ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

ツアーの熱を封じ込めた「firefly」誕生

今年7月に4年ぶりのアリーナツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR『GOLD GLIDER TOUR』」を終えた BUMP OF CHICKEN。昨年末から今年1月まで行われたライブハウスツアー「BUMP OF CHICKEN 2011-2012 TOUR『GOOD GLIDER TOUR』」も含めて、バンドが久しぶりに迎えた旅の季節は、やはりかけがえのない時間の連続となった。そんな万感の思いとともに巡ったアリーナツアーの最中に生まれたのが、通算23枚目のニューシングル「firefly」である。

シングルのリード曲としては久々の疾走感にあふれたアッパーチューンとなったこの曲。現在フジテレビ系で放送中の連続ドラマ「息もできない夏」の主題歌としてオンエアされているので、既に耳にしたリスナーも多いだろう。ライブを重ねることで増したバンドの熱量は、藤原のソングライティングへの欲求をいつも以上に高めた。そこで彼はツアーの合間を縫ってスタジオに入り、「firefly」のデモを作り上げた。さらには、アレンジ作業とレコーディングもツアー中に敢行。ちなみに、ツアー中に曲を完成させるのは、BUMP OF CHICKEN史上初の試みでもあったという。今回はカップリングの「ほんとのほんと」を含め、ニューシングルの誕生秘話をたっぷり訊いた。

取材・文 / 三宅正一(ONBU)

言葉にすると「ありがとう」しか出ない

──まずは、7月14日に仙台でファイナルを迎えたアリーナツアー「GOLD GLIDER TOUR」を振り返ってみてどうですか?

升秀夫(Dr) 無事に終わって良かったというのが率直な気持ちですね。アリーナツアーの前にあったライブハウスツアー「GOOD GLIDER TOUR」から、1本1本しっかりコンディションを整えて臨むことができて。大きなトラブルもなく最後までやり切れてホントに良かったです。全国各地でお客さんに温かく迎えてもらって、幸せな時間を過ごせました。

増川弘明(G) ツアーが終わった直後は実感が湧かなくて。胸にポッカリ穴が開いたような寂しい気持ちがありましたね。それも全てツアーが充実していたからで。ライブすることが日常になっていたんだなとも思います。最高のツアーでした。

直井由文(B) 何よりお客さんが僕たちを待ってくれていたことがホントに幸せでした。ツアー前は不安もあったんですけど、最高のツアーにできたのは全てのお客さんと関わってくれたスタッフの皆さんのおかげだと思ってます。みんなに対する感謝と、4人で全国を無事に回ることができて良かったということ。終わってみて率直な感想といったら、それに尽きますね。

藤原基央(Vo, G) ツアーが終わった瞬間は、頭が真っ白になって。ホントにここに来れて良かった、目の前にいる人たちに会えて良かった。それはどの会場でも思っていたことで。うれしい、良かった、ありがとう。そういう思いばかりがライブをやっている最中にも、1拍1小節ごとに強くなっていったんです。僕らの音楽を聴いてくれる人たちが目の前にいて、笑ったり、泣いたり、手を挙げてくれたり、聴き入ったりしてくれている姿を見るのは、何にも勝る雄大な景色なんですよね。久々にツアーをやって、改めて「これがライブなんだ」って思いましたね。それは、ツアー前から想像していたことでもあるんですけど、いざ自分でお客さんとの関係性やそこにある現象を目の当たりにすると、みんなからもらえるものの大きさは、やっぱりすごかったです。

──僕が観た代々木競技場第一体育館4DAYSの最終日では、アンコールを終えても藤原さんがステージから離れがたい様子だったのが印象的でした。

藤原 なんか、全部ステージに置いていきたいなと思って。でも、そのときの気持ちに忠実に動くとマジでグダグダになるんで(笑)。ひとつのショーとしてはグダグダになるんですけど、でも、しょうがないです。事前に箇条書きで自分の気持ちの流れを決めておくことはできないし。

──そこで感じたことはお客さんに直接伝えたいしね。

藤原 そうですね。やっぱり自分の気持ちには忠実になって、思ったことを伝えたいと思うんですよね。もし言葉にならなかったら、音に込めるしかないし。恐らく1回のライブで「ありがとう」って3~40回くらい言っていると思うんですけど、それは偽りのない気持ちで。言葉にすると「ありがとう」しか出ないことがもどかしくもあるんですけど。

BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)

プロフィール画像

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。

その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンを中心に熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させた。

2009年11月に両A面シングル「R.I.P. / Merry Christmas」を発表したあとは、精力的なペースで楽曲をリリース。2010年4月にシングル「HAPPY」「魔法の料理 ~君から君へ~」を、10月にシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」を発売。12月には宇宙飛行士を意味する単語をタイトルに冠したアルバム「COSMONAUT」をリリースした。

さらに2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌として書き下ろした「友達の唄」をシングルとして、5月には東日本大震災被災者を支援する「復興支援ポータルサイト」のテレビCMソング「Smile」をチャリティシングルとして発表。10月に、PSPゲームソフト「FINAL FANTASY 零式」テーマソングとして書き下ろした「ゼロ」をシングルリリースし、同年12月から2012年1月にかけて、約3年半ぶりの全国ツアー「BUMP OF CHICKEN 2011-12 TOUR『GOOD GLIDER TOUR』」を開催した。

また2012年1月には、3D映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」の主題歌に起用されたシングル「グッドラック」を発表。さらに4月から7月にかけて全国13都市20公演のアリーナツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR『GOLD GLIDER TOUR』」を行い、大盛況のうちに終了させる。そのツアー中に生まれた「firefly」を、9月にシングルとしてリリース。