コミックナタリー Power Push - 西炯子「娚の一生」
初老男性と妙齢女子、恋の行く末は? 作者のマンガ家人生が詰まった意欲作
80歳までマンガを描き続けることが目標
──「娚の一生」は今年、「このマンガがすごい!」や「このマンガを読め!」などで高評価を得て、セールスも好調ですね。自分の作品が売れていることについてはどう思われますか?
高飛車に聞こえると困るんですが、ほんとのところでは売れようが売れまいが、どっちでもいいと思ってるんです。たまたま受け入れられる時期がここだったのかなという気がしてます。「娚の一生」が受け入れられたのは、時代の流れであるとか、人々のマインドであるとか、そういうものと合致しただけだと。
──そうは言っても、セールスの結果が作者に与えるものって意外とありますよね。
ありますね。ただその波を受けないようにしています。というのは、私は目標としてるリタイアの時期がうんと遠くて、80歳くらいにしてあるんです。元々教師なので、公務員の暮らしを自分のテンプレートにしているから、最低でも60歳までは賃金を得ないといけないと思ってる。しかも私の場合退職金はないですから、人生80年と考えると、プラス20年、何かで収入を得続けないといけない。だから40歳やそこらで何かあったとしても、それはあまりにも通過点というか、重大ではないんですよ。
──長い目で見るとたいしたことではない、と。
ええ。4月から、南日本新聞という故郷の地方紙で隔週の連載を始めるんですけど、そこを足がかりとして、新聞の4コママンガのような、量としては少ないけどずっと続けていける仕事を確保して、最終的に80歳位になってもマンガでごはんを食べられるようにしておくっていうのが最終的な目標なんですよ。
──コボちゃんは今年で連載28年目、みたいな。
そんな感じ。できれば地元に住んで、4コマを1日1本描くくらいの感じで生活をして年を取っていけたらいいですね。そのための積み上げを今はしているような気がします。
──すごくいいなと思います。読者も長生きして付いていかないといけないですね。
「気がついたら西炯子を60年読んでいる」っていう人が現れてくれたらいいなあ。
あらすじ
長期休暇を取って祖母の家で暮らしていた堂薗つぐみ。仕事は有能だけど、恋愛はイマイチという三十路の彼女の前に、謎の大学教授・海江田醇が現れる。かつて亡き祖母と交友があったという海江田はそのまま家に居つき、恋に疲れた女と、愛を求める男がひとつ屋根の下で共同生活を送ることに。
枯れ男の魅力で迫る海江田を、最初は頑なに拒んでいたつぐみだったが、いつしかその心も緩みはじめ、淡くも激しい恋模様が繰り広げられることに……。
西炯子(にしけいこ)
鹿児島県出身。高校在学中、JUNE(サン出版・当時)でデビュー。プチフラワー、月刊flowers(ともに小学館)をはじめ、多誌で活躍中。現在、月刊flowersで「ふわふわポリス 比留ヶ谷交番駅前始末記」のほか、6誌で連載中。最新作「娚の一生」(全3巻)は、「このマンガがすごい!2010」(宝島社)オンナ編で第5位を獲得したほか、「THE BEST MANGA 2010 このマンガを読め!」(フリースタイル)で第6位を受賞。マンガ大賞、ブクログ大賞にもノミネートされている。 その他の代表作に「ひらひらひゅ~ん」(新書館、既刊3巻)、「STAY」シリーズ、「亀の鳴く声」「電波の男(ひと)よ」などがある。