音楽ナタリー Power Push - 04 Limited Sazabys

絶好調バンドがぶつかった“らしさ”と“新しさ”の壁

04 Limited Sazabysがニューシングル「TOY」を10月28日にリリースする。

4月にリリースした1stアルバム「CAVU」を経て、次に何を作るべきか苦心したという彼ら。さまざまなフェスやイベントに呼ばれるなどバンドを取り巻く状況は上り調子な一方で、彼らがぶつかった苦悩とは。メンバー4人に話を聞いた。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 西槇太一

何を作るべきか見えなかった

04 Limited Sazabys

──4月にアルバム「CAVU」を出したあと、7月までレコ発ツアーを回り、8月は夏フェスに出て、9月にはレコ発ツアーの追加公演を実施して……。休む暇もなかったと思うんですけど、そんな中、このシングルはいつ制作していたんですか?

GEN(B, Vo) 8月です。夏フェスの合間にずっと制作してたんですよ、僕ら。でもずっとうまくいかなくて。

──東京・赤坂BLITZでのワンマンライブ(参照:04 Limited Sazabys、赤坂BLITZで見せた“過去最高のライブ” )で、このシングルをリリースすることを発表したときも「制作中はメンバー間がギスギスしてた」と言ってましたね。

KOUHEI(Dr, Cho) はい、本当にギスギスしかしてなかったですね(苦笑)。

GEN 10月28日に4曲入りのシングルを出すっていうことは決まってたんですよ。でもどういう作品を作ったらいいか、全然見えなくて。今まではなんとなく「次はこういう曲を作ろう」とか話が出たりして、メンバー同士で自分たちに見えてるものが一緒な気がしたんですよ。けど、初めてのフルアルバムを作って全国を回って、自分たちの目標だった、地元の愛知・DIAMOND HALLでワンマンライブを行うことができて。そしたら、どこに向かってどういう曲を作ればいいのかがわからなくなってしまったんです。

──シングルを聴かせていただいて、全体的に郷愁感のある秋っぽい作品だという印象を受けたので、そういうコンセプトがあったのかと思いましたが。

GEN(B, Vo)

GEN はい、秋っぽい作品にしようと思っていました。秋のイメージって僕の中で、バンドで言ったら音速ラインとかGOING UNDER GROUNDとかで。ちょっと切なくて胸キュンな感じを意識しました。だけど、やっぱり僕たちらしい2ビートのパンクっぽい曲も入れなきゃいけないと思って。自分たちらしさを考えすぎてしまいましたね。

──そこからどうやって抜け出したんですか?

GEN 完成するまで抜け出せなかったというのが正直なところで。とりあえずどんどん曲は作ったんですけど、なかなかまとまらなかった。

KOUHEI それまでスタジオで曲を合わせてたりはしたんですけど、結局みんなそれぞれのパートが固まってない状態でレコーディングに入ったのでHIROKAZのリードギターとか、GENの歌詞とかメロディとか、レコーディングに入るまで聴けてない状態で。だからどう作ってきてるのか、どう攻めてくるかまったく想像つかなかったし。録り終わって「あ、本当によかったな」って。

──今まで以上にお互いを信頼してないと作れなかったのかもしれないですね。

GEN そうかもしれない。今まで以上にちゃんと曲に対して、自分の仕事をしようっていう気持ちはみんな強かったと思うんで。……本当にうまくいってよかったね(笑)。

RYU-TA(G, Cho)

RYU-TA(G, Cho) 最初全然イメージができなくて本当に焦りましたね。でも4曲の路線が少しずつ違う雰囲気になったので、そこからなんとかつめていけたって感じですね。

HIROKAZ(G) 4曲のそれぞれのキャラはイメージしやすかったよね。

GEN 全部で10曲くらい作ったんですけど、その中からいいと思った曲を入れたっていうよりは全体のバランスを見てキャラの違う4曲を選んだんです。4曲目の「soup」がなければ3曲目の「escape」はあんなに尖ってないと思いますし、2曲目の「in out」が僕ららしいアップテンポの曲にならなかったら1曲目の「Letter」はあんなにメロディアスな曲にならなかったんじゃないかな。

──今作は全体的に、GENさんのキーが低いし、歌詞の乗せ方もこれまでとは違う感じがしました。1つひとつの言葉が聞き取りやすいというか。

GEN 今までは僕のキーの限界ギリギリで歌ってて、そのギリギリな感じに感情や説得力がこもってるのかなって思ったんですけど、初めてちょっと力を抜いた歌い方をしてるんですよ。この曲に限らず、今回の「TOY」は。そのぶん、ちゃんと言葉を伝えられるというか。声を張らずに歌える分、言葉1つひとつに表情をつけて歌えましたね。

──歌い方を変えたのはなぜですか?

GEN いろんなフェスに出させてもらえるようになって、前のほうに来てくれる人たちはテンションも上がってるし、僕たちや曲を知ってたりするので音を鳴らせば伝わっていると思うんですけど、後ろの方にいる人や移動しながら聴いてる人とかに曲を届けるには勢いだけでは伝わらないなということに気付いたんです。そういう人たちにも届けるには、歌をちゃんと歌って、いいなと思わせるしかないなと。

もう夏に会えない寂しさを歌詞に

──ではここからは1曲ずつ話を聞かせてください。まず1曲目「Letter」。曲の最後で「あなたに会いたい」とはっきり歌ってるところが顕著ですけど「失恋したのかな?」と思わせるような、歌詞で描かれている状況がわかりやすいという印象を受けました。

GEN これは ……僕、季節の中で夏が一番好きなんですよ。なんですけど、今年の夏はすごく忙しくて、友達とかがバーベキューをしたり海に行ったりしてるとき、僕は部屋にこもって制作するしかなかったんですよ。で、その「どんどん夏が終わっちゃうなー、もう会えないんだな」っていう気持ちを曲に込めた感じですね。

──あ、「あなた」っていうのは夏のことなんですね。

GEN そうなんです。あんまり感情移入できなくなっちゃうような気がするので、恋愛の解釈で聴いてほしいんですけど、実は夏のことを歌ってるんです。

──サウンド面では最後のサビの「夏の日 夕立」からの盛り上がり方が今までのフォーリミにはない感じで。

KOUHEI(Dr, Cho)

GEN ラスサビをどう迎えるかというのはアレンジの一番のテーマみたいなところで。いつもの僕らがやりがちなのは最後のサビで音数を少なくして、そのあとドンっと音を強く出すというアレンジなんですけど、今回は音を減らさないでどう盛り上げるかを考えてみました。

KOUHEI あと新しい試みとして、1番だけBメロが普段のBメロより長いんですよ。これまでBメロはサビへのフックでしかなかったんですけど、そうじゃなくてAメロからBメロの流れを考えて、2回繰り返すBメロをやってみたくて。ダレないようにしつつ、でも僕ららしさは失わないようにっていうのは一番考えましたね。あとメロディが強いからこそ、サウンド的にはシンプルにしようというのは、意識しました。

GEN メロディがしっかりあって、アレンジには波がない。それに対してベースもギターも全部歌ってる曲になったのかなと。僕、間奏のHIROKAZのギターソロがすごくいいと思うんですけど、あそこは「もっと歌ってほしい。顔で弾いてほしい」みたいなリクエストをしてて。イメージ的には歌ってほしいし、泣いてほしかったんです。顔で弾いてるのが浮かぶフレーズにしてほしかった。

HIROKAZ(G)

HIROKAZ そのリクエストに対して、とにかくがんばってソロを絞り出したという感じでしたね。レコーディングギリギリまで部屋にこもってました。

GEN 今回はHIROKAZが一番こもってたかもしれないね。

KOUHEI そうそう。自分のパートのレコーディングがないときとかスタジオに来なくて。「考えたいから家でやる」みたいな。

──本当に、できあがった曲がよくて安心という感じだったんですね。

GEN そうですね。あと1番のBメロで、ベースが動いてそのあとにHIROKAZのリードギターが入るっていうところがあるんですけど、僕のベースのフレーズが高い音に行ったあと、その続きみたいな音からHIROKAZのリードが入るんですよ。それが本当に偶然で。たまたま起きたケミストリーでしたけど、よかったなと。

メジャー1stシングル「TOY」2015年10月28日発売 / 日本コロムビア
初回限定盤 [CD+DVD]1944円 / COZA-1089
通常盤 [CD]1296円 / COCA-16999
CD収録曲
  1. Letter
  2. in out
  3. escape
  4. soup
初回限定盤DVD収録内容
  • "Live Movie"2015.7.10 「CAVU tour 2015 -Final Series- 」 at Ebisu LIQUIDROOM
  • "Offshot Movie" in OKINAWA
04 Limited Sazabys「TOY tour 2015」
  • 2015年11月13日(金)香川県 高松MONSTER
  • 2015年11月15日(日)福岡県 BEAT STATION
  • 2015年11月20日(金)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2015年11月21日(土)宮城県 仙台MACANA
  • 2015年11月23日(月・祝)北海道 cube garden
  • 2015年11月26日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2015年12月2日(水)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2015年12月4日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2015年12月10日(木)愛知県 Zepp Nagoya
04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)
04 Limited Sazabys

2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなどさまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」発売を経て、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」をリリース。11月からはバンド初のワンマンツアー「TOY tour 2015」を実施する。