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入江亜季「乱と灰色の世界」 - Fellows!発、作画プロセス動画第2弾はアナログ着彩の名手がノウハウを初公開

お気に入りの靴を履くと大人の姿に変身する魔女っ子のファンタジーマンガ「乱と灰色の世界」で、本格的な長編連載に初めて挑む入江亜季。彼女の魅力のひとつに、独自の世界観と繊細なタッチで描くカラーイラストが挙げられる。

コミックナタリーは、そんな入江のカラー制作現場を密着取材。掲載誌Fellows!(エンターブレイン)のプレゼント企画「Fellows! COLORS」に収録されるカラーイラストができあがっていく姿を追った。「塗っているのがとにかく楽しい」と語る入江の彩色テクニックを、とくとご覧あれ。

取材・文/増田桃子 編集・撮影/唐木元

 
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カラー着彩の名手は「塗っていれば幸せ」

──入江さんといえばカラー着彩の名手としても名高いので、今日は楽しみにしてきました。

入江 ありがとうございます。私、単純に色塗りが大好きなんですよ。もう下絵を描くのが面倒臭いくらいで、塗りだけでいい(笑)。塗るために絵を描いてるみたいなところがありますね。普段はなかなかカラーを描く機会がないので、久しぶりだととっても楽しい。お金もらって遊べる、みたいな感じでしょうか。仕事なんだけど(笑)。

──今回はどんなイラストの着彩を見せていただけるんですか?

入江 カラーで描いたことがなかった凰太郎(左上の男性キャラクター)を描いてみようと思っています。あとせっかく色を塗っているところを見られるんだし、いろんな色を使うつもりです。

──下描きの時点でどんな色にするか決まっているんでしょうか。

入江 おおまかなイメージしか持っていないので、具体的な色は塗りながら決めていきます。今回は秋だし、暖かい色とか秋っぽさを意識してみます。「暖かく」とか「秋」とか「オレンジ」とか、下描きにメモっておきました。

真っ白な紙を使うのは印刷とのギャップ防止

──あらかじめ水張りした紙に下描きを描いた状態まで準備していただきましたが、これの前にラフみたいなものがあったんでしょうか。

入江 はい。2枚のラフを描きました。1枚はコピーの裏紙にざっくり下描きをしたもので、これは他のラフ案と一緒に編集さんに選んでもらったときのもの。次に1枚目のラフを拡大コピーしてトレースしたもの。そのラフをさらに水張りした水彩紙にトレースしました。水彩紙は厚みがあって細かいところまでトレースできないので、色を着けながら後から描き足したりするかもしれません。

水張りした下描きとラフ2枚。ラフの段階からすでに入江ワールド全開。

──ラフや下描きはシャープペンシルを使っているんですか?

入江 はい。ラフの段階ではHBを、水彩紙に写す時はHを使います。マンガを描くときは大体HBなんですけど、カラーのときは手でこすって紙が汚れないように。Hくらい堅いと少しくらいこすっても大丈夫なんですよ。

──紙はどのメーカーのものを使っているんでしょうか。

入江 「ウォーターフォード」という紙のホワイトを使っています。水彩紙は黄色みの強いものが多いですが、できるだけ真っ白なものを。印刷時には背景を真っ白に調整するので、黄色い紙に着彩すると、黄色を白に補正した影響で絵の部分も色が変わっちゃう。だからできるだけ白い紙を使います。

──カラーのときのペン入れの道具について教えてください。

入江 カラーのときはスクールペンを使っています。スクールペンは硬いので、柔らかくてざらざらした水彩紙の上でもペン先が広がりすぎず、コントロールしやすいです。引っかかってインクが飛ぶこともありません。インクはPILOTの証券用インク。乾くと上から絵の具を塗ってもにじまないんです。

入江愛用、ラファエルの水彩筆4本とシャープペンシル。陶器のお皿がいっぱいになると、懐かしのプラスチック製パレットが登場。

──筆は今回4本並んでいますが。

入江 基本は水彩筆を3本使って、細筆はホワイト用です。もっと大きい絵を描くときは、大きな筆も使いますが、今回のようなA5サイズくらいの絵だと細い筆で済んじゃいますね。

──そのパレットは陶器のお皿ですね。

入江 はい、森(薫)さんのオススメで、無印良品の陶器のお皿を使っています。プラスチックのものと違って洗うのがとても楽で気に入っています。あとこの、絵の具の乾きを防ぐ霧吹きも森さん直伝です(笑)。

入江亜季「乱と灰色の世界」1巻 / 2009年11月16日発売 / 651円(税込) / エンターブレイン・BEAM COMIX / ISBN: 978-4-04-726145-7

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入江亜季「乱と灰色の世界」1巻表紙

あらすじ

父と兄の3人で暮らす元気いっぱいの小学生・乱。しかしその正体は靴を履くとセクシーな美女に変身してしまう魔法少女だった!

短編連載「群青学舎」で、圧倒的な画力と独特の世界観でファンを魅了した、入江亜季による初長編連載作。

作者コメント

魔法少女が描きたかったというか、小さい女の子が大人に変身できる話が描きたかったんです。形だけ大人になっても、ホントに大人になるってそういうことじゃないんだ、大人って見かけじゃないんだっていうことに気付いてゆく、そんなお話です。初めての長編というのもあって、まだ手探り状態で描いているんですけども(笑)。

まだ今は乱の話くらいしか出ていませんが、乱、陣(兄)、静(母)、全(父)の家族4人の物語なので、これからあと3人分の話も楽しみにしていただけたらと。あと今後は小学生の男の子がちょっと出張ってきます。読んだ方には自由に楽しんでもらえたらうれしいです。

入江亜季(いりえあき)

香川県生まれ。2002年、ぱふ(雑草社)にて入江あき名義で掲載された「フクちゃん旅また旅」でデビュー。2004年、月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて「群青学舎」の連載を開始。卓越した画力と、バラバラな物語がひとつの作品世界を紡ぎ出す魅力的な短編で人気を博す。2006年、同人時代の作品をまとめた単行本「コダマの谷」をエンターブレインより刊行。現在Fellows!(エンターブレイン)にて初の長編作品「乱と灰色の世界」を連載中。