分がこれまで聴いてきた音楽に1回戻りたかったんじゃないかな。そこでいろんな曲ができてきたと思うんです。ロカビリー調の曲、ジャズっぽい曲、ソウルっぽい曲とか。そういう音楽のルーツっていうのが今回、1つのテーマだったのかもしれないですね。
──シングルの4曲を聴いた限りでは、1つ突き抜けたのかなという気がしました。つまり健さんもいろんなモードを経て、ようやく自分自身のこととか自分の音楽について歌えるような心境になってきたのかな、と。
Minami そうですね。あると思います。
Jun 「Best Wishes」のとき、あいつはどうやって被災地の人たちを救えるかってことで頭がいっぱいだったろうし。でも今回の歌詞とか見ると、昔のあいつに戻ったわけじゃない。「Best Wishes」以前の感じとはまた違うと思うんだけどね。今のテーマがいろいろあいつの中にもあって。震災以降も今の政治や社会でクソ面白くもないと思ってることがいっぱいあるはずなんですよ。そういうところがテーマになってる曲もあるんじゃないかな。
──なるほど。
Jun よくあいつは「パンクがそういうことを言っていかなくてどうすんのよ」って言うんだけど、それはすごく同調できる。パンクっていうジャンルとされてるのにハッピーなことしか歌ってないようなバンドもいるけど、自分たちはそうじゃないだろうと。
──政治的な発言に関して、日本のバンドは逃げ腰なところがあったかもしれないですね。
Jun そうですよね。ちゃんと言いたいことは今言っておかなきゃ、みたいところをあいつはしっかり考えてますね。
横山健はいなくならねえ
──今回のシングルの表題曲はラジオについて歌ってますね。
Jun そうですね。「I Won't Turn Off My Radio」はラジオとKen Yokoyamaを重ね合わせてる曲。昔はラジオから情報を得たけど、今の若い子はラジオなんて聴いてないだろうっていう。
──時代遅れと言われるメディアと、自分自身を重ね合わせていると以前話してました。
Jun うん。でも結局ラジオは絶対なくならないツールだし、「俺もいなくならねえよ!」っていう歌ですね。
──震災のときにはっきりしたのが、いざというとき一番頼りになるのがラジオっていうメディアだったという。ほかのものが全部使えなくなっても。
Jun そうそう。
──ほかのバンドが全部なくなってもKen Bandは残るっていうことですね(笑)。
Jun・Minami はははは!(笑)
──今後Ken Bandが音楽的に伸びていく余地はどういうところにあると思いますか。
Jun こないだあいつとも話したんだけど、シングルに続いてアルバムを出すことでこういうこともできるんだよっていう姿勢を見せられるんで、また次の音源はもっと自由にできるんじゃないかと。いわゆるメロディックパンクとか、あいつが嫌いな言い方の“メロコア”みたいなジャンルに縛られなくて済むっていう。
──確かに今回のシングルは普通にポップスとして聴くことができる作品だと思いました。
Minami そうですね。そういうメロディのセンスがものすごいんで、健さんは。
Jun Ken Band的な疾走感のあるメロディックパンクに対して「これがいいんだよKen Yokoyamaは」と思っていた人の中には、今作を聴いて離れる人もいるかもしれない、極端に言えば。
Minami それはあまり心配してないなあ。
Jun 俺はそういう人がいてもいいと思うんですよ。逆に今作やアルバムを聴いて、「こいつらこんなこともできるのか」と思って食いつく人もいるかもしれないし。
──バンドが何か新しいことをやるって、そういうことですもんね。離れる人もいれば、新たにやって来る人もいる。
Minami 今回健さんが変わった曲をどんどん持ってきて、実は僕自身すごく不安だったんですよ。でも最後のほうに定番曲っていうか、今までやってきたような速いメロディックな曲を持ってきて、ああさすがだなと思いました。
──彼は自分が何を求められているかということをよくわかってる気がしますね。
Jun うん。
Minami 自分のことをすごく客観視できてるので。
──この際なんで、何か健さんに要望はありますか? こういうことはやめて!とか。
Minami うーん……あんまりないかなあ。そういえば最近ちゃんと起きてくるようになりましたよね(笑)。
Jun 昔は決められた集合時間から1時間待たなきゃならなかったね。それが常だったけど、最近は30分待つこともあまりない(笑)。
Minami 遅れても10分20分だし……。
Jun 優秀!
Minami なので不満はないです(笑)。
- ニューシングル「I Won't Turn Off My Radio」2015年7月8日発売 / 1296円 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-71 / Amazon.co.jp
- 「I Won't Turn Off My Radio」
収録曲
- Dance, Sing, Then Think
- I Won't Turn Off My Radio
- Never Walk Alone
- Smile
Ken Yokoyama「I Won't Turn Off My Radio Tour」
- 2015年7月16日(木)長野県 Sound Hall a.C
<出演者>
Ken Yokoyama / UNLIMITS - 2015年7月17日(金)福井県 福井まちなか文化施設 響のホール
<出演者>
Ken Yokoyama / UNLIMITS - 2015年7月22日(水)岡山県 YEBISU YA PRO
<出演者>
Ken Yokoyama / NAMBA69 - 2015年7月23日(木)福岡県 DRUM LOGOS
<出演者>
Ken Yokoyama / NAMBA69 - 2015年7月25日(土)愛媛県 Wstudio RED
<出演者>
Ken Yokoyama / GOOD4NOTHING - 2015年7月26日(日)香川県 高松オリーブホール
<出演者>
Ken Yokoyama / GOOD4NOTHING - 2015年7月28日(火)大阪府 BIG CAT
<出演者>
Ken Yokoyama / HEY-SMITH - 2015年7月29日(水)愛知県 DIAMOND HALL
<出演者>
Ken Yokoyama / HEY-SMITH - 2015年8月1日(土)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
<出演者>
Ken Yokoyama / WANIMA - 2015年8月2日(日)宮城県 BLUE RESISTANCE
<出演者>
Ken Yokoyama / WANIMA - 2015年8月4日(火)東京都 TSUTAYA O-EAST
<出演者>
Ken Yokoyama / HEY-SMITH
Ken Yokoyaoma(ケンヨコヤマ)
1969年10月1日生まれ。Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年にソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を展開して以降も、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月に初の東京・日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で敢行した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月にはドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が全国60館の劇場にて公開され、2014年9月に「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売した。2015年7月には8年4カ月ぶりとなるシングル「I Won't Turn Off My Radio」をリリース。同月より各地にゲストを迎えたレコ発ツアー「I Won't Turn Off My Radio Tour」を開催する。
横山健 コメント
音楽ナタリー様、ライター小野島様をはじめ、関係各位様、病欠してしまって申し訳ありません。アルバムの取材のタイミングで洗いざらいなんでも話しますので、そこで挽回させてください。まさか……もう取り上げてくれないってことないですよね!? ごめんなさい! 次は自白剤打ってから話す勢いでやるので(ry
しかし今回こうやって事故的な形ではありますが、こういう形でメンバーの気持ちを読めて、なんだかうれしいです。改めて2人の発言を読みながら「あーそうだった、そうだった」と曲作りの時の光景や心境を思い出してみたり、「へぇ、そう思ってたんだ」と初めて気付いたところもあり……なかなか事故るのも悪くないなと思う次第であります(猛爆)。まぁ2人とも公の発言ということを意識してか、ぼくをよく褒めてくれているのが少しこそばゆくもありましたがw これ読んだ人に「健ってすげぇんだなぁー」って思ってもらえるよいインタビューだと思います(猛爆)。
作品については、インタビュー中も出てきますが、シングルとアルバムを一緒に録りました。録ったあとで「この曲はシングルで、この曲はアルバム」と振り分けていきました。なんで、シングル単体について話せることって案外少ないんです。
ただ、シングルの曲を並べてみて、後付けですが「コンセプト的な部分」が出てきたと思います。サウンド面については2人が話している通りですが、今回のシングルの歌詞の世界観が、自分で言うのもなんなんですがw、とても優しい。厳しい言葉を並べていても元々の着眼点が優しかったり、寂しい世界観を切り取ったつもりでも着地点が優しかったり……これもインタビュー中に出てきてますが、震災を通過/経験した40半ばの男の詩なのでしょう。
表題曲がうれしいことにとてもリアクションがいいです。でも決してその曲だけプロモートしたいから作ったシングルじゃありません。もうこれ以上ミュージシャン自身がいうと不粋も極まってしまいますので最後にしますが、シングルの収録されている4曲まるまるの世界観を手に取って感じてもらえればうれしいです。
やっぱりいつまでも、人の心に火をつける存在でありたいです。
横山健