コミックナタリー PowerPush - 咲坂伊緒「アオハライド」
大人も共感する“生っぽい”少女マンガ
咲坂伊緒が別冊マーガレット(集英社)にて連載している「アオハライド」がTVアニメ化され、本日7月7日に放送がスタートする。同作は主人公・吉岡双葉と、彼女の初恋の人・馬渕洸を中心に、恋や友情を描く青春ラブストーリー。10代女子から圧倒的な支持を集め、単行本累計発行部数は600万部を突破した。
コミックナタリーではTVアニメ放送を記念し、咲坂伊緒にインタビューを敢行。執筆のきっかけから、咲坂が作品に寄せる思い、さらには大人に向けた読みどころなどを聞いた。
取材・文/坂本恵
自分の高校時代を思い返して描いています
──「アオハライド」は前作の「ストロボ・エッジ」とも雰囲気が少し違いますが、まず作品を描きはじめたきっかけから教えてください。
「ストロボ・エッジ」がピュアな作風で、もちろんそれはそれで描いていて楽しかったんですけど、次はもうちょっとリアルなものを描きたいなと思っていたんです。でも王道が好きなので、そこからは外れたくない。そこで主人公をサバサバした女子にしよう、さらにそれが敵を作らないための、偽りのサバサバだったらどうかな、と順に思いついて。そこから話を広げていった感じですね。
──では主人公の双葉というキャラクターがはじめにあって、そこからストーリーを作っていったんですね。確かに「アオハライド」は女子高生にとって、リアルな描写が多いです。
大体は自分の高校時代を思い返して描いています。もちろん自分の経験したことだけじゃなくて、「友達がこういうことをやってたな」「こういうことで悩んでたな」ということを思い返して。あと中高生の読者さんからお手紙をいただくんですけど、自分の恋バナとかも書いてくださっていたりするんですよ。そういうのを読んでいると、時代が流れていても、自分の頃と感情の面では全然変わっていないんだなあって思うんです。なのでいま自分の高校時代のことを思い返して描いても、風化していないし大丈夫だなって確信を持っています。
──高校時代のことって、結構覚えているものですか。
私は割と細かく覚えているほうかもしれないです。そのときの空気感みたいなものは、特に。双葉と悠里みたいに、友達と好きな人が被ったっていうのは私も経験ありますよ。ただ私の場合は、双葉たちみたいにすごく仲がいい子ではなくて、ちょっと遠い存在の女の子でしたけど。そういうちょっとしたエピソードを、よりわかりやすく強烈にして描いている感じです。
──単行本のあとがきにも書いていらっしゃいましたが、ライブ中に洸と双葉が振り向きざまに事故でキスしてしまうというのが咲坂先生の実話だと聞いて、「そんな少女マンガみたいな展開が本当にあるのか」とびっくりしました。
そうでしょう、そうでしょう(笑)。「こんなのマンガだからでしょ」って言われるだろうなと思って、あのシーンのすぐ後にあとがきページを入れたんですよ。「本当に起こりうるんですよ」って思いながら、ニヤニヤあとがきを書きました。
──まさにしてやられた、という感じでした(笑)。咲坂先生が経験されたのは、本当に洸と双葉のような感じだったんでしょうか?
そうでしたね。耳打ち失敗して、振り向いた瞬間……!という。マンガみたいな展開って、現実にも結構あるものなんですよ。実は今後もそういう展開、用意していたりします。
眉毛1ミリで変わる、微妙な表情を描きたい
──先ほどおっしゃった高校時代の空気感というのは、具体的にはどういうものなんでしょうか。
うーん、言葉にするのはなかなか難しいですね。言葉にできないような気持ちを抱えているときの、微妙な表情を描きたいというか。セリフがなくてもそれが伝わるような……。
──洸の表情なんかは特に、感情によってすごく変わるので、ハッとさせられるシーンがたくさんありました。
表情って、眉毛1ミリでも変わるんですよ。だからこういう感情だろうなっていう顔を、ちゃんと思っているとおりに描けたら「よし!」と思えます。でも「違うな」と思うと、眉毛を少しずつ修正したりして、その人物の感情に表情を近づけていく、という感じです。
──一番表情を描くのが難しいのはどのキャラクターですか?
洸ですね。目の形とか、癖を持たせてるので難しいんですよ。上の瞼はつってるけど、下の瞼は垂れていたり、涙袋があったり。表情だけではなくて、内面も難しい子ですし。
──それはどういったところが?
うーん、洸は本当はまだ未完成で子供な部分がいっぱい残っている子なんですけど、少女マンガってあんまりそういうところを前面に出すと、ヒーローにはなれないじゃないですか。そういうバランスの取り方が難しいですね。
──子供と大人の狭間なんですね。では反対に描きやすいキャラは誰ですか?
冬馬は癖がないので描きやすいですね。彼は洸のライバル役に癖のない子を、と思って作っていったんです。あまり毒っ気がなくて、「いい奴だよね」っていう子のほうが、洸のライバルにはいいだろうなと思って。
──でも原作では最近、冬馬の違った一面も見えてきました。
そうなんです。私最初は、冬馬はちょっと好きになれなかったんです。実はあんまり描きたくなかったくらい。……物分かりいい子ってつまんないんですよ。だからどうやったらこの人に愛着を持てるかって考えて、冬馬はこんなにいい子なんだけど本当は自信がない子にしようと。若干の弱さも描きたいと思ったんです。そこを描けたら、私、この人を愛せると思って。
- TOKYO MX:7月7日より毎週月曜24:00~
- MBS:7月7日より毎週月曜26:35~
- BS11:7月8日より毎週火曜24:30~
- TUT:7月19日より毎週土曜25:53~
- GyaO!:7月8日より毎週火曜25:00~
- ニコニコ生放送:7月16日より毎週水曜22:30~
キャスト
内田真礼(吉岡双葉役)、梶 裕貴(馬渕 洸役)、茅野愛衣(槙田悠里役)、小松未可子(村尾修子役)、KENN(小湊亜耶役)、平川大輔(田中陽一役)ほか
スタッフ
- 原作:咲坂伊緒(集英社「別冊マーガレット」連載)
- 監督:吉村愛
- 脚本:金春智子、山田由香、平見瞠
- キャラクターデザイン:井川麗奈
- 美術監督:金子雄司
- 美術設定:イノセユキエ
- 色彩設計:広瀬いづみ
- 撮影監督:松本幸子
- 編集:濱宇津妙子
- 音響監督:長崎行男
- 音楽:堤博明・大嵜慶子・橋本翔太
- アニメーション制作:Production I.G
- 製作:アニメ「アオハライド」製作委員会
- オープニングテーマ:CHiCO with HoneyWorks「世界は恋に落ちている」
- エンディングテーマ:フジファブリック「ブルー」
- 挿入歌:Chelsy「I will」
- 咲坂伊緒「アオハライド」10巻 / 発売中 / 集英社
- 咲坂伊緒「アオハライド」10巻
- 通常版 432円
- ドラマCD同梱版 2484円
11巻は通常版とOAD同梱版が8月25日に同時発売予定
咲坂伊緒(サキサカイオ)
6月8日生まれ。B型。東京都出身。「サクラ、チル」でデビュー。代表作は、2007年から2010年まで別冊マーガレット(集英社)にて連載された「ストロボ・エッジ」。2013年には劇場アニメーション「ハル」のキャラクター原案を務める。別冊マーガレット2011年2月号より連載している「アオハライド」は累計600万部を突破。2014年7月にTVアニメ化、12月には実写映画化を控えている。