映画ナタリー Power Push - メイズ・ランナー
藤岡弘、インタビュー メイズ攻略!“藤岡、流”サバイバルの極意
2015年5月に公開されたサバイバルアクション「メイズ・ランナー」のBlu-ray / DVDが、10月2日に発売された。
ジェームズ・ダシュナーのベストセラーを原作とした本作は、記憶を失い、突如巨大迷路に放り込まれた若者たちによる命がけの脱出劇を描く作品。3部作の第1弾にあたり、全世界50カ国でオープニング興行収入ナンバーワンのヒットを記録した。次作「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」の公開を10月23日に控えている。
映画ナタリーでは、初代「仮面ライダー」や水曜スペシャル「藤岡弘、探検隊」で知られるサバイバルの達人・藤岡弘、にインタビューを敢行。私物のサバイバルグッズを紹介しながら藤岡弘、流“メイズ”攻略方法を2時間半かけて熱く語りつくしてもらった。
取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 上山陽介
STORY 「メイズ・ランナー」の世界とは?
高さ30mの壁に囲まれた広場(グレード)。そこでは3年前から、自分の名前以外すべての記憶を失った少年たちが社会を形成していた。月に1度、何者かの手によって、地下深くから上昇してくるリフトで新しいメンバーが送り込まれる。“グレード”の四方を取り囲む壁の外には巨大迷路が張り巡らされており、脱出するには迷路を抜けるしかない。しかし迷路入口の扉が開くのは太陽が昇っている間だけ。夜の間に迷路はその構造を変え、同じ道順は2度と出現しない。内部に取り残された者は迷路に住む怪物“グリーバー”の餌食に。迷路の調査を担う選ばれし者たち“ランナー”は日々その謎解きに身を投じていたが、好奇心の強い新入り・トーマスの登場により集団に大きな変化がもたらされる。
CHARACTER キャラクター紹介
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- トーマス(ディラン・オブライエン)
- “グレード”と呼ばれる巨大迷路に送り込まれた新入り。好奇心が人一倍強く、迷路の正体を探り脱出することを試みる。
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- テレサ(カヤ・スコデラーリオ)
- “グレード”に送り込まれた最後のメンバーであり、唯一の女性。記憶はないが、なぜかトーマスの名前を知っている。
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- ニュート(トーマス・ブローディ・サングスター)
- “グレード”の副リーダーとして、ほかの少年たちからも一目置かれている存在。トーマスと親しくなる。
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- ギャリー(ウィル・ポールター)
- 秩序を乱してまで“グレード”の中から出るべきではないと考えており、事あるごとにトーマスと対立する。
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- アルビー(アムル・アミーン)
- 誰からも尊敬されるリーダー。3年前、1番最初に“グレード”に送り込まれ、最初の1カ月はたった1人で生き抜いた。
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- ミンホ(キー・ホン・リー)
- 迷路の探索・研究を続けてきた“ランナー”のボス。トーマスの勇気ある行動を見て、彼に協力するようになる。
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- チャック(ブレイク・クーパー)
- トーマスの前に“グレード”に送り込まれた最年少メンバー。記憶はないが、両親と再会することを望んでいる。
藤岡弘、インタビュー
もう1人の主人公として、俺が入ったら面白いだろうな
今回の映画を観て思ったのは、「ああ、僕の若い頃に似てるな」ってことですね。あの主人公(トーマス)の生き方が似てるんですよ。絶えず挑戦的な精神が。逃げない、負けない、屈しない、あきらめない。これが武道的に学んだ私の実践体験であり、信念なんです。
──なるほど。
この映画は、人生そのものですね。人生なんていうのはサバイバルなんだ、リスクなんてあって当然だと。だから観る人は、この中に出てくるどの登場人物に自分が当てはまるかって、ドキッとする部分があると思うんですよ。
──そうですね。
自分だったら誰だろうって考えさせられるくらい、キャラクターがしっかり分かれている。その脚本、演出が見事なんだよね。驚いたなあ……向こうの若手俳優がいかにすごいか。日本の若手の俳優もこの映画を観て勉強してもらいたいね(笑)。役に対しての意識、理解力が違う。それぞれのキャラクターや役割をしっかり掌握して、見事に形にしている。
──個性が豊かですよね。好奇心旺盛なトーマスだったり、みんなから慕われてるアルビーだったり。
だけど僕にはその中で盲点が見えた。私自身、今まで世界100カ国近くを旅し、秘境の地を探検したり、戦場や紛争地難民キャンプでのボランティア支援活動を行ってきて、サバイバルの実体験と言える経験をしてきた。死にいく難民の人々を見送りながら、生き抜くことがどれだけ大変かが、頭ではなく、私のDNAに刻み込まれたんだと思う。だから、こういう映画を観ても、自分ならどう戦うかを考えてしまうんだ。生き抜くために。それで、この登場人物たちには「あっ勝ったな」と思った。僕は絶対に脱出してる。まずあの怪物(グリーバー)を殺してる。悠然と脱出してるね。……だって3年もあるんだろ? 何やってるんだよ!
──そうですよね(笑)。
3年間というチャンスを与えられておきながらあの程度か!って。あれ、もう1人主人公がほしいな。俺を入れるべきだった(笑)。
──ははは! 藤岡さんが出演されていたら絶対違うストーリーになってましたよね。
五感のあらゆるセンサー、全神経のアンテナを立てて、情報を収集する。今日は、これからあなたたちにも生き抜くためのノウハウを教えますね。うちの弟子に徹底していることは、まず“鳥の眼”で情報を探せと。わかりますか? 鷹の眼ですよ、高いところからの視点。客観的な視点で、自分が置かれている環境・状況をまずは把握することが重要です。密生したジャングルの中で自分の現在位置などがわからなくなった場合は、一番高い木の上に登り、周りを360度見渡し現在地を把握する。
──ああー、なるほど。
“鳥の眼”、その次が“人の眼”。人間の心やセンサーでものを見るということ。それから“蟻の眼”。今度は水中からの“魚の眼”。この4つの目線で情報を収集して、分析して、次なる備えを持つというのが私の戦略ですよ。この登場人物たちは、まず“鳥の眼”でやってない。
──そうですね。上からの視点は出てきません。
ね? それから、ここには湖や海がないから“魚の眼”はいらないとしても、“蟻の眼”でやってない。私だったら、3年もあれば下に穴を掘って逃げるね。
──その発想はありませんでした!
わかりますか? 穴だけ掘るっていう役割分担を決めればいい。自分の中で「この人はどういう人間だ」って全部見抜いた上で、その人間に適した役割分担を与える。生きるための役割分担ですよ。「お前は穴だけ掘って、向こう側まで掘り続ける責任を全うしてくれ!」と。そしたら抜け出せるじゃないですか。脱出のための努力が足りない。
──そうですね。
あと“鳥の眼”だよ。迷路の壁にあんなにつるがあるんだったら、なんで登って行かないんだろう。3年もあるんだよ? 森には木もあるんだよ? 上まで届くくらいの縄梯子が作れるよ。そうして“鳥の眼”で上から情報を収集する。俺だったら一生懸命登って、上までものを運んで、怪獣(グリーバー)に向けて大きな石を落とすね。まずあいつをやっつけることから始まるよ。そういう武器を作る役割が必要だね。あとはその武器を使う訓練をする人間。ね? 壁に円を書いてさ、そこに石を投げるように訓練するんだよ、怪獣の目や口を狙えるように。だってそうでしょ? ピッチャーも投げ込んで訓練してるからボールがシューッと飛んで行くわけでしょ。3年もあったらプロ級になれるよ。
──3年も鍛えれば体もできあがりますね。
30人くらいの人間がね、怪獣の目や口を狙っていっぺんに石を投げたら、そのうち20発は当たるから、もうあんなもの破壊ですよ。あとは砂。ああいう機械は砂に弱いんですよ。砂が挟まればあんなものは動かなくなりますよ。私が世界中の砂漠やジャングルをまわったときもコンピュータは使えなかったからね。カメラもそう。アマゾンのジャングルに行ったとき、カメラ何台駄目になったと思います?
──え……カメラですか? 2台くらいですか?
そうです、2台です。
──それは砂のせいですか?
そうです。パウダーサンド、砂。これがまたみんな目に入って、化膿しちゃう。だから私はいつも目薬を持って行けって言うんですよね。何かおかしいと思ったら目を洗えって言うんです。でも知らない人はそのままこすってしまう。それで目やにが出てきちゃうでしょ、そんなとき病院がありますか?
──ありませんよね。
だから、備えが必要なんです。生きるために先を見越した備えが。
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2009年に発表されたジェームズ・ダシュナーのベストセラーを、ウェス・ボール監督で映画化した3部作の第1弾。テレビシリーズ「ティーン・ウルフ」のディラン・オブライエン、2017年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン」最新作のヒロインに抜擢されたカヤ・スコデラーリオ、「ラブ・アクチュアリー」のトーマス・ブローディ・サングスターら注目の若手俳優が集結し、謎の巨大迷路に放り込まれた少年たちの脱出劇をスリルたっぷりに描き出す。日本では2015年5月より上映され、10月23日には第2弾「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」の公開を控えている。
- 監督:ウェス・ボール
- 脚本:ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T・S・ノーリン
- 原作:ジェームズ・ダシュナー
- 出演:ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、トーマス・ブローディ・サングスター、ウィル・ポールター、アムル・アミーン、キー・ホン・リー、ブレイク・クーパー ほか
- Blu-ray / DVD「メイズ・ランナー」好評発売中 / 20世紀フォックスホームエンターテイメント
- 初回生産限定 / Blu-ray+DVD 4309円 / FXXA-57508
- DVD 3590円 / FXBA-57508
初回生産限定特典映像
- 未公開シーン集(ウェス・ボールによる音声解説付き)
- 迷路の世界:メイキング映像集
- チャック・ダイアリー
- NGシーン集
- VFXについて
- ショート・フィルム「Ruin」(ウェス・ボールによる音声解説付き)
- ウェス・ボール(監督)と T・S・ノーリン(脚本)による音声解説
- スティル・ギャラリー
- オリジナル劇場予告編
藤岡弘、(フジオカヒロシ)
俳優、武道家。1965年、松竹映画にてデビュー。青春映画シリーズで主演後、1971年には初代「仮面ライダー」として一躍名を馳せ、当初はスーツアクターも兼任していた。映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」やテレビドラマ「勝海舟」「特捜最前線」など多くの作品に主演し、アクション俳優として映画界を牽引してきた。1984年にはハリウッド映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、日本人で初めて全米映画俳優組合のメンバーとなる。2002年より水曜スぺシャル「藤岡弘、探検隊」の隊長として、アマゾン奥地やラオスの密林などでのサバイバルに果敢に挑む。著書は「あきらめない」「藤岡弘、の人生はサバイバルだ。」など多数。武道家としても知られ、世界各国で真剣による演武を行なっている。また、国内はもとより、世界数十ヶ国の紛争地域、難民キャンプへ救援物資を直接届ける支援活動も精力的に行ってきた。2015年、芸能生活50周年を迎え、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」へ本多忠勝役にて出演する。世界を渡り歩いてプロデュースしたこだわりのコーヒー「藤岡、珈琲」の販売も行っている。
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